昭和の犬

姫野カオルコ

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784344024465
ISBN 10 : 434402446X
フォーマット
出版社
発行年月
2013年09月
日本
追加情報
:
307p;20

内容詳細

第150回 直木賞受賞

辛いこともあったけど、平凡だから、幸せなこと。

柏木イク 昭和33年生まれ。
『リアル・シンデレラ』以来、待望の長編小説。

昭和33年、滋賀県のある町で生まれた柏木イク。嬰児のころより、いろいろな人に預けられていたイクが、両親とはじめて同居をするようになったのは、風呂も便所も蛇口もない家だった――。理不尽なことで割れたように怒鳴り散らす父親、娘が犬に激しく咬まれたことを見て奇妙に笑う母親。それでもイクは、淡々と、生きてゆく。やがて大学に進学するため上京し、よその家の貸間に住むようになったイクは、たくさんの家族の事情を、目の当たりにしていく。
そして平成19年。49歳、親の介護に東京と滋賀を行ったり来たりするなかで、イクが、しみじみと感じたことは。

ひとりの女性の45年余の歳月から拾い上げた写真のように、昭和から平成へ日々が移ろう。
ちょっとうれしいこと、すごくかなしいこと、小さなできごとのそばにそっといる犬と猫。
『リアル・シンデレラ』以来となる、姫野カオルコ待望の長編小説!


姫野カオルコ氏からのコメント

【姫野カオルコという名前はオ×××、カラオケ、オカルトに似ているという自嘲的なものでした。コミカルにも似ていて、名前から誤解されることは、デビュー当初のほうが、むしろ少なかったように思います。が、わりと最近になって「ティーン向きの小説」「若い女性に心地よい小説」だと誤解する人がおられ、困ることがずいぶんあります。こうした誤解も含めて持ち味ということにしておこうとも思うのですが、とりあえず、私の小説はティーン向きではありません。それに場合によっては大人も不愉快にさせる小説ではないかと思います。
小学生や中学生が主人公の話はよく書きます。でも小中学生が出てくるからといって、その話が小中学生向きなわけではない。
『昭和の犬』も、題名に「犬」が付くからといって、犬のことをラブリーに綴った話ではありません。犬の可愛さを涙ながらに訴えたものでもありません。恋愛も出てきません。
ではどういう話か。現在なら「毒親」とも呼ばれる奇異な性格の父母のあいだに、昭和33年に生まれた主人公の5歳から49歳まで、各々の時期にあった何気ない出来事を、遠い風景画のように描いた話です。それらの何気ない出来事には、みな傍らに犬が(ときに猫も)います。
「犬は飼い主に似る」と言われます。他人が見てパッとすぐわかる性質のみならず、飼い主が自分自身でも気づかぬうちに内面に抱え込んだものが、飼い犬に反映していることもよくあると思います。
昭和時代は64年ありました。前半に「太平洋戦争」があり、その後は、「戦後」と呼ばれ、やがて平成に至ります。昭和から平成の間、歴史に刻まれるような派手な人生を送ってこられた人もおられましょうが、多くの人のそれは地味です。『昭和の犬』の柏木イクもまた、なんの変哲もない半生を送ってきました。そこには、小さなかなしいこともあったりしました。けれど、平凡だから幸せなこと……たとえば犬や猫の頭をなでるときの、あの心のやすらかさなど……を感じるとき、人は、幼き頃にしたように無邪気に、かつ、年を重ねた智慧で、天に向かって手を組んで祈るのではないでしょうか。人生そのものに。「ありがとう」と。(ブログより抜粋)】

  

【著者紹介】
姫野カオルコ : 姫野嘉兵衛。1958年滋賀県出身。97年『受難』(文春文庫)が第一一七回直木賞候補、04年『ツ、イ、ラ、ク』(角川文庫)が第一三〇回直木賞候補、06年『ハルカ・エイティ』(文春文庫)が第一三四回直木賞候補、10年『リアル・シンデレラ』(光文社文庫)が第一四三回直木賞候補になった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • 遥かなる想い さん

    150回(2014年)直木賞受賞。 柏木イクの成長を 通して、昭和を描く。 著者のしつこいまでの犬への 拘りが、物語に奇妙な リズムを与え、昭和を 別の視点で甦らせていく。 昭和33年生まれのイクたちの 過ごした日々の描写は、 「三丁目の夕日」にも似て、 暖かい。ところどころに 垣間見られる昭和の エピソードがなぜか懐かしく ほのぼのと読めるのは 著者の視線が読者の懐古に 繋がり、心を優しくさせる からなのだろうか。最終章は 迫り来る高齢化社会の日々を 昭和と対比させながら、 穏やかにまとめた章だった。

  • ヴェネツィア さん

    時間的にも空間的にもきわめてリージョナルな小説。物語の冒頭は主人公のイクが5歳の時。1963年だ(ちなみに、東京オリンピックは、その翌年)。所は滋賀県香良市(架空だが、明らかに甲賀市だろう)。紫口市から香良市に馬車で向かうというところが信じがたいのだが、そこは滋賀県の田舎町でのこと。当時はそんなものだったのだろう。小説の地の文章は共通語だが、会話文は滋賀の方言そのもの。この作品がよくも受け入れられたものだと思う。テーマも、今時には珍しい「知足」。犬を媒介にしていなければアナクロニズムそのものでしかない。

  • ミカママ さん

    作者は『姫野版・放浪記』を描きたかったのだろう。そのちょっと他人とは風変わりな人生には、常に犬(ときに猫)が居た。流行していたアメリカのTVドラマと、当時の世相を横糸にして。似たような時代を過ごしたわたしには胸迫るものがあったが、当時を知らない若い世代にはこれがウケるだろうか。もっと先を読みたい、というところでスルッと次の章に移る手法は、上手いようでいて「かわされた」感もシコる。みなさんおっしゃるように、なぜこれが直木賞?なのだが、中のヒトに近い友人によると「直木賞は功労賞」ということで納得。

  • takaC さん

    なるほど。これらの話をまとめた一冊に『昭和の犬』と名付けたのね。腑に落ちた。

  • 文庫フリーク@灯れ松明の火 さん

    初ノミネートで直木賞受賞された朝井まかてさん『恋歌』5回目のノミネートで初のノミネートから17年経過しての受賞・姫野カオルコさん。実在の人物を描いた『恋歌』の激動とは対照的に、市井に生きる女性の視点で、その折々に親しかった犬を通して描かれる「昭和」という時代。「後年になって分かる事と、子供には分かるはずもない事。当時は近すぎて見えなかった物が、今を視点にしてカメラを引くと掴める。遠くにある物は掴めて、近くにある物ほど掴めない。人生なんてその繰り返しかもしれません」著者インタビューが、この作品の肝かも→

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人物・団体紹介

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姫野カオルコ

作家。姫野嘉兵衛の表記もあり(「嘉兵衛」の読みはカオルコ)。1958年滋賀県甲賀市生れ。『昭和の犬』で第150回直木賞を受賞。『彼女は頭が悪いから』で第32回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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