非常出口の音楽

古川日出男

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784309025896
ISBN 10 : 4309025897
フォーマット
出版社
発行年月
2017年07月
日本
追加情報
:
200p;19

内容詳細

不思議な音に導かれ、森に入るおじいさんとおばあさん、ママのバイクから落っこちた少年の、1年間のサバイバル、人がいっさい消えた世界で進化する猫たち―。『gift』以来となる、13年ぶり、待望の掌篇集。

【著者紹介】
古川日出男 : 1966年、福島県生まれ。98年『13』で作家デビュー。2002年『アラビアの夜の種族』で日本推理作家協会賞および日本SF大賞、06年『LOVE』で三島由紀夫賞、『女たち三百人の裏切りの書』で15年に野間文芸新人賞、および16年に読売文学賞(小説賞)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • masa さん

    バンド音楽が生まれることは控えめにいっても奇跡だ。魂とか祈りとか衝動とか、そう呼ぶしかないような、ナニかが宿る。なのに、バンド音楽が死ぬことは酷く容易い。メンバーの心が通わない。どうしようもなく凡庸な、それだけだ。世界のあちこちで非日常的なことが日常的に起きている。ループするライヴ盤にはたとえ鳴っていても、そのときを過ぎれば二度とは聴こえない音が封じられていて、終わりの手拍子は始まりの歓声と溶け合い、非常出口に一方通行で吸い込まれてゆく。他人が下す評価をミュートして、僕は付属するふたつの耳を信じて傾ける。

  • さっとる◎ さん

    日常はいつだって非情で異常なので私は恒常的に非常出口を必要としている。そんな前口上。それはもちろん頭上とか市場とかG線上とかにあってもいいのだけど、できれば路上とか俎上とか日常的で、籠城にも耐えうるような身近なものがいい。聞こえなくなった声が悲しくても毎日は回るのだから。どこへ行ってもとりあえず帰る場所は必要なのだから。そんな当たり前すぎる毎日。生き残るのに必要なのは特別な一瞬じゃなくて、日常を非日常に変えてくれる、ささいな特別。それはお気に入りの音楽とか、繰り返し開いてしまう本とか、たぶんそんな近くの。

  • さっとる◎ さん

    非日常っていいよなあと思う。日常に不満があるとかないとかそういうところを超えて、いいよなあって思う。でもそうそう日常が「非」になるわけもなく。その「非」にならない日常が「非」になる瞬間。もしかしたらそれは私が思うよりたくさん溢れているのかもしれない。予言としてのお天気番組。日々脱落レースが密かに開催される満員電車。宙から宙に移動するアップルヘッド。音に糸。それを見逃さないでいられるかどうかは、私次第。人には、ときに非常出口が必要だ、…。ひっそりそこにある奇跡に私はどれくらい気付けているだろう?

  • Mishima さん

    あの子は水たまりを蹴散らして泥水を浴びて通りを歩いた。さながら派手なパレードのように。10年後異国の街で僕は途方に暮れていた。前から半裸の女が歩いてくる。あの子だった。後ろから僕を追い越した、曰くありげな男とすれ違いざま、束の間手を繋いではなした。かすかな目配せと指のサイン。彼女の後をゆく。坂道をくだり曲がり角で踵を返し僕を見つめる。五センチの至近距離。彼女は掌を開いた。真紅の薔薇。粉々になって指からこぼれた。彼女の頭から泥水が滴り落ちた。その顔から笑顔がこぼれた。僕の思惑を真っ向から蹴散らす笑顔だった。

  • メセニ さん

    作者はあとがきでこう書いている。「この本は、誰かの人生に入り口があるとか、〜昏迷する時代からの出口はどこだとか、そういうことには一切関わっていない」。ただし、「人には、時に非常出口が必要だ、と、そのことだけを語ろうとしている」と。そうなのかもしれない、と思う。”非常出口”というフレーズから発想するものはそれぞれだろうけど、小説が好きな僕らにとって、例えばここに登録した本の一つ一つは一度は通った扉の痕跡かもしれない。この作品に理路整然としたものはきっとない。でも何かこう脱出の糸口となる着想が疼きとしてある。

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古川日出男

1966年、福島県郡山市生まれ。98年『13』でデビュー。『アラビアの夜の種族』(2001)で日本推理作家協会賞および日本SF大賞、『LOVE』(2005)で三島由紀夫賞、『女たち三百人の裏切りの書』(2015)で野間文芸新人賞および読売文学賞を受賞。『平家物語』全巻の現代語訳も手がけ、戯曲『冬眠す

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