記憶に埋もれた懐かしさを呼び覚ます音色
日本には数少ないクラシックアコーディオン奏者、松原智美のソロ・アルバム。6オクターブに及ぶ音域と数種の音色を持つ左右ともにボタン式鍵盤の楽器で奏でる世界の名曲集です。
クラシックアコーディオンの奏者は日本ではまだ数が少ないですが、ヨーロッパおよびアジアの音楽大学では専攻科もあり、専門の奏者も数多くいます。松原智美は、大阪に生まれ、8歳からアコーディオンに親しみ、高校卒業後、渡仏し、パリ市立音楽院を経て、フォルクヴァング芸術大学(ドイツ)・アコーディオン科芸術家コースを修了しています。マックス・ボネ、御喜美江に師事しています。
セヴラックの『休暇の日々から』第1集の全8曲(ピアノ曲)はどれも懐かしさと優しさに満ちた音楽。モーツァルトの『ああ、ママに言うわ』による12の変奏曲(きらきら星変奏曲)では超絶技巧に圧倒されます。細川俊夫がユン・イサンに学んでいるときに書かれた『メロディア』は、本ディスクで唯一のアコーディオンのためのオリジナル作品ですが、雅楽のような、静謐の世界から生まれる笙を思わせる作品です。
【松原智美/ライナーノートより】
「選曲した作品たちは、細川俊夫のメロディアを除けば全てピアノ作品だ。モーツァルト、セヴラック、シベリウスとメラルティン、そしてグリーグ。決して派手ではないが、じんわりと温かいこれらの作品を練習しているうちに、ある日「水彩画---in Watercolors」という言葉が浮かんだ。アコーディオンは蛇腹から送った風でリードを振動させて発音する。風を送り続ける限り、音は鳴り続け、その間に音量を変化させたり、ヴィブラートをかけたりすることもできるが、しかし打鍵によって発音するピアノの音のような芯はない。音に芯が無いため、モーツァルトやセヴラックの作品には非常に苦労したのだが、その芯の無さゆえに水彩画のようなやさしいタッチで表現することが出来ると気づいた。水彩画は、そのタッチの柔らかさと透明感が魅力である。このアルバムを、そんな一枚の水彩画のように味わっていただければ・・・と願っている。」(販売元情報)
【収録情報】
● デオダ・ドゥ・セヴラック:『休暇の日々から』第1集
1. シューマンへの祈り
2. お祖母さまが撫でてくれる
3. ちいさなお隣さんたちが訪ねてくる
4. 教会のスイス人に扮装したトト
5. ミミは公爵夫人の扮装をする
6. 公園でのロンド
7. 古いオルゴールが聴こえるとき
8. ロマンティックなワルツ
● エルッキ・メラルティン:蝶のワルツ Op.22-17
● W.A.モーツァルト:グラスハーモニカのためのアダージョ K.356(617a)
● W.A.モーツァルト:『ああ、ママに言うわ』による12の変奏曲 K.265(300e)
● ジャン・シベリウス:エチュード Op.76-2(ピアノのための13の小品 op.76、第2曲)
● ジャン・シベリウス:ポプラ Op.75-3(ピアノのための5つの小品 op.75、第3曲)
● 細川俊夫:メロディア
● エドヴァルド・グリーグ:夏の夕べ Op.71-2
松原智美(アコーディオン/PIGINI Sirius)
録音時期:2017年9月20-22日
録音場所:大阪府泉佐野市、エブノ泉の森ホール(小)
録音方式:ステレオ(DSD/セッション)
左右ともにボタンで奏するクラシック・アコーディオンの音色。なんともいい味がある。演奏されている曲は細川作品以外はすべてピアノ曲だが、音域や強弱によって響きの色や立ち上がりの速さが異なることで、原曲では得られない想いが誘い出される。表題のないモーツァルトの変奏曲にすら物語が蠢く。★(中)(CDジャーナル データベースより)