のびやかにあふれる音楽性
トリオ・ショーソンの名トリオで聴く
フランス・ロマン派のピアノ三重奏曲集
2001年に結成され、2008年に「MIRARE」でCDデビュー以来、非常に高い評価を受けている若手ピアノ・トリオ、トリオ・ショーソン。そののびやかで柔軟な音楽性と息の合ったアンサンブルで、いつも私たちを魅了しています。
今回は、フランスものに取組みました。ドビュッシーを核に、現在では演奏される機会の比較的少ない作品を収録しています。デュボワ、トマなどの演奏機会の少ないピアノ三重奏曲の楽譜を、フランスのロマン音楽の調査・復興をめざす「palazzetto Bru Zane」から借り受け、色々精査して、シャミナードとルノルマンを収録することに決めたというトリオ・ショーソンのメンバー達。もともとトリオ・ショーソンという名前は、19世紀後半の作曲家エルネスト・ショーソンからとった名前ですが、ショーソン自身優れた作曲家であっただけでなく、同時代の音楽家達を、有名無名を問わず献身的にサポートした人物でもありました。そういう意味で、このプログラムはトリオ・ショーソンのメンバーたちにとっても特別な思い入れがあるといえます。
シャミナード[1857-1944]は1875年、音楽一家に生まれました。彼女の母親は素晴らしいピアニスト・歌手でありました。両親は娘セシルの音楽的才能をすぐに見抜き、ル・クーペといった当時活躍した音楽家に師事させました。また、サン=サーンス、シャブリエ、ビゼーらからも薫陶を受けました。3歳の時、まだ楽譜も読めない頃に弾いていたピアノをビゼーが聴いて衝撃を受け、両親に強力に教育を受けさせるようアドバイスしたといいます。当時まだまだ珍しかった女性作曲家として、ヨーロッパだけでなく、アメリカへのツアーも実現したほどに成功した初めての女性音楽家。作品34のトリオは、ジュール・デルサール(フランクのヴァイオリン・ソナタをチェロ版に編曲した人物)に献呈されました。3楽章構成になっており、主題が作品を通して現れる循環形式で書かれています。抒情的なメロディ、第3楽章フィナーレの力強い推進力は圧倒的。トリオ・ショーソンの3人ののびやかな演奏が作品の魅力を120%引き出しています。
ドビュッシーが作曲した唯一のピアノ三重奏曲は、4楽章で書かれており、魅惑的な旋律はマスネ、フランクやフォーレを、スケルツォ楽章でのピッツィカートはドリーブのバレエ音楽を思い起こさせます。たった3人の手から紡ぎだされているとは信じられないような流麗で熱いエネルギーに満ちた演奏は圧倒的です。
1846年生まれのルネ・ルノルマン[1846-1932]は現在ではほとんど知られていない存在の作曲家ですが、室内楽協会や、「ザ・リート・イン・エヴリ・カントリー」といった協会を立ち上げ、フランス歌曲を世界に広め、また逆にドイツ・リートなどをフランスに広めるべく尽力した人物でありました。劇作家アンリ=ルネ・ルノルマン[1882-1951]の父親でもあります。ト長調の三重奏曲は1893年にドイツで出版された作品。雄大な第1楽章に始まり、第2楽章の恍惚としたアンダンテ、そして第3楽章は活き活きとしたギャロップ風楽章。フィナーレは迸るエネルギーに満ちた楽章。勢いのあるのびやかな音楽性で、優れた作品を世に再認識してもらいたいという気概に満ちた力演です。(キングインターナショナル)
【収録情報】
・シャミナード:ピアノ三重奏曲第2番イ短調 op.34-2
・ドビュッシー:ピアノ三重奏曲ト長調
・ルノルマン:ピアノ三重奏曲ト短調 op.30
トリオ・ショーソン
録音時期:2011年7月
録音方式:デジタル