(こちらは新品のHMVレビューとなります。参考として下さいませ。中古商品にはサイト上に記載がある場合でも、封入/外付け特典は付属いたしません。また、実際の商品と内容が異なる場合がございます。)
GEORGE SZELL THE EDITION
ジョージ・セル・エディション(49CD)
名指揮者ジョージ・セルの代表的演奏を集めた注目のボックス・セットが韓国SONYから登場。凄い演奏を数多く残したセルですが、意外に廃盤が多く、いざ聴こうと思ったときには入手できないことも多いので、こうしたまとまった規模のセットがあると非常に便利。 しかも、何度も繰り返して出し入れすることの多いセルのようなクセになる演奏の場合には、ビニールの内袋にそれぞれのディスクを封入するという丁寧な装丁は実に好都合です。
ボックスのサイズは、縦168mm×横152mm×奥行133mm、重量は約2sで、ブックレットは韓国語、英語表記となっています。
【ボーナス・トラック】
セルには同じ曲の別録音もけっこうありますが、ここではモーツァルトの交響曲第39番と第40番、第41番についてモノラルの旧録音もボーナスとして収めています(なお、Disc5Disc31に収録されている交響曲第41番は同じ音源となります)。
【ジョージ・セルの音楽】
平凡な地方オケに過ぎなかったクリーヴランド管弦楽団に、さまざまな面から大胆な改革をおこない、驚異的な精度にまで合奏精度を高めて、一躍国際的な名声を持つオーケストラに育て上げたジョージ・セル。その音楽は、モーツァルト、ハイドンからブルックナー、マーラー、バルトークにいたるまで、どれも突き詰められた練習の果ての産物として、非常に水準が高いのが特徴となっています。
また、ここではピアノの腕も達者だったセルによるモーツァルトの室内楽録音も収めており、コンマスのドルイアンと録音したヴァイオリン・ソナタ集と、ブタペスト弦楽四重奏団のメンバーたちと共演したピアノ四重奏曲集を聴くことができます。
【セルのベートーヴェン】
時代背景もあって、セルはベートーヴェンでも大編成でしたが、人数の多さにも関わらず極度に引き締まった古典的な造形美をつらぬいたその演奏には以前から定評のあるところです。特に、奇数番号の作品、とりわけ第3番は、合奏の精度それ自体が一種の凄みを漂わせた演奏として有名なもので、全編、まさに音が立っているという印象。冒頭のカッコイイ和音からハイテンションなスケルツォ、そして終楽章の一糸乱れぬコーダまで、そのいさぎよい音楽造りには終始しびれっぱなしです。
こうした肥大感を拒絶してひたすら結晶化に向かうかのような傾向は、偶数番号の作品からも独自の清廉な美を醸成することにつながっており、第4番の終楽章など、遅めの進行のなかで明確に表出される音楽の構造、小気味良いテンポ感覚が快感です。
こうした過度なロマン性の排除、膨張した響きに埋もれてしまった構造性と軽快なテンポ感の洗い出しは、後に時代考証派の演奏が目指すところとなるものなのですが、それらが既に、セルの手によってさらに高度な領域で達成されていたということには驚かされますし、さらにここでは、モダン楽器ならではの音の厚みや深み、力強さといった要素まで共存しているのです。このあたりにも“セルのベートーヴェン”が時代の潮流に左右されることなく、常に別格的な地位を確保している一因があるのかも知れません。
【セルのハイドン】
潔癖なフォルムと高精度なアンサンブルで作品本来の姿を浮き彫りにするセル&クリーヴランドの芸風と、ハイドンが晩年に書いた一連の完成度高い交響曲の相性は非常に良好です。セルのことですから、過剰な表情付けは一切ありませんが、美しく保たれた作品のフォルムからにじみ出る、様式化された音楽の表情の豊かさは実に快適。
ここでは、第92番と、60年代終わりに録音された第93〜98番(ザロモン初期)に、第97番の旧録音、モノラル録音された第88番、第104番の2曲(オフィシャル初登場)のほか、第99番が収録されています。(HMV)
【収録情報】