Carmen Costa En Mexico

カーネギー･ホールでの歴史的ボサ･ノヴァ･コンサートにもフィーチュアされた 本格派女流シンガー､カルメン･コスタ
1966年オリジナルMEXICO ONLY音源｡世界初CD化｡

漆黒の女性シンガーとして崇められる本格派､カルメン･コスタ(1920〜)｡十代よりプロ歌手として活躍し､ボサ･ノヴァ先史において､既に一流シンガーとして認められた､黒人としては数少ない逸材であった｡ボサ･ノヴァ･ムーヴメントに自然な形で合流し､歴史的なカーネギー･ホールでのコンサートにも名を連ねていることはボサ･ノヴァ･ファンには有名｡70年代以降は､サンバなどの都市歌謡〜ノルチ音楽などのインタープリターで､大衆歌手としての地位を確立させた大歌手である｡

本作は､そのカルメンがボサ･ノヴァの世界的普及に乗じてメキシコへ渡航した際に､現地のポリドール(現UNIVERSAL)に密かに残された幻のアルバム(1966年オリジナル)｡ラジオ歌謡全盛時代の朗々とした歌い口と､オルガンの響きがレトロ･ムードを醸し出すジャズ･オーケストレーション､そしてオス･カリオカス風の洒落たコーラス･アレンジでまとめ上げられた極上の構成｡ポルトガル語､スペイン語の両方で歌われるレパートリーには､バーデン･パウエルの「ビリンバウ｣(M2)「プレリュードのサンバ｣(M6)、ジョビン作の「あなたを愛してしまう｣(M8)､「おいしい水｣(M9)、そして｢シェガ･ヂ･サウダーヂ｣(M10)と、ボサ･ノヴァの名曲も抑えている｡そんな中でも､ボサ･ノヴァ以前より愛唱しているフランシスコ･アルヴェスの名曲「ナ･カデンシア･ド･サンバ｣のスウィンギー･テイストは白眉｡歌い上げる質感ながら､いわゆる古臭い雰囲気よりも､感情豊かでさらっと味わえるボサ･ノヴァとして堪能できる｡広くボサ･ノヴァ･ファンに愛されるべき作品だ｡