このCDは海をテーマにした吹奏楽楽曲を収録したもので、海上自衛隊東京音楽隊の演奏と、音楽隊長、手塚裕之2等海佐の指揮で録音されたものです。
前半を吹奏楽のみで、後半は三宅由佳莉3等海曹と川上良司1等海曹のヴォーカルをフィーチャーしたもの。
収録曲は8曲中、5曲が東京音楽隊の委嘱作品となっています。
最初の2曲は行進曲で、酒井格の『南鳥島の光』とV.ウィリアムズの『海の歌』は音楽隊の得意分野だけあって安定して素晴らしい出来でした。
海の歌の東京音楽隊の録音は意外にも1970年代に東芝EMIに当時の服部省二音楽隊長が振った録音以来数十年ぶりの録音となります。
『スミスの海の男達の歌』は同音楽隊では初録音では無いでしょうか。
『吹奏楽のための群青』は、日本海海戦110周年記念演奏会のライヴCDにも本CDと同じ演奏家による録音があり、演奏としてはそちらの方がライヴらしいスリリングさがあって良いのですが、セッション録音のこの録音も、悪くありません。
ここより先は全て三宅3曹のヴォーカルをフィーチャーしたもの。
『額田王の4つの歌』と、『貝殻の歌』はピンと来なかったですが、『息吹』の後半、三宅3曹の熱演が光ます。
タイトルにもなった『われら海の子2015 海の歌によるファンタジー』これが1番の聴きどころ。
同名の唱歌を中心に海に関する歌を幻想曲形式にしたもの。
海上自衛隊バンドフェスティバルの初演時は歌手は2人とも女性であったが、この録音では男性、女性1名ずつとなっている他、上記の初演時は海上自衛隊全音楽隊による大編成の演奏からやや編成が小さくなってるが、力の入ったこのCD中最も良い演奏である。
途中の合唱はライナーによれば音楽隊員のほか、防衛事務官、そして、作曲者にブレーンのスタッフが参加と即席の合唱団だが、良い意味で素人ぽさがあって良い。
この曲一曲だけでも充分元は取れるだろう。
このCDは手塚隊長の東京音楽隊との最後の録音となったもので、2014〜2016年の短い在任中に、様々なジャンルのCDを出したこのコンビの集大成と言えるCDでしょう。
ただ不満な点として海をテーマにするなら、敷島艦行進曲や東京湾凱旋観艦式記念行進曲や浦塩沖氷海海戦のような戦前の作品、せめて軍艦行進曲位は入っていればよかったのにと思う。
録音は2016年という事もあり綺麗だが、ブレーンらしいボヤっとした録音なのは非常に残念。