コーリッシュ四重奏団/モーツァルト&シューベルト
新ウィーン楽派の使徒的存在コーリッシュ四重奏団による、モーツァルトとシューベルトの円熟期の作品集を復刻。
ヴァイオリニストのルドルフ・コーリッシュによって創設されたコーリッシュ四重奏団は、1936年から37年にかけて行ったシェーンベルクの弦楽四重奏曲全集という記念碑録音で名声を博しましたが、当盤はモーツァルトとシューベルトを中心に古典派とロマン派における彼らのスタイルを伝えてくれます。それは楽曲の構造を明快に打ち出し、溌溂としたリズムと快いテンポで描くもの。緩徐楽章でも音楽が耽溺することなく流れてゆきますが、柔らかな音と抒情も備え、当時の団体としては控えめながらポルタメントを使うところは第2次大戦前のウィーンの空気も感じさせます。モーツァルトとシューベルトの後期作品は楽曲の充実ぶりが十分に伝わる一方、『音楽の冗談』は愛嬌が控えめで真剣勝負のような「冗談」になっています。シュナーベルの弟子で新ウィーン楽派に協力的だったピアニストのモナートを迎えたシューマンは、あいまいなところのない明晰明瞭な演奏となっています。
ルドルフ・コーリッシュはオーストリアのクラム・アム・センメリング(ゼメリング)に生まれ、ウィーン音楽アカデミー(現ウィーン国立音楽大学)でオタカール・シェフチークに師事、同時にフランツ・シュレーカーに作曲を、フランツ・シャルクに指揮を学びました。第1次大戦による3年間の兵役を経て、1919年にはハンス・アイスラー、ヴィクトル・ウルマン、ルドルフ・ゼルキンらと共にシェーンベルクに弟子入りすると、師の私的演奏協会での作品演奏を目的にウィーン弦楽四重奏団を旗揚げし、1927年にはコーリッシュ四重奏団と改称しました。彼らが欧州ツアー中の1938年にナチス・ドイツがオーストリアを併合するとパリに留まり、2年後にはアメリカに移って1941年に解散。その後コーリッシュは教職とプロ・アルテ弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンも務めつつ、ソリストとしても新作の演奏に意欲的に貢献し、1978年に世を去りました。コーリッシュは少年時代の怪我の影響でヴァイオリンを右手に、弓を左手に持って演奏し、コーリッシュ四重奏団は暗譜による演奏でも知られていました。(輸入元情報)
【収録情報】
Disc1
1. モーツァルト:弦楽四重奏曲第21番ニ長調 K.575
録音:1934年6月25日 初出:Columbia LX 337/38 (matrices CAX 151/54)
2. モーツァルト:弦楽四重奏曲第22番変ロ長調 K.589
録音:1937年9月22,23日 初出:Victor 1436/38 [set M 407] (matrices PCS 09704/09)
3. シューベルト:四重奏断章 ハ短調 D.703
録音:1934年1月9日 初出:Columbia LX 289 (matrix CAX 7037)
4. シューベルト:弦楽四重奏曲第13番イ短調 D.804『ロザムンデ』
録音:1934年1月8,9日 初出:Columbia LX 286/89 (matrices CAX 7030/33, 7036, 7038 & 7039)
Disc2
5. シューベルト:弦楽四重奏曲第15番ト長調 D.887
録音:1934年4月20,26日 初出:Columbia LX 357/60 (matrices CAX 7141/48)
6. シューマン:ピアノ四重奏曲変ホ長調 Op.47
録音:1937年11月26日 初出:Victor 14816/18 [set M 431] (matrices cs 017324/39)
7. モーツァルト:音楽の冗談 K.522
録音:1937年11月12日 初出:Victor 14822/23 [set M 432] (matrices CS 015874/77)
コーリッシュ四重奏団
ルドルフ・コーリッシュ(第1ヴァイオリン)
フェリックス・クーナー(第2ヴァイオリン)
オイゲン・レーナー(ヴィオラ)
ベナー・ハイフェッツ(チェロ)
ホーテンス・モナート(ピアノ:6)
ジョン・バロウズ、ドメニコ・カプート(ホルン:7)
復刻プロデューサー:Eric Wen
復刻エンジニア&マスタリング:Ray Edwards