NOT NOWならいずれ出してくれるのではないかという淡い期待に応えてくれたCDにまず感謝。「ビキニスタイル」ばかりがやたら有名になってしまった彼ですが、明るく、それでいてどこか翳りのある歌声に懐かしさを感じるファンは少なくないはず。ところが、彼はレーベルを転々と移籍したため、Best盤はもとよりシングル・コレクションも難しい歌手になってしまい、入手しうるどんな曲集でも完璧なコレクションにはなりえないというミステリアスな存在。このCDでも日本のファンなら Sixteen Cubes of SugarやEvery Other Nightが無いとすぐに気づきますが、しかしそれは所詮無いものねだり。別の音源で埋め合わせするしかありません。このCDの存在理由は、これでしか聞くことができないレア・ナンバーが数曲含まれていること。全36曲すべてモノラル録音ですが、音のカロリーは十分であり、60年代初期のKAPPの左右泣き別れステレオ録音より迫力すら感じます(耳をつんざくひどい録音も若干ありますが、これはおそらくオリジナル録音のせい)。それにしても、このしっちゃかめっちゃかな曲順はいったいいかなる理由?たかだか1960-62年までの3年間に生まれた36曲に順序もへったくれもあるかよ、というイングランド流冗談でしょうか。