SONY CLASSICAL
BERLINER PHILHARMONIKER
CLAUDIO ABBADO
クラウディオ・アバド&ベルリン・フィル
アバドが1990年代にソニー・クラシカルにベルリン・フィルとレコーディングしたアルバムから主要作をセレクトした3巻から成るシリーズ。各セットはCD5枚の構成になっています。
アバドとベルリン・フィルの関係は長く、最初に指揮したのは1966年、アバドがまだ33歳の時でした。以後、数多くの客演を経て、1990年には、前年に亡くなったカラヤンの後任としてべルリン・フィルハーモニー管弦楽団芸術監督・首席指揮者に就任。コンサートにもオペラにも近現代ものにも強いという実力を活かしてベルリン・フィルの活動を多彩なものとしていきました。しかし、2000年夏に胃ガンを宣告され、全摘出をおこなったあとは生活に制限が加えられるようになったため、2002年に芸術監督・首席指揮者の職務を辞しています。その後もベルリン・フィルとは良好な関係が続き、亡くなる半年ほど前まで客演を継続、実に47年に及ぶ関係を築き上げることとなりました。
【アバド&ベルリン・フィル・エディション】
このシリーズは、アバドがベルリン・フィルの芸術監督立った時代にソニー・クラシカルがおこなったレコーディングの中から特に重要なアルバムをオリジナルな形で集めた構成となっており、スラヴ系に強かったアバドならではの、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ムソルグスキーの名演奏から、小編成ベルリン・フィルのフットワークを活かしたモーツァルトまで、マニアックな作品紹介やテーマを決めた企画公演にも熱心だったアバドの積極的な姿勢が手軽に楽しめる構成となっています。
エディション Vol.1
【収録情報】
Disc1
ブラームス、R.シュトラウス、レーガー、リーム
ドイツの詩人、フリードリヒ・ヘルダーリン[1770-1843]の没後150年を記念して、アバドがベルリンでおこなった一連の公演からのライヴ録音で、ヘルダーリンゆかりの音楽作品を集めたアルバムとなっています。
ドイツ・ロマン派の代表的な詩人・思想家であったヘルダーリンの作品は、憧憬と絶望をテーマにしたものが多く、ブラームスの合唱曲『運命の歌』とではそうした雰囲気もよく伝わってきます。
一方、リヒャルト・シュトラウスが1921年に書いたソプラノと管弦楽のための『3つの賛歌』は、愛の賛歌、帰郷、愛というタイトルの曲により、愛についてのヘルダーリンの世界をシュトラウスの美しい旋律で味わうことができます。
レーガー作曲によるソプラノと管弦楽のための『希望に寄せる』では、詩の暗さを和らげるために、レーガー自身が明るいテキストを加えるという工夫がおこなわれているのも興味深いところで、後期ロマン派風な重厚なスタイルで独特の美の世界を展開。
最後のヴォルフガング・リームによるバリトンと管弦楽のための『ヘルダーリン断章』は、鋭角的な筆致で書かれた現代的な作品です。
ヘルダーリンの詩作を巡り、それぞれの作曲家が個性を投影した作品を、アバドは合唱&管弦楽、ソプラノ&管弦楽、バリトン&管弦楽というチョイスで並べ、ベルリン・フィルの表現力を声楽作品で積極的に活用することに成功しています。
・ブラームス:『運命の歌』 作品54
・R.シュトラウス:『3つの賛歌』 作品71
・レーガー:『希望に寄せる』 作品124
・リーム:『ヘルダーリン断章』(1977年版)
カリタ・マッティラ(ソプラノ)
ヨハネス・M・ケスタース(バリトン)
ライプツィヒ中部ドイツ放送合唱団
録音時期:1993年2月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
Disc2
ドヴォルザーク:交響曲第8番、交響詩『真昼の魔女』
ベルリン・フィルのドヴォルザーク第8番は、クーベリック、カラヤン、テンシュテット、ヤンソンス(映像)など、名演揃いで知られていますが、アバドとの演奏も、シャープで勢いのある見事なものです。
交響詩『真昼の魔女』は、楽しく遊んでいた子供がむずかりだしたため、母親が真昼の魔女を呼ぶと脅かして叱ると、本当に魔女が現れて子供が殺されてしまうというなんとも残忍な筋書きですが、音楽はそうした内容を、明るくコミカルに、やがて悲劇的に描きだしており、アバド指揮するベルリン・フィルによる高度な演奏が作品のお伽噺的魅力を巧みに引き出しています。
・ドヴォルザーク:交響詩『真昼の魔女』 作品108
・ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調 作品88
録音時期:1993年11月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
Disc3
ノーノ:断ち切られた歌、マーラー:亡き児をしのぶ歌、私はこの世に忘れられ
20世紀イタリアの作曲家ルイジ・ノーノ[1924-1990]は、アバドと親しい関係にあり、コンサートでもその作品をよく取り上げていました。『断ち切られた歌』は、第二次世界大戦中にファシズムの犠牲となったレジスタンスの若き活動家たちが死の直前に書いた手紙に基づく1956年の作品。東西ドイツ統一後、人種差別などの高まりを受け、アバドとベルリン・フィルが取り組んだこのコンサートでは、会場の人々に向け、ドイツ語訳で落命した人々の手紙の朗読もおこなわれていました。
組合わせは、深い声が素晴らしいリポヴシェクによるマーラーの歌曲集『亡き児をしのぶ歌』と、歌曲「私はこの世に忘れられ」というもの。
・ノーノ:『断ち切られた歌』
バーバラ・ボニー(ソプラノ)
ズザンネ・オットー(メゾソプラノ)
マレク・トルツェフスキ(テノール)
ベルリン放送合唱団
ディートリヒ・クノーテ(合唱指揮)
スザンヌ・ローター(語り)
ブルーノ・ガンツ(語り)
録音時期:1992年12月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
・マーラー:『亡き児をしのぶ歌』
・マーラー:『リュッケルトによる5つの詩』〜第3曲「私はこの世に忘れられ」
マリアナ・リポヴシェク(メゾソプラノ)
録音時期:1992年9月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
Disc4
メンデルスゾーン交響曲第4番『イタリア』、『夏の夜の夢』
1995年ジルヴェスター・コンサートでのライヴ録音。颯爽としたアバドの指揮のもと、ベルリン・フィルが快調な演奏を展開。それぞれの曲の表情が生き生きと柔軟に描き出された『夏の夜の夢』、キビキビとした歌いくちが心地よい交響曲第4番『イタリア』ともども、絶好調コンビによる特別な演奏会での成果を聴かせています。
・メンデルスゾーン:劇音楽『夏の夜の夢』抜粋(11曲)
・メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調 作品90『イタリア』
バーバラ・スコーヴァ(語り)
シルヴィア・マクネアー(ソプラノ)
アンゲリカ・キルヒシュラーガー(ソプラノ)
エルンスト・ゼンフ合唱団女声合唱
録音時期:1995年12月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
Disc5
ムソルグスキー:はげ山の一夜(独唱・合唱付き)、モスクワ河の夜明け、ほか
ムソルグスキー・フリークとして知られるアバドならではの凝ったアルバム。『禿山の一夜』にはいろいろなヴァージョンがありますが、ここでは合唱が強烈な迫力で叫びます。組合わせは、モスクワ河の夜明けの美しい旋律でも有名な『ホヴァンシチナ』からの抜粋のほか、珍しい作品も収録。
・ムソルグスキー:はげ山の一夜(『ソロチンスクの市』版)
・ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』〜前奏曲(モスクワ河の夜明け)
・ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』〜シャクロヴィートゥイのアリア
・ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』〜ゴリツィン公の流刑
・ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』〜マルファの予言の歌
・ムソルグスキー:歌劇『ホヴァンシチナ』〜ペルシャの女奴隷たちの踊り
・ムソルグスキー:スケルツォ変ロ長調
・ムソルグスキー:古典様式による交響的間奏曲ロ短調
・ムソルグスキー:歌劇『ムラダ』〜凱旋行進曲
録音時期:1995年9月
録音場所:ベルリン、フィルハーモニー
アナトリー・コチェルガ(バス・バリトン)
南ティロル少年合唱団
ベルリン放送合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
クラウディオ・アバド(指揮)