吉野葛/盲目物語 新潮文庫 改版

谷崎潤一郎

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784101005065
ISBN 10 : 4101005060
フォーマット
出版社
発行年月
2002年05月
日本
追加情報
:
16cm,310p

ユーザーレビュー

総合評価

★
★
★
★
☆

4.0

★
★
★
★
★
 
0
★
★
★
★
☆
 
1
★
★
★
☆
☆
 
0
★
★
☆
☆
☆
 
0
★
☆
☆
☆
☆
 
0
★
★
★
★
☆
冒頭では自天王様の伝説や三種の神器に少し...

投稿日:2021/06/22 (火)

冒頭では自天王様の伝説や三種の神器に少し触れたり、土地の歴史的な背景や由緒について語られ、好奇心がかき立てられる。その二の妹背山からは風流な表現が一気に加速する。文章で辿りゆく美しい風景、行楽の感覚が描写に行き届いている。全体に流れている雅致なる空気感。実際に風情や興趣をおぼえながら、水の流れや、山のたたずまいを、言葉を通じて巡りゆくような味わい。素晴らしい景色が目の前に広がり来るよう。行きどまりの山奥に近い吉野郡の僻地、悠久な山間の村里、深い霊気と日光、いにしえに対する崇敬と思慕の情が溢れている。謡曲『国栖』の舞台についてや、地唄『こんかい』についての解釈の展開もあったり、『御前申す』『べるべど』と云う岩についての記述も興味深く、全体通して美麗な文章で旅気分も得られて、あらゆる要素を堪能出来る名作です。

seigo-hk さん | 長崎県 | 不明

1

読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

powered by

  • ヴェネツィア さん

    タイトルに掲げる2話を収録。「吉野葛」は、若き日の谷崎が吉野の奥地、秘境とも言うべき國栖(くず)を訪れた折の随想。ここは南朝と義経、静御前に所縁の地であった。「盲目物語」は語りに特徴を持つ。信長の妹、お市の数奇で悲劇的な一生を、側で見届けた盲目の老人が語る形式をとる。芥川の「地獄変」などと同じ形式をとり、過ぎ去った物語としてロマネスクな面影が全編に揺曳する。それは夢幻能をも想起させ、したがって鎮魂の響きをも帯びるのである。

  • ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中 さん

    秋の澄んだ空気に色あかく映えるもみぢ葉、なんの音もしないようなたくさんのいきものの気配が満ちるような。高く晴れた空のなか何処までも歩いていきたい、いつまでもここにいたい。初めて訪れる場所なのになぜか懐かしくて、なつかしさとかなしさと幸せと、満ちる気持ちと渇き求める気持ちが一緒になってぎゅうと胸が狭い。秋がきて空気のにおいが変わるたびやってくる帰りたいような気持ち。その気持ちとあわせて心にずっとのこしておきたいような、美しい美しい文章と郷愁。私の耳にもコーン、と高く抜ける音が響いてのこった。

  • 優希 さん

    言葉遣いが美しいです。永遠の理想の女性への憧れ、戦国の人々の喜怒哀楽の描き出し方に引き込まれました。日本的なものへの目を余すところなく注いだことで描き出された作品と言えるでしょう。

  • アキ さん

    「吉野葛」私と友人津村が吉野を訪れ、私は小説の題材を津村は亡き母の面影を辿る物語。南朝の伝説、妹背山婦女庭訓、二人静など吉野が舞台の話に、秋の吉野の描写が映える。柿の実、谷筋に吊り橋、色彩豊かな山の紅葉。津村は琴と母に似た妻を見つけ、小説は書かれず仕舞い。「盲目物語」めしいのあんまの語るひらがなの多い語りの文体。お市の方に仕え、長政、勝家、秀吉をあんまからの視点で物語る。二作品の文体は、まるで異なっていて、琴や三味線と謡曲が出てくるのが共通点。谷崎文学の懐の深さを感じた。

  • 肉尊 さん

    『吉野葛』:歴史小説は材料負けで書けずじまいだったという敗北宣言から疎かにされがちであるが、完成度はかなり高い作品だと感じる。柿・障子・饂飩の玉は吉野であるが故に鮮やかさを発揮する。静御前伝来の「初音の鼓」など歴史的ロマンを作品に散りばめているが、やはり帰着点としては女性の艶めかしさ、それは母への思慕に重なるという。谷崎作品の女性美は母なる存在=太母であり、それは鼓が何代も作り替えられていることを肯定するように、身近にあるはずのものなのだ。吉野といえば春の桜が有名だが、秋の柿に静御前の伝説を色添えた作品。

レビューをもっと見る

(外部サイト)に移動します

人物・団体紹介

人物・団体ページへ

谷崎潤一郎

1886年東京生まれ。東京帝国大学国文科中退。1910年、第二次「新思潮」創刊に関わり、同年「刺青」を発表。代表作に『細雪』や随筆『陰翳礼讃』など。1949年、第8回文化勲章受章。1964年に日本人で初めて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれる。1965年没(本データはこの書籍が刊行さ

プロフィール詳細へ

谷崎潤一郎に関連するトピックス

文芸 に関連する商品情報

おすすめの商品