2012年大晦日、今年もほぼ毎日データ中心でレビューを書き込んで来ましたが本日は昔からの定番物ワルターの「運命」「未完成」をあげて今年のラストとして閉じましょう。本カップリング盤についてはもう皆さんのレビューに尽きると思いますが、屋上屋を重ねます・・・・。ワルター/コロムビアSOのベートーヴェンはホッとする面があります。この「運命」は昔から聴き慣れた第1楽章最初の運命の扉動機のフェルマータはワルター特有のものでさりとて決して深刻ではありません。1958年録音という事はワルター82歳の高齢でもありこの調子で行くとタイム的に長いのかなと思うと「さにあらず」でむしろ短い・・・全体タイム@6’24A10’50B5’47C9’32・・・「運命」の曲を聴く上で何を期待?するかにより評価は微妙ですが私の年代では冒頭記したように無形の財産として貴重です。その第1楽章は反復されていない事と最初の運命扉動機のフェルマータから反転した様に展開部はやや性急さの為短めになってはいますが終始弦のリアルな擦り音や後段詰めでの絶妙な瞬間の溜め切りにより面白い楽章になりました。第2楽章はスタート跳ねる様な感じでゆっくりした足取り、「間」を充分取りながらの運びは正直ダレル直前で更に中間段落での引き伸ばしはワルター独特の「歌う」範囲なのでしょう。第3楽章はまぁ無難に過ぎますが最終楽章への移り変わりにはもう少し効果的なものを期待しなかったわけではありません。コロンビアSOは映画音楽などを専門にレコーディングしていた音楽家達を集めた急造オーケストラである為か録音のせいかやや甘ったるい処もあり暖かい響きで最終楽章での勝利の雄叫びの力強さに少し物足りなさを覚えはしました。なお、ワルター指揮の運命交響曲はHMVカタログ等では他に何れもNYPOを振った1941年物(タイム@6’09A10’51B5’22C8’01)、1950年物(タイム@6’16A11’29B5’56C8’43)、1951年物(タイム未確認)等が見られます。次に「未完成」に移ります。「未完成」にはワルター/コロムビアSOの盤は無く?1958年収録のNYPOによるゆったり謳わせ品よく蕩けそうな演奏(同@10’56A13’53)が味わえます。何とも言えない起伏感、ニュアンスに富んだ陰影感・・・もう何処を聴いても実に丁寧に情緒纏綿に謳った美しさは晩年ワルターの良さが結集した感じであります。兎に角、この「未完成」は愛好家にとり必聴物です。なお、ワルター「未完成」の他の録音歴で手元資料のデータをいつもの通りメモしておきます。1936年VPO(同@10’19A11’55)、1947年フィラデルフィアO(同@10’25A11’58)、1950年バイエルン国立O(同@10’37A13’15)、1960年VPO(同@11’05A14’17)・・・ライブが多く今後も新音源発見があるのではないでしょうか。本盤は高品質化により定番名演が更に最高ランクになっている事でしょう。(タイムについては盤により多少異なる場合があります)