1940年2月19日、デトロイトに生まれたスモーキーは、何と6歳の時に作曲する事を覚えたという、その後の成功の片鱗が窺える早熟な子供だった。その後、ノーザン・ハイスクールに通っていた’55年に、マクドールというバンドを結成し、音楽活動をスタートさせた。’57年に受けたオーディションにたまたま同席したベリー・ゴーディが、彼の甘く柔らかいファルセット・ヴォイスとその作曲センスに惚れ込み、グループ名をミラクルズと改名、’58年にエンドで初のレコーディング(「Got A Job」)を行う。その後、チェスなどでシングルを発表した後、’60年、ミラクルズはモータウンのタムラ・レーベルの契約第1号アーティストとして、「Shop Around」で鮮烈なデビューを果たす事となった。同曲はいきなり全米チャートで2位、R&Bチャートでは堂々のナンバー1に輝き、世界中のその名を轟かせた。
その後、彼等はロマンティックなラヴ・ソングや白人にも受ける楽しいダンス・ナンバーを次々ヒット・チャートに送り込み、スモーキーの天才的なソング・ライト・センスと魅力的なヴォーカルはまさに一世を風靡した。’63年、「You've Really Got A Hold On Me」で再びR&Bチャートで1位を獲得、「Mickey's Monkey」も大ヒットした。さらに’65年には彼等の傑作中の傑作と謳われる「Ooo Baby Baby」と「The Tracks Of My Tears」を発表。とりわけ、「The Tracks〜」でのスモーキーの情感溢れるヴォーカルは筆舌に尽くし難い味わいがあった。
この頃からスモーキーはミラクルズの活動と平行して、社内の他のアーティストへの楽曲提供やプロデュースを手掛けるようになり、メアリー・ウェルズの「My Guy」やテンプテーションズの「My Girl」、マーヴィン・ゲイの「Ain't That Pecullar」、マーヴェレッツの「Don't Mess With Bill」、シュープリームズの「Floy Joy」等、ホランド=ドジャー=ホランドが制作の中核になるまでの初期のモータウンを背負う大車輪の活躍を続けた。
’66年の「Going To A Go-Go」、「(Come 'Round Here)I'm The One You Need」のヒットを最後に、グループ名を”Smokey Robinson & The Miracles"と改名、その後も’71年までグループはその勢いをキープしていった。しかし、’67年の「I Second That Emotion」、翌’68年の「Baby, Baby Don't Cry」、そして’69年の「Here I Go Again」等の名曲を残した彼等だったが、’70年の世界的ヒット「The Tears Of Crown(涙のクラウン)」を最後に、スモーキーは’72年始め、グループを脱退、ソロ・シンガーとして再スタートを切る事となった。(ミラクルズはスモーキーの後釜にビリー・グリフィンを迎えてその後も活動を続けた)
’73年、ソロ第1弾アルバム「Smokey」を発表。シングル「Sweet Harmony」がそこそこのヒットとなったが、ソロとして揺るぎ無い地位を確立したのは第3作目「A Quiet Storm」 (’75)からであろう。ここからは、アルバム・タイトル曲の他、ソロでは初のナンバー1となった「Baby That's Backatcha」や「The Agony And The Ecstasy」等がシングル・カットされ、ベビー・ヴォイス健在を大きくアピールした。’79年の「Where There's Smoke」を経て、’81年、「Being With You」で6年振りのナンバー1を獲得。続く’82年のアルバム「Yes It's You Lady」(「Tell Me Tomorrow」、「Old Fashioned Love」がヒット)も高い評価を得る好盤だった。
’83年には、リック・ジェームスとのデュエット「Ebony Eyes」が話題を集めた。’84年の「Essar」に続き、’86年にはスティーヴィー・ワンダーを迎えてのヒット曲「Hold On To Your Love」を収録した「Smoke Signals」、’87年には後期の彼の代表曲となった「Just To See Her」を収録した「One Heartbeat」 ...と、コンスタントにアルバムを発表。’85年から’88年にかけてはモータウンの副社長も兼任した。しかし、’90年の「Everything You Touch」のヒット(R&Bチャート4位)を最後にモータウンを離れ、SBK移籍後の90年代からは、やや低迷期が続く。しかし、一昨年「Intimate」で復活の狼煙を上げ、オールド・ファンを大いに喜ばせたには記憶に新しい。