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私小説 Fromlefttoright

水村美苗

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784480425850
ISBN 10 : 4480425853
Format
Books
Publisher
Release Date
March/2009
Japan

Content Description

「美苗」は12歳で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生。アメリカに溶け込めず、漱石や一葉など日本近代文学を読み耽りつつ育ったが、現代の日本にも違和感を覚え帰国をためらい続けてきた。雪のある日、ニューヨークの片隅で生きる彫刻家の姉と、英語・日本語まじりの長電話が始まる。異国に生きる姉妹の孤独を通じて浮き彫りになるものとは…。本邦初、横書きbilingual小説の試み。

【著者紹介】
水村美苗 : 東京生れ。12歳で渡米。イェール大学卒、仏文専攻。同大学院修了後、帰国。のち、プリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』を刊行し芸術選奨新人賞、95年に『私小説from left to right』で野間文芸新人賞を受賞。98年に辻邦生氏との往復書簡『手紙、栞を添えて』刊行。2002年『本格小説』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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その名の通り、水村美苗の私小説です。 誰...

投稿日:2021/03/21 (日)

その名の通り、水村美苗の私小説です。 誰?という人のために簡単に説明すると、水村美苗は、1950年代初頭に東京に生まれ、12歳の時に父の仕事の都合でニューヨーク郊外に移住し、紆余曲折を経て(三十歳をすぎてから?)作家になった人です。 内向的で、性格から趣味嗜好に至るまで、もうとにかくアメリカ向きでなく、本人も何回も言及・自覚しているように、日本のしがないサラリーマンの娘でしかないのにひどくスノッブで…そういう人がアメリカに生活して二十年経った。 そしてこの小説の中の「現在」では彼女は三十も過ぎたというのに東部の大学でフランス文学なんて流行りもしていなければ食えもせず競争だけ厳しい世界で大学院生を続けている。 日夜引きこもっていて、論文は全く書けず、人とまともに口をきくのは、離れて暮らす姉との長電話だけ。 その長電話の合間に、記憶は遠い昔近い昔を行ったり来たりし、主人公の一人称でアメリカでの生活が語られます。 女が一人で生きていくということ、アジア人が自国の外で生きていくということ、そういうシビアな現実のあれこれが包み隠さず語られるのですが、容赦なく描かれているからこそ読んでいて「そうそう」と不思議な安心感があります。 厳しい状況に置かれているときって、フィクションの中で同じような状況が手加減して描いてあると余計に嫌な気持ちになったりするんですよね。いやいやそんなもんじゃないんだよ!って、イライラが募ったり。 本書はオブラートなしで描いてあるので、そういう嫌悪感がないんです。 この小説が世に出た頃はSNSどころかブログもなく、引きこもりもしくはそれに準ずるほど人との交流が少ない人は、こんな生活自分一人だけなんじゃないか、と不安にかられることも多々あったと思うんです。 私も昔学生の頃、人との交流がすごく少ない時期があり、そういう時にこの小説を何度も手に取り、ホッと息をつくことができました。 めちゃくちゃな家族がいる人、英米での生活でしんどい思いをしている人、女が一人で生きていくと疲れがたまるときあるよなと思っている人、引きこもっている人などにおすすめです。

苺 さん | 不明 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • キムチ

    12年前は読了とは言えぬお粗末な感覚を記憶している。この作家の語り口、チョイスする表現合わなさすぎた。このところイーユン等複数の文化圏で時を食む方のアイデンティティクライシスを読み考えが深まって来た…己の粗野、狭隘を恥じつつ。筆者が自らの意思で選んでいない事が及ぼすさざ波は震えすら覚えた。一方、地球人と称し、緯度経度を自在に遊ぶ方々は増えている。こう生まれたのが仕方ないほどの強張った感覚を自省させられる。マラマッド作品と併読している為か人種の坩堝、しかも平然と差別区別が存している米国にあり、マイノリティ、

  • りつこ

    父親の仕事の関係で12歳の時に家族でアメリカに移住し20年目を迎えた大学院生。ニューヨークに住んで彫刻家として細々と暮らしている姉との英語交じりの長電話。アメリカや英語に馴染みきれず、日本の近代文学を学び日本人であることを拠り所に生きようとするも、現代の日本にも違和感を感じる。人種の問題や差別についての記述もリアルで「そういうことだったのか」と腑に落ちるところも多かった。拗らせた人たちの愚痴という形態を取りながら、読後のこの満足感。今まで読んだ水村作品の中で一番読みづらかったが面白かった。

  • いちねんせい

    『日本語が亡びるとき』を読んだときのショックはまだ記憶に新しいが、この本にもやられてしまった。あの孤独感は彼女たちにしかわからないものなのかもしれない。時代もそうであるが、大人になってから海外に出て10年弱の私では、というより自らその道を選んだ者の感じる孤独感や戸惑いなぞ、当たり前だが彼女たちの感じるそれとは比べ物にはならない。『日本語が亡びるとき』で論じられていたことがここでもつながってきて、この本が横書きかつ日本語と英語が混ざった形で書かれなければいけなかった理由が少しわかった気がした。

  • ロマンチッカーnao

    『日本語が亡びるとき』を読んで以来、水村さんに夢中になり7冊目。横書き、ときおり英語が混ざるという読みにくい感じのする作品にも関わらず、読みだすと夢中になりました。とにかく筆力が凄い。水村さんの日本語への思いを論文にしたものが日本語が亡びるときだとすれば、この作品は、日本語への思いを小説化したものですね。しかし、水村さんの作品はどれもがほんまにすごいと感動するんですけど、あんまり売れていないようだし、読んだ人の評価と知名度が違いすぎますよね。もっと多くに人に本で欲しい作家さんナンバー1です。

  • Nissy

    横書きで英文が混在するという独特の形式ですが、読んでいて徐々にこの内容を書くならばこれ以外ないと思えてきました。「英語を話す私」と「日本語を話す私」の間で揺れ動く感情や黒人とアジア人は同じと見做される人種の話しなど、他の作家では出てこない切り口での展開に釘付けになります。姉と妹の長電話の会話には葛藤、後悔、憤怒、郷愁、諦観など様々な感情が読み取れます。最近読んだ同じ著者の「母の遺産−新聞小説」とオーバーラップする内容なので、とても興味深く読めました。読友さん本。

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