一度きりの大泉の話

萩尾望都

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784309029627
ISBN 10 : 4309029620
フォーマット
出版社
発行年月
2021年04月
日本
追加情報
:
350p;20

内容詳細

「大泉に住んでいた時代のことは封印していました。しかし今回は、当時の大泉のことを初めてお話しようと思います」(前書きより)。全352頁、12万字書き下ろし。未発表スケッチ収録。

352ページ、12万字書き下ろし。未発表スケッチ多数収録。
出会いと別れの“大泉時代”を、現在の心境もこめて綴った70年代回想録。

「ちょっと暗めの部分もあるお話 ―― 日記というか記録です。
人生にはいろんな出会いがあります。
これは私の出会った方との交友が失われた人間関係失敗談です」


――私は一切を忘れて考えないようにしてきました。考えると苦しいし、眠れず食べられず目が見えず、体調不良になるからです。忘れれば呼吸ができました。体を動かし仕事もできました。前に進めました。
これはプライベートなことなので、いろいろ聞かれたくなくて、私は田舎に引っ越した本当の理由については、編集者に対しても、友人に対しても、誰に対しても、ずっと沈黙をしてきました。ただ忘れてコツコツと仕事を続けました。そして年月が過ぎました。静かに過ぎるはずでした。
しかし今回は、その当時の大泉のこと、ずっと沈黙していた理由や、お別れした経緯などを初めてお話ししようと思います。
(「前書き」より)

――お話をずっと考えていると、深い海の底から、または宇宙の星々の向こうからこういうものが突然落ちてくることがある。落ちてこない時はただ苦しいだけだけど、でも、それがふっと目の前に現れる時、宝物を発見した、という気持ちになります。自分が見つけたというより、エーリクが見つけてくれた、そういう気分になります。
そしてこの言葉を見つけたことで、『トーマの心臓』を描いて本当に良かったと思いました。
(「17 『ポーの一族』第1巻 1974年」より)

――今回、この筆記を書くに当たって、封印していた冷凍庫の鍵を探し出して、開けて、記憶を解氷いたしましたが、その間は睡眠がうまく取れず、体調が思わしくありませんでした。
なので、執筆が終わりましたら、もう一度この記憶は永久凍土に封じ込めるつもりです。
埋めた過去を掘り起こすことが、もう、ありませんように。
(「29 お付き合いがありません」より)

【目次】(※一部)
●前書き
●出会いのこと ― 1969年〜1970年
●大泉の始まり ― 1970年10月
●1972年『ポーの一族』
●下井草の話 1972年末〜1973年4月末頃
●『小鳥の巣』を描く 1973年2月〜3月
●緑深い田舎
●引っ越し当日 1973年5月末頃
●田舎と英国 1973年
●帰国 1974年
●『トーマの心臓』連載 1974年
●『ポーの一族』第1巻 1974年
●オリジナルであろうと、原作ものであろうと
●排他的独占愛
●鐘を鳴らす人
●BLの時代
●それから時が過ぎる 1974年〜2017年
●お付き合いがありません
●あとがき(静かに暮らすために)

【特別掲載1】「萩尾望都が萩尾望都であるために」(文・マネージャー 城章子)
【特別掲載2】 萩尾望都が1970年代に描き溜めた未発表スケッチ
【特別掲載3】 マンガ『ハワードさんの新聞広告』31ページ

【著者紹介】
萩尾望都 : 漫画家。1949年、福岡県生まれ。1969年デビュー。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で第21回小学館漫画賞、1997年『残酷な神が支配する』で第1回手塚治虫文化賞マンガ優秀賞、2006年『バルバラ異界』で第27回日本SF大賞、2010年にアメリカ・サンディエゴ・コミコン・インターナショナル・インクポット賞、2011年に第40回日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年に朝日賞など受賞歴多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • パトラッシュ さん

    『少年の名はジルベール』では語られなかった、少女漫画界を大きく変えたレジェンドの友情と破綻のドラマ。自覚した革命家の竹宮惠子と、自覚せざる天才型の萩尾望都が同じ大泉に集った時に衝突は必然だった。理想を目指し苦闘する竹宮は、似たテーマで軽々と自分を追い抜く萩尾の才能を間近で見て盗作の疑いをかけてしまった。焦燥と嫉妬に駆られての暴走だったようだが、自己肯定感が低く繊細な性格の萩尾には50年近く封印し竹宮作品を読まなくなったほどのトラウマになったのだ。人の心の何と難しきものか。対人関係で苦労しただけに痛感する。

  • R さん

    エッセーとか、随筆とかではなく、文学的な深みというものはうっちゃって、本当に事実を書いたという本でした。作品とはいわない。非常に興味深い内容だし、ファンにとっては色々考えさせられるところがありそうだけども、もう、大泉という場所でのことはこれ以上語られることはないのだと、その強い意志が伝わってくる、書かれていることへの批評や批判も必要としない、きわめて一方通行な内容だと宣言しているようでもあり、このことについてすり寄ってくる輩への辟易とした感じがうかがえた。今があり、それだけなんだな。

  • てら さん

    ほぼ一気読み。「そのこと」へ収束していく前半の緊張感が凄まじい。『少年の名はジルベール』を読んでわずかに引っかかっていた部分が萩尾望都によって明かされる恐怖と納得。そしてモー様は天才なんだけど天才じゃない、ご両親も含めて人間関係に苦悩しながら数々の傑作を描き、そのことで自身も生き延びてきた、常在戦場のソルジャーなんだと理解した。明晰で簡潔な文体が時々乱れるのが核心の部分であり、わかりやすいのと同時に読者の精神を削る。言い方として正しいかはわかりませんが、第一級の史料です。ありがとうございます。

  • まこみや さん

    大泉の話は「いじめ」に他ならない。スクールカースト風に言えば、女帝NとパシリのK(逆?)が、嫉妬と排他的独占欲からMを恐喝断罪して精神的・身体的苦痛を与えた犯罪行為である。勿論、真相は萩尾側の訴告だけではわからない。竹宮側には別の弁明があるだろう。また萩尾の両親の厳格で否定的な教育観のせいで萩尾自身にもそうした刷り込みが起こりやすい体質があったとも言える。二人の秀逸な漫画家の若き日の切磋琢磨をいじめの構図で解釈することは余りに通俗的、表層的と言われるかもしれない。その批判は尤もだが、この印象は揺らがない。

  • akihiko810/アカウント移行中 さん

    竹宮恵子『少年の名はジルベール』を読んでから、 ずっと気になっていた 萩尾望都側 の大泉の話。「大泉サロン」で共同生活をしながら、「少女漫画革命」を起こそうとしていた竹宮・増山と、天才萩尾。そんな大泉サロンの内側と、絶縁に至るまで。印象度A+  読みたくて仕方なかった本書。図書館で借りたのだが、重い話だと思って手に取るのが遅れて、1度延長してしまった。 「ジルベール」ではぼかされていた、竹宮が萩尾に「ポーの一族は私の盗作」と詰め寄る場面は息をのんだ。 萩尾が考察してるように、(続く

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萩尾望都

漫画家。1949年、福岡県生まれ。1969年デビュー。SFやファンタジーなどを巧みに取り入れた崇高な作風で唯一無二の世界観を表現し続け、あらゆる方面から圧倒的なリスペクトを受けている。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で第21回小学館漫画賞、1997年『残酷な神が支配する』で第1回手塚治虫文化

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