(こちらは新品のHMVレビューとなります。参考として下さいませ。中古商品にはサイト上に記載がある場合でも、封入/外付け特典は付属いたしません。また、実際の商品と内容が異なる場合がございます。)
伊福部昭の芸術 20周年記念BOX
SHM-CD仕様、14枚+初CD化のボーナスCD2枚
ボーナスCDには初CD化の「合唱領詩オホーツクの海」などの秘蔵音源を収録予定!
日本を代表する大作曲家であった伊福部昭。日本の音楽らしさを追求した民族主義的な力強さが特徴の数多くのオーケストラ曲のほか、『ゴジラ』を初めとする映画音楽の作曲家として、また音楽教育者としても知られております。伊福部昭自ら監修のもと作り上げた管弦楽作品の数々が不滅の録音として生み出された「伊福部昭の芸術」シリーズが制作開始から20周年を記念して、シリーズ初のBOX化。初CD化のボーナスCD2枚をつけて、SHM-CD計16枚、全タイトル最新リマスタリング。(キングレコード)
伊福部昭の芸術 1 譚 初期管弦楽
● 日本狂詩曲
● 土俗的三連画
● 交響譚詩
日本フィルハーモニー交響楽団
広上淳一(指揮)
録音:1995年
伊福部昭の芸術 2 響 交響楽の世界
● シンフォニア・タプカーラ
● 管弦楽のための『日本組曲』
日本フィルハーモニー交響楽団
広上淳一(指揮)
録音:1995年
伊福部昭の芸術 3 舞 舞踊音楽の世界
● 舞踊音楽『サロメ』
● 兵士の序楽
日本フィルハーモニー交響楽団
広上淳一(指揮)
録音:1995年
伊福部昭の芸術 4 宙 SF交響ファンタジー
● SF交響ファンタジー 第1番
● SF交響ファンタジー 第2番
● SF交響ファンタジー 第3番
● 倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク
日本フィルハーモニー交響楽団
広上淳一(指揮)
録音:1995年
伊福部昭の芸術 5 楽 協奏風交響曲/協奏風狂詩曲
● ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲
● ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲
徳永ニ男(ヴァイオリン)
日本フィルハーモニー交響楽団
広上淳一(指揮)
舘野泉(ピアノ)
日本フィルハーモニー交響楽団
大友直人(指揮)
録音:1997年
伊福部昭の芸術 6 亜 交響的エグログ
● バレエ音楽『日本の太鼓』ジャコモコ・ジャンコ
● 二十絃筝とオーケストラのための『交響的エグログ』
● 『フィリピンに贈る祝典序曲』
日本フィルハーモニー交響楽団
本名徹次(指揮)
野坂惠子(二十絃筝)
録音:2003年
伊福部昭の芸術 7 幻 わんぱく王子の大蛇退治
● 交響ファンタジー『ゴジラVSキングギドラ』
● 交響組曲『わんぱく王子の大蛇退治』
コール・ジューン
弓田真理子(コントラルト)
日本フィルハーモニー交響楽団
本名徹次(指揮)
録音:2003年
伊福部昭の芸術 8 特別篇 頌 卒寿を祝うバースデイ・コンサート 完全ライヴ
● フィリピンに贈る祝典序曲
● 日本狂詩曲
● SF交響ファンタジー第1番
● 交響頌偈 釈迦
● シンフォニア・タプカーラより第3楽章(アンコール曲)
東京混声合唱団
コールジューン
卒寿祝賀合唱団
甲田潤(合唱指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
本名徹次(指揮)
録音:2004年5月31日サントリーホールにおけるライヴ録音
伊福部昭の芸術 9 祭 伊福部昭音楽祭ライヴ
● SF交響ファンタジー 第1番
● 銀嶺の果て(東宝)
● 座頭市物語(大映)-
● ビルマの竪琴(日活)(新編纂)
● 『わんぱく王子の大蛇退治』より“アメノウズメの舞”
● オーケストラのための 特撮大行進曲 (新編纂)
● 管絃楽のための『日本組曲』
