1970年フロリダ州ジャクソンヴィル生まれのメルドーは6歳から14歳までクラシックの練習を続けていた。ブラッドが10歳のとき一家はコネチカット州ハートフォールドに移った。そこで高校時代にはバンドのコンペティションに優勝している。
　その後、ジャッキー・マクリーンに師事したブラッドは、ジミー・コブのグループで演奏するようになる。その他兄弟ミュージシャンとして話題になったクリストファー・ホリデイやジェシー・デイヴィスといったアルトサックスのサイドメンをつとめた。やがて、マンハッタンに出た彼は、フレッド・ハーシュ、ケニー・ワーナー、ジュニア・マンスに師事した。

　メルドーの出世のきっかけになったのは,いまをときめくジョシュア・レッドマンのグループへの参加以降だろう。ブライアン・ブレイドとともに参加した1994年発表の『Mood Swing』はメロドーの名前を一躍高めることになり、ワーナー・ブラザースと契約、1995年には『Introducing Brad Mehldau』でデビューした。二つのトリオで録音されたこの作品はプロ受けする内容からいまだ名声には繋がらなかったが、続く『Art Of The Trio』の連作によってブラッドの名は一躍大きくなり、若手のもっとも注目されるピアニストとして認知された。

　ジョシュアと同じくテナー・サックスの逸材として頭角をあらわしたマーク・ターナーのアルバムにも参加し、トップ・クラスのピアニストとして台頭した。その後は、ピアノ・トリオのシリーズを中心にして活動を続け。プライベートではフローリンとのコラボレイションが話題になった。

　2000年に発売される『Places』はツアー中のソロとトリオのセッションをほぼ同数納めたブラッドにとっては,ソロで録音された『Elegiac Cycles』とトリオ・シリーズの成果を集約した作品となっている。

　また、2001年に発表された『アート・オブ・ザ・トリオVol.5』は、“ヴィレッジ・ヴァンガード”における「21世紀のザ・トリオ」ともいえる地平を実現した、ＣＤ2枚組に及ぶ作品。ここでメルドーは明らかに、同時代のピアニストたちに一歩先んじた演奏を繰り広げている。

さらに、フィオナ・アップルのプロデューサー、ジョン・ブライトンのプロデュースによる2002年発表のスタジオ録音作品『Largo』は、叙情的な様式美と、鋭角的に突き刺さるスピード感、そして、それを支える流麗なテクニックと、遂に“ジャズピアノの帝王”戴冠近しを感じさせるメロドー入魂の作品。

　2004年2月発表のスタジオ録音による「The Art Of The Trio」による作品『Anything Goes』は、お馴染みの題材を採り上げながらも見事に変身させている。かつて、ウイントン・マルサリスが試みた、マルチ・リズムのアプローチやリズミックなアプローチによるインプロヴィゼイションと言った新しい試みが散りばめられた作品になっている。