プロコのピアノソナタ６番がよい。 この曲は快速（とか驚速）に弾くことでテクニックを見せることが多いようで、この曲の和音の響きがうまく伝わらない場合があるし、リズムや意図しない音の濁りなど雑な演奏に聞こえてしまうこともあります。この演奏は良い意味で教科書的です（イッセルシュテットのベートーベン交響曲のよう）。派手ではないですが、プロコの和音の美しさをじっくり確認したい場合や、初めてこの曲を聴く人にはお勧めします。

４番の評価、低いですよね。　凄くよくまとまった演奏なんだけど、こじんまりしているというか、中性的といか。でもマゼールがセルの遺産であるクリーブランドの技術が落ちる前に録音してくれて幸運、とも思うんです。　どことなくセルがＬＳＯを録音した４番を彷彿させるところもあるし。 　 情熱とか運命に打ち勝つ、みたいなモチーフとは距離を置き、リズムの面白さや、構成力に重きを置いた演奏で、作曲家の足跡が透けて見えるような「論理的演奏」あるいは「機能美」を追求した演奏がいかにもマゼール様式で、この個性的、あるいは知的な演奏が好きなんです。同時期に録音した５，６番もロシア的な風合いとは距離を置き、音楽の骨格や構成を前面に押し出した演奏です。特に５番は一聴の価値ありです。