● シンフォニア・タプカーラ
日本フィルハーモニー交響楽団
本名徹次(指揮)
録音:2007年3月4日サントリーホールにおけるライヴ録音
伊福部昭の芸術 10 凜 初期傑作集
作曲家本人の監修と共にスタートし、その志を熱く受け継ぐ息長いシリーズの第10弾。幻の初期作品・音詩『寒帯林』が遂に緻密なセッション録音で収録されているほか、『日本狂詩曲』の原典版と『土俗的三連画』をライヴ音源で収めています。
【収録情報】
● 音詩『寒帯林』
東京交響楽団
高関健(指揮)
録音時期:2014年5月6日
録音場所:ミューザ川崎シンフォニーホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
● 日本狂詩曲(原典版)
● 土俗的三連画
札幌交響楽団
高関健(指揮)
録音時期:2014年5月30、31日
録音場所:札幌キタラコンサートホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
伊福部昭の芸術 11 踏 札幌交響楽団ライヴ
作曲家本人の監修と共にスタートし、その志を熱く受け継ぐ息長いシリーズの第11弾。高関健&札響による100周年記念ライヴ・コンサートからの清新壮大で魂燃える秀演。
【収録情報】
● ヴァイオリン協奏曲第2番
● シンフォニア・タプカーラ
加藤知子(ヴァイオリン/協奏曲)
札幌交響楽団
高関健(指揮)
録音時期:2014年5月30、31日
録音場所:札幌キタラコンサートホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
伊福部昭の芸術 12 壮 第4回伊福部昭音楽祭ライヴ
作曲家本人の監修と共にスタートし、その志を熱く受け継ぐ息長いシリーズの第12弾。ゴジラ生誕60周年を期して愛弟子・和田薫が情熱こめたライヴも興奮!
【収録情報】
● 日本狂詩曲(校訂版)
● シンフォニア・タプカーラ
● SF交響ファンタジー第1番
東京フィルハーモニー交響楽団
和田薫(指揮)
録音時期:2014年7月13日
録音場所:東京オペラシティコンサートホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
ライナー・ノーツより
生誕100年の伊福部昭
片山杜秀
2014年は、作曲家、伊福部昭の生誕100年。100年前の5月31日、伊福部は北海道の釧路に生まれた。
当日はコンサートが集中した。札幌交響楽団は全伊福部プロの定期演奏会を行った。札幌は、伊福部が学び、30代初めまでのうち十幾年かを暮らし、『日本狂詩曲』や『交響譚詩』を作曲した街である。定期演奏会は30日と2日続き。高関健指揮、加藤知子のヴァイオリン独奏(『伊福部昭の芸術10』及び『11』に収録)。一方、川崎では、伊福部とは創設期から縁のある東京交響楽団が、やはり全曲伊福部の特別演奏会を行った。大植英次指揮、山田令子のピアノと野坂操壽の二十絃箏独奏。もうひとつ、生地の釧路では、地元の吹奏楽団等の出演による伊福部個展が開かれた。
5月31日だけではなかった。2月27日には横浜で、井上道義指揮日本フィルハーモニー交響楽団による記念演奏会があった。没後1年の追悼行事が第1回だった『伊福部昭音楽祭』も第3回と第4回を3月30日と7月13日に開催した。第4回は東宝の肝煎りで、伊福部の弟子、和田薫の指揮する東京フィルハーモニー交響楽団の演奏(『伊福部昭の芸術12』に収録)。1954年の映画『ゴジラ』を完全上映し、映像に合わせ、劇伴音楽を生オーケストラですべて再現するという、画期的試みを含んでいた。2014年は『ゴジラ還暦』の年でもある。
