シルヴァン・カンブルラン/SWR名演集
1999年から2011年までバーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団の常任指揮者を務めたシルヴァン・カンブルランの75歳を記念して、SWRのアーカイヴから初出音源多数を含む10枚組ボックスが登場。20世紀音楽ファン必聴と言えそうな内容です。
【これらを聴かずして、20世紀音楽は語れない。そう言いたくなるような充実したセット】
「読響の常任指揮者を長らく務め、オーケストラのサウンドを一新したシルヴァン・カンブルラン。彼がバーデン=バーデン・フライブルクSWR放送響(南西ドイツ放送響)の常任指揮者に就いていた期間を含む、1992年から2016年までの録音が10枚組のセットになった(バルトークのヴィオラ協奏曲のみザールブリュッケン放送響)。ベルリオーズからメシアンまで、彼がもっとも得意としたレパートリーが一望の下に俯瞰できる構成だ。その6割程度が初出音源というのも嬉しい。
とりわけ20世紀の音楽を十八番にしていたカンブルラン。この時代ならではの、晦渋だったり、いかつい雰囲気をもった音楽を優雅に、色彩豊かに表現するのが彼の持ち味だ。
たとえば、鉛色のイメージに染められがちなシェーンベルクやベルクの作品から、鮮やかな極彩色やほのかに薫る官能性を引き出してくれる。ウェーベルン『大オーケストラのための6つの小品』とドビュッシー『6つの古代の墓碑銘』を互い違いに組み合わせ、両者を違和感なく溶け込ませることができるのはカンブルランだけだろう。
バルトークの『中国の不思議な役人』やヤナーチェクの『シンフォニエッタ』では驚異的な見通しの良さで作品の精緻さを浮き彫りにしつつ、陰影豊かな表現で魅了する。ストラヴィンスキーの『春の祭典』も暴力的なところなく、エレガントなサウンドが愉悦を誘ってくれるほどだ。また、アイヴズの問題作である交響曲第4番は、あちこちに飛び散らかる様々な要素をデリケートに積み重ね、一つの大いなる流れを作り出す。いずれも、かつてない完成度を誇る演奏だ。
ドビュッシーやラヴェルなどのフランス音楽は、その音色の乾湿を使い分け、適切に整えられたバランスによって音が過不足なく空間を満たすようなデザイン感覚が見事。曲のすみずみまで、しなやかな響きで聴かせるのだ。優秀なドイツの放送オーケストラが、さらに明晰さを際立てる演奏をしているのも頼もしい。
ベルリオーズの序曲集では抒情性と運動性を巧みに交代させ、めくるめく興奮を導く。また、デュティユーならではの深さと鋭さをもった音楽も、そうしたベルリオーズの延長線上にあることをカンブルランの演奏は教えてくれよう。そして、彼のライフワークともいえるメシアンの作品。サイケデリックといいたくなるほどに色彩による楽園を燦然と築く。これらを聴かずして、20世紀音楽は語れない。そう言いたくなるような充実したセットになった。」〜鈴木淳史(音楽評論)
【カンブルラン氏の75歳記念ボックスに寄せて】
「私共のオーケストラ(元バーデン=バーデン・フライブルクSWR交響楽団)の常任指揮者にカンブルラン氏が就任されたのは1999年のシーズンでした。それ以来2011年夏迄、本当に長年に亘り優れた功績を残されました。カンブルラン氏の元ではラモーから刷り上がったばかりの現代曲まで、2世紀半を超える幅広いレパートリーを学ぶことが出来ました。その上マエストロのパートナーでいらした 故ジェラール・モルティエ氏のお招きで、ザルツブルク音楽祭、ルール・トリエンナーレ、マドリード等、斬新なプログラムでヨーロッパ各地を公演出来たのは、かけがえのない経験と思い出になりました。
マドリードでのオペラ公演、メシアンの『アッシジの聖フランチェスコ』は4時間に亘る大作です。現地での練習の日々の間にカンブルラン氏は肩を痛めてしまわれた事もありましたが、氏の強靭な意志と情熱で、プレミエも、続く4回の公演も盛況に終わりました。
カンブルラン氏は、楽団員を非常に大切に思って接して下さっているように、事あるごとに感じられました。例えば録音中にトーンマイスターからクレームが入ると、自分の責任とばかりに対応されるので、楽団員は次の撮り直しテイクには「今度こそ!」という気持ちにさせられたものです。
個人的な想い出は、たぶん氏が読売交響楽団に就任された頃だったと思いますが、演奏旅行中に列車待ちのホームで突然話しかけられ、「こんなに無駄話の無いオーケストラは初めてだ!」としきりに読響の規律正しさに感心されるので、日本人として誇らしい一方で、我がオーケストラのお喋り好きの顔が次々と浮かんできて苦笑したものでした。又ある時に私がうっかり頭を怪我して欠席した翌日、ドナウエッシンゲン現代音楽祭のゲネプロに直行したところ、プローべ中に目が合った途端、大層込み入った指揮の最中にもかかわらず、「大丈夫?」とばかりに片手を頭に当てる仕草をなさり、私はそれこそ目が釘づけになってしまいました。
いつもユーモアたっぷりの氏の語調は今でも団員の間に引き継がれ、似たようなシチュエーションの場で懐かしく飛び出してきます。
2012年2月の日本公演前に、東日本大震災の復興支援募金をドイツ各地の公演で集めておりましたら、カンブルラン氏は既に常任指揮者から離れていらしたにもかかわらず、多額な寄付をして下さったことも忘れられません。
どうぞこれからも永くお元気で、益々のご活躍を切に願っております。」〜南西ドイツ放送交響楽団ヴィオラ奏者、中閑光子(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1
ベルリオーズ[1803-1869]:演奏会序曲集
1. 序曲『ウェイヴァリー』 Op.1
2. 序曲『宗教裁判官』 Op.3
3. 序曲『リア王』 Op.4
4. 序曲『ロブ・ロイ』
5. 序曲『ローマの謝肉祭』 Op.9
6. 序曲『海賊』 Op.21
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
全てライヴ録音
2007年5月 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(1,4,6)
2000年2月 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(2)
2003年2月 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(3)
2002年1月 ドイツ、Festspielhaus Baden-Baden(5)
Disc2
ドビュッシー[1862-1918]:
1. 管弦楽のための映像
2. 2つの舞曲『神聖な舞曲と世俗的な舞曲』
3. 交響詩『海』
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
全てライヴ録音
2001年2月28日〜3月1日(1)
2004年2月18日(2)
2004年2月5-7日(3)
