榲〓に目鼻のつく話

泉鏡花

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784309921631
ISBN 10 : 4309921639
フォーマット
発行年月
2019年03月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
中川学 ,  
追加情報
:
120p;21X21

内容詳細

今日は此の家に居り侍り、御方様たちおなぐさみ。―暗闇坂にある榲〓の樹の奥、古い武家屋敷には秘密が隠されていた。そして向かい合う懸札の家で行われる大人たちの閉ざされた逸遊嬉戯。あの少年の日々、一人の少女をめぐるすべてが妖しく謎めいていた。泉鏡花幻想譚の絵本化を精力的に続ける中川学が、大胆なイマジネーションによって、はるか鏡花思春期の記憶を辿る妖しくも哀切な少女思慕譚に挑む。

【著者紹介】
泉鏡花 : 1873年(明治6年)11月4日、金沢生まれ。本名、鏡太郎。九歳で最愛の母を失う。1890年(明治23年)小説家を志して上京後、一年を経て尾崎紅葉に師事。「外科室」「夜行巡査」などの観念小説で評価を得たのち、「龍潭譚」「化鳥」などで幻想的世界に傾き、1900年(明治33年)に代表作「高野聖」を発表。独自の怪奇幻想の世界とロマンティシズムで、明治・大正・昭和にわたって日本近代文学史上に特異な地位を築いた。1939年(昭和14年)9月7日、肺腫瘍により死去(享年六十五)

中川学 : 1966年(昭和41年)生まれ。京都の寺で住職をしながらイラストレーションを生業とする。国内外の書籍の装画や挿絵を手がける。近年絵本の仕事に力を入れている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • 吉田あや さん

    「今日は此の家に居り侍り 御方様たち、おなぐさみ。」泉鏡花による大正9年の短篇。旧仮名・旧漢字で綴られる物語は細部まで鏡花の世界を大切に紡ぎ、読み手に現実を思い出させることなく理性の枠を超えて魅了していく。中川さんの描く明るい闇に浮かぶ極彩色の景色は万華鏡のように視覚を惑わし、白百合の少女は榲桲の果肉の如き甘く艶やかで瑞々しい色香を放つ。禁断の果実を目の前にした少年の未知なる世界への慄きと、性の目覚めを暗示するような、滴る果実の芳香が織りなす世界に酔いしれる。(続↓)

  • sin さん

    少年がつけた噛み跡が目と口を導いて大人たちを蠱惑する。榲桲のふっくらとうりざねの平安朝の姫のたおやかな美貌から男たちの欲望が魑魅魍魎の様に描き出されて時代を遡って現出する様だ。中尉は何故にこの話を語るのだろうか?純白ではない白百合−きめ細かにふっくりとして甘く薫った娘…その娘の描写はどこか遠くを見据える様で、ぽっかりあいた目で視線を投げかけるだけで手も足も出ない、なすが儘の娘の境遇を想われて哀れだ。マルメロ(榲桲、木瓜、学名:Cydonia oblonga)バラ目バラ科マルメロ属に分類される落葉高木の1種

  • 天の川 さん

    少年時代の記憶は妖しくて美しくて哀しい。裏木戸の懸札には「今日は此の家に居り侍り、御方様たちおなぐさみ。」向いの屋敷の庭にある榲桲の樹の根方から出た女役者の死体。懸札の奥で男達の慰みものになっている自分と比べ、操を立てて殺された女役者を羨ましいと訴える少女の切なさ。少年が噛んで目鼻をつけた榲桲を少女に見立てて舐めまわす男達のおぞましさ。陰惨な話ではあるけれど、中川さんの絵がつくと昇華されて感じるのは、その絵が様式美を感じさせるとともに御本人がご住職でらっしゃるからか…。⇒

  • 井月 奎(いづき けい) さん

    鏡花の物語はひやりと冷えた石清水のように心に沁み、そのなかのわずかな余韻によって彼の作品は際立ち、そして形成すのです。このほの暗くて少し湿り気のある物語の余韻は乙女の血の味。人の情にからめとられた乙女の心は切り刻まれて血を滴らせています。鏡花はその娘の後生を弔うために鮮烈な清水にその血を混ぜて清らかな上澄みにて世に問います。「春を売る娘のこういう心は汚れていますでしょうか?」鏡花はそう私たちに問うています。女性の、いえ無垢な者の心への挽歌は目眩を覚えさせる美しさによって彩り、香り高くあるのです。

  • yumiha さん

    表紙絵も美しいけれども、どのページを開いても美しい。まず挿し絵だけを堪能する。「今日はこの家に居り侍りお方様たちおなぐさみ」の表札が不穏。ストーリーは泉鏡花らしく耽美的官能的。でも、美しい女性をいたぶることも、男性の物欲しげな唾も、全く共感できない。

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人物・団体紹介

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泉鏡花

1873年石川県金沢生まれ。本名・鏡太郎。17歳で上京、尾崎紅葉のもとで小説を学ぶ。22歳のときに発表した「夜行巡査」「外科室」が“観念小説”と賞賛され、以降作家として活躍する。やがて浪漫的・神秘的作風に転じるが、明治・大正・昭和を通じ、独自の境地を切り拓いた。代表作は「高野聖」「歌行燈」など。19

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