それから、斎藤一郎指揮オーケストラ・トリプティークによる3回シリーズの映画音楽コンサートもあれば、伊福部の愛弟子、芥川也寸志が手塩に掛けたアマチュア・オーケストラの新交響楽団は、湯浅卓雄指揮、安倍圭子のマリンバ独奏で『ラウダ・コンチェルタータ』を演奏。新交響楽団から分かれ、伊福部の『幻の作品』だった音詩『寒帯林』を蘇演した団体でもあるオーケストラ・ニッポニカは『シンフォニア・タプカーラ』を阿部加奈子指揮で取り上げた。日本音楽集団も全曲目伊福部で晩秋に定期演奏会を行う。共にピアニストの山田令子や高良仁美の伊福部プロによるリサイタルもあった。
CDの発売も、セッション録音、ライヴ録音、歴史的音源の発掘など、各社からひっきりなし。NHKはTV向けにドキュメンタリー番組を2本制作。7月6日にBSで放送された『音で怪獣を描いた男』と、8月30日に地上波で放送された『伊福部昭の世界』。またNHKは、NHKホールで観客なしで、高関健指揮東京フィルハーモニー交響楽団により『日本狂詩曲』と『シンフォニア・タプカーラ』をTV用に2月に収録し、5月30日に初放送された。TVの『名曲アルバム』でも伊福部の特撮映画のための音楽や『日本狂詩曲』出版物も幾つか。坂本龍一をディレクターとする『札幌国際芸術祭2014』では伊福部の人生と音楽についての展覧会のようなものも行われた。
他にもまだまだ挙げるべき出来事がある。キリがない。2014年は、日本文化の中での伊福部の存在の大きさがこれでもかと示された年になった。が、その道は平坦ではなかった。確かに戦時期から戦後初期にかけては、伊福部は日本の第一線の作曲家と認められていた。けれど、まだ40代くらいのうちに『オールド・ジェネレーションの作曲家』に編入されてしまった。1970年代には『リトミカ・オスティナータ』と『土俗的三連画』と歌曲集しか現役盤がなく、映画音楽もまったくディスクがないという時期があった。コンサートや放送で取り上げられる機会も稀だった。
そのあと伊福部は蘇っていった。日本の伝統音階とヨーロッパの古風な音階(特にフリギア旋法)を融通無礙に行き来する、メロディの作法。即興で踊っても歌ってもどうしてもスムースには行かず字余りや字足らずになりがちな、民衆の芸能の雰囲気を、音楽的に表出するために、変拍子を多用することになった、リズムの作法。低音を厚くして大地に根差す感覚を強調する、響きへの志向。原始性をかきたててやまない執拗な繰り返し。そういう特徴に彩られた伊福部の音楽の独特な味わいが再発見されていった。そこには、伊福部が戦後に音楽を手掛けたたくさんの映画の中でも、特に『ゴジラ・シリーズ』が、『子供だましの怪獣映画』から『戦後日本文化のシンボル』へと格上げされていった歴史も絡んでくる。
キングレコードの『伊福部昭の芸術』は1995年に始まった。そのとき伊福部は既に再評価の波には乗っていた。しかし、予算のかかるセッション録音で伊福部のオーケストラ作品をまとめ録りするのは大胆すぎるだろうというのが、業界一般の声だった。それでも『伊福部昭の芸術』はスタートした。決断の要ることだった。作曲家の監修でオーケストラ作品を! キングレコードの提案に目を輝かせた伊福部の姿が忘れられない。あんなに喜色満面というのは珍しい。オーケストラ作品をライヴではなくセッションで集成してゆき、模範となる演奏を残す。録音ブースには自分が居る。それは伊福部の念願だった。『伊福部昭の芸術1〜7』は実際にそうやって作られた。
それからライヴ盤の『8』と『9』を経て、記念すべき年に『10〜12』の一挙揃い踏み。満州国のための音詩『寒帯林』の初セッション録音も含まれている。戦中と戦後との作風の変化の掛け橋役となる重要な音楽である。『五族協和をスローガンとする満州国』と『北方ユーラシアの諸音感の協和をめざす伊福部音楽』とのあいだには、どうしたって親和性もある。そのうえ『寒帯林』には『ゴジラ音型』の祖型もあらわれる。『寒帯林』を知らずして伊福部は語れない。
『寒帯林』と、ゆかりの札幌のオーケストラの演奏と、愛弟子の和田薫の指揮。そういうラインナップによる新たな3枚は、『生誕100年』のその先へ、恰好の水先案内人を務めてくれるに違いない。