録音場所:ドイツ、Konzerthaus Freiburg
Disc3
ラヴェル[1875-1937]:
1. 管弦楽のための舞踏詩『ラ・ヴァルス』
2. 高雅で感傷的なワルツ
3. 『鏡』〜第4曲『道化師の朝の歌』(管弦楽版)
4. ボレロ
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
全てライヴ録音
2007年5月25日 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(1)
2001年9月8,9日 ドイツ、Konzerthaus Freiburg & Kultur - und Kongreszentrum Luzern(2)
2009年3月29日、4月24日 ドイツ、Alte Oper Frankfurt & Konzerthaus Freiburg(3)
2002年1月5日 ドイツ、Festspielhaus Baden-Baden(4)
初CD化(2-4)
Disc4
ストラヴィンスキー[1882-1971]:
1. バレエ音楽『春の祭典』
2. バレエ音楽『ペトルーシュカ』
クリストフ・グルント(ピアノ:2)
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
録音:
2006年11月 場所不明(セッション:1)
2002年1月 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(ライヴ:2)
Disc5
1. シェーンベルク[1874-1951]:室内交響曲第2番 Op.38
2. ヴェーベルン[1883-1945]:6つの大オーケストラのための小品 Op.6a/ドビュッシー:6つの古代のエピグラフ
ヴェーベルン:No. 3. Zart bewegt
ドビュッシー:No. 1. Pour invoquer Pan, dieu du vent d'ete
ドビュッシー:No. 3. Pour que la nuit soit propic
ヴェーベルン:No. 5. Sehr langsam
ヴェーベルン:No. 6. Zart bewegt
ドビュッシー:No. 4. Pour la danseuse aux crotales
ドビュッシー:No. 2. Pour un tombeau sans nom
ヴェーベルン:No. 1. Etwas bewegter
ドビュッシー:No. 5. Pour L’Egyptienne
ヴェーベルン:No. 4. Langsam, marcia funebre
ドビュッシー:No. 6. Pour remercier la pluie au matin
ヴェーベルン:No. 2 Bewegt
3. ベルク[1885-1935]:管弦楽のための3つの小品 Op.6
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
録音:
2002年11月27日(ライヴ:1)
2016年5月5日(ライヴ:2)
2002年6月21日(セッション:3)
録音場所:ドイツ、Konzerthaus Freiburg
初CD化
Disc6
バルトーク:
1. バレエ音楽『中国の不思議な役人』管弦楽組曲 Op.19
2. 2つの映像 Op.10, Sz46
3. ヴィオラ協奏曲 Op.posth(シェルイによる補筆完成版)
キム・カシュカシアン(ヴィオラ:3)
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団(1,2)
ザールブリュッケン放送交響楽団(3)
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
全てライヴ録音
2001年1月20日 ドイツ、Festspielhaus Baden-Baden(1)
2009年11月7日 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(2)
1992年10月9日 ドイツ、Kongreshalle Saarbrucken(3)
初CD化
Disc7
ヤナーチェク:
1. シンフォニエッタ Op.60
2. ヴァイオリン弾きの子ども JW VI/14
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
録音:
2005年6月20,21日 ドイツ、Hans-Rosbaud-Studio, Baden-Baden(1/セッション)
2005年7月17日 エストニア、Estonia Concert Hall, Tallin(2/ライヴ)
初CD化
Disc8
デュティユー[1916-2013]:
1. 交響曲第2番『ル・ドゥブル』
2. メタボール〜大管弦楽のための
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
録音:
2003年2月27,28日 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(1/セッション)
2006年5月31日 ドイツ、Philharmonie Berlin(2/ライヴ)
初CD化
Disc9
アイヴズ[1874-1954]:
1. 交響曲第4番
2. オーケストラ・セット第1番『ニューイングランドの3つの場所』
3. 答えのない質問
クリストフ・グルンド(ピアノ:1)
ジョルジ・ドンブラーディ(メゾ・ソプラノ:1)
ペーター・シュヴァルツ室内合唱団(1)
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
録音:
2004年3月20日 ドイツ、Philharmonie Berlin(1/ライヴ)
2000年11月21日 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(2/セッション)
2003年3月11日 ドイツ、Konzerthaus Berlin(3/ライヴ)
初CD化
Disc10
メシアン[1908-1992]:
1. 鳥の目覚め - ピアノと管弦楽のための
2. 異国の鳥たち - ピアノと小管弦楽のための
3. クロノクロミー - 大管弦楽のための
ロジェ・ムラロ(ピアノ:1,2)
バーデン=バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
シルヴァン・カンブルラン(指揮)
全てライヴ録音
2007年6月27日 ドイツ、Hans-Rosbaud-Studio, Baden-Baden(1)
2008年2月12,13日 ドイツ、Hans-Rosbaud-Studio, Baden-Baden(2)
2005年2月24日 ドイツ、Konzerthaus Freiburg(3)