グロテスク

桐野夏生

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784163219509
ISBN 10 : 4163219501
フォーマット
出版社
発行年月
2003年06月
日本
追加情報
:
20cm,536p

内容詳細

昼の鎧が夜風にひらめくコートに変わる時、和恵は誰よりも自由になる。一流企業に勤めるOLが、夜の街に立つようになった理由は何だったのか…。「OUT」「柔らかな頬」を凌駕する新たな代表作。〈受賞情報〉泉鏡花文学賞(第31回)

【著者紹介】
桐野夏生 : 1951年、金沢生まれ。成蹊大学法学部卒。1993年、「顔に降りかかる雨」で第三九回江戸川乱歩賞受賞。1998年、「OUT」で第五一回日本推理作家協会賞受賞。一九九九年、「柔らかな頬」で第一二一回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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この本に登場する女を「絶対に友達になりた...

投稿日:2009/09/04 (金)

この本に登場する女を「絶対に友達になりたくないタイプの人間ばかり」と評した人がいる。酷いことを言う。この薄汚れた社会と愚直に向き合ってズタズタになった女たちにいとおしさを感じないのか。「欲求が高すぎるがゆえに苦しむ人たち」とも。はたしてそうか。幼少期から親や教師に「他人よりも優れるという絶対的な価値観」を刷り込まれ、生涯そのマインドコントロールに苦しめられる滑稽と悲惨、誰にも共通するのは寒々しいまでに孤独であるということ。私には痛ましいまでにわかるのだ、彼女らの気持ちが。彼女たちは認めてもらいたかったのだ、自分という存在を。「あなたの愚かさに私の心は痛みます」そう言って憐れんだ女の聖書を投げつけハイヒールで踏みにじる娼婦、和恵の凄絶な手記は涙なくして読めない。負けた者は劣等意識に苛まれ、勝ち続けた者も目的を見失い虚無感に襲われる。カネや学歴、美醜の織りなすこの酷薄な階級社会でもがきつづける彼女たちは他ならぬ我々自身の姿なのだ。それは誰をも幸せにはしない。著者は「この世のありとあらゆる差別を書いてやろうと思った」と述べている。何かに殉じることなしにこの不毛な堂々巡りは終わらない。胸に去来するのは福田恒存の名著『私の幸福論』にあった「ひとりでもいい、他人を幸福にしえぬ人間が、自分を幸福にしうるはずがない」という言葉、終にはそこに行き着くのだと思う。私が得たくて得られなかった家族の意義も、そこにあるに違いない。

recorda_me さん | 東京都 | 不明

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読書メーターレビュー

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  • れみ さん

    娼婦をしていたユリコと和恵が殺された事件をきっかけに、ユリコの姉で和恵の同級生である主人公をはじめ様々な人物の目線から語られる物語。タイトル通りグロいしエグいし、登場人物のほぼ全てが不愉快なことをする。だけどなぜか目が離せなくて惹きつけられる。そして、あなたにもこういうところあるでしょ?と突きつけられているみたいで本当に怖かった。でも面白かった。

  • 藤月はな(灯れ松明の火) さん

    アメトーク!!の光浦靖子さんの紹介からずっと、読みたかった本。初っ端のユリコの姉(そういえば、この人の名前は最後まで出てなかった)の「男の人を見ていると、この人と私からどんな子供が生まれるのだろうと想像してしまう」という独白にドン引きしてしまう。でも私も歳を取るとそう思ってしまうのだろうか?世間様の中身はスカスカな「理想」に阿り、にこやかな顔の下でドロドロに煮詰まって表面張力ギリギリのドス黒い「女」の部分が炸裂しているのが「女であることに、世間に、復讐するのだ」や「セックスは好きだけど、男は嫌い」だと思う

  • らむれ さん

    人間ってこんなに恐ろしい生き物だっけ。まさに怪物。自分の価値を見出せない怪物たち。哀れ、と思う反面、自分のすぐ背後に彼女たちが堕ちていった深淵が迫っている気がしてぞくりとする。女だけじゃない。世の中のグロテスクな部分が凝縮されたような作品でした。学校の階級社会も、会社での無言の圧力も、女の勝ち組意識も、報われない努力も、中国の貧しさも、全部どうしようもない。どうしようもない社会に対する著者の怒りや疑問が伝わってきてきました。ものすごい負のオーラ。でも、上下組500頁を一瞬で読み終えたのも事実。

  • 研二 さん

    女子高の話が一番迫力があった。それと、主人公とおじいさんのやりとりもよかった。登場人物の中国にいた頃の話は、迫力はあったが、同じ小説の中に入れなくてもいいような気がした。

  • みのゆかパパ@ぼちぼち読んでます さん

    主人公である「わたし」の妹ユリコと、高校時代の同級生・和恵が、ともに渋谷の街娼として殺された。物語は「わたし」の語りを通じて、なぜ彼女らが街娼となり、殺されねばならなかったのかをたどっていくのだが、とにかく彼女たちの心情が題名通りにグロテスク。確かに彼女たちが直面した環境はえげつないものではあったけれど、そのなかで自分を守るためには、ここまでゆがむしかなかったのか。現代社会への鋭い問いかけをはらんだ濃密な人間ドラマとしての読み応えもあったが、その負のパワーにどっと疲れてしまったというのが率直な感想である。

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人物・団体紹介

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桐野夏生

1951年金沢市生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。98年に『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫

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