フランス印象主義に魅せられた北欧の作曲家たちを
フィンランドのメゾ・ソプラノ歌手、メリス・ヤーティネンが歌う
フィンランドのメゾ・ソプラノ歌手、メリス・ヤーティネンはフィンランド人の父とトルコ人の母の家庭に生まれ、フィンランドで育ちました。ノルウェー国立音楽大学で声楽を学び、ヘルシンキ芸術大学シベリウス・アカデミーのマルユット・ハンヌラの下で研究をつづけ、2009年に修士課程を修了しました。フィンランド国立歌劇場でモーツァルトやヘンデルのオペラの舞台に立ちながら、室内楽と歌曲のキャリアを積んでいます。
『北の印象』は彼女のソロ・デビュー・アルバムです。「繊細なニュアンスの色彩パレットと興味のつきない和声表現の可能性をもつ」印象主義の美術と音楽に対する興味を背景に、フランス印象主義に魅せられた北欧の作曲家と、とりわけ彼らに大きな影響を与えたドビュッシーの歌曲によるプログラムを歌っています。
トイヴォ・クーラ[1883-1918]と彼の親友のレーヴィ・マデトヤ[1887-1947]は、世紀の変わり目のフィンランドでフランス印象主義の影響をもっとも強く受けた作曲家と言われます。クーラの『月夜の舟旅』はドビュッシーの『噴水』や『水の反映』を連想させるピアノ・パートで彩色され、マデトヤの『風の吹く天気』は凍てつく海のうえを吹く春の風を描きます。
ノルウェーのアルフ・フールム[1882-1972]とパウリーネ・ハル[1890-1969]もパリで学びました。画家でもあったフールムがロマンティックな想いを音による絵画にした『逢い引き』と、管弦楽のための『ヴェルレーヌ組曲』を作曲したハルがヴェルレーヌの詩を歌に作った『巷に雨の降るごとく、わが心にも涙降る』と「秋の日のヴィオロンのためいき」の『秋の歌』。
スウェーデンの作曲家ヨースタ・ニューストレム[1890-1966]は、1920年から1932年までパリで過ごしました。『海の交響曲(Sinfonia del mare)』の名をつけた第3番の交響曲をはじめ「海」をモチーフにした作品が多く、フィンランドのソプラノ、アウリッキ・ラウタヴァーラのために作曲した歌曲集『海辺の歌』もそのひとつです。エッバ・リンドクヴィストの詩による「岩礁で」からヤルマル・グッルベリの「月の出を待つ」まで、フランスの洗練味と透明感のある北欧ロマンティシズムが結晶した作品です。
プログラムの最後がドビュッシー[1862-1918]の『ポール・ヴェルレーヌの詩による3つの歌』。
ピアニストのユホ・アラカルッパ は、ヤーティネンと同時にシベリウス・アカデミーを卒業、音楽と詩へのアプローチと理解に欠かせないパートナーとして10年以上にわたり彼女とコラボレーションを続けてきました。(輸入元情報)
【収録情報】
ニューストレム:歌曲集『海辺の歌』(1942-43)
● 岩礁で
● 夜想曲
● 海の歌
● わたしは海辺に家を
● 月の出を待ち
フールム:
● 白夜
● 逢い引き
● 雨
ハル:
● 巷に雨の降るごとく、わが心にも涙降る
● ああ露に濡れし花よ
● 秋の歌
マデトヤ:
● 私とおいで Op.9-3
● ヒュプノスが微笑み Op.9-2
● 冬の月明かりに Op.26-5
● 風の吹く天気 Op.25-3
クーラ:
● アヴェ・マリア Op.23-2
● 月夜の舟旅 Op.31a-1
● 羊飼いたち Op.29a-3
● 森の娘 Op.23-1
ドビュッシー:ポール・ヴェルレーヌの詩による3つの歌(1891)
● 海は大伽藍よりも美しく
● 角笛の音は悲しげに森に向かい
● いく列もの生垣は
メリス・ヤーティネン(メゾ・ソプラノ)
ユホ・アラカルッパ(ピアノ)
録音時期:2018年10月6-8日
録音場所:フィンランド、クーサンコスキ、クーサンコスキホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
制作:グスタヴ・ユープシェーバカ
録音・編集・マスタリング:マッティ・ヘイノネン