真田信繁の書状を読む 星海社新書

丸島和洋

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784061386013
ISBN 10 : 4061386018
フォーマット
出版社
発行年月
2016年09月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
285p;18

内容詳細

真田信繁は、「大坂の陣で活躍した武将」として広く知られています。しかし、大坂入城から討死までは、彼の人生最後の八ヶ月間にすぎません。それ以前の活動は、置き去りにしてよいものでしょうか?また、「幸村」という名をはじめとする、軍記物由来の情報も史実と勘違いされがちで、結果的に不確かな信繁像が流布してしまっているのが実情です。そこで本書では、信繁が出した全一七点におよぶ書状を道しるべに、彼の足跡を辿りなおしたいと考えます。軍記物など後世に編まれた「二次史料」ではなく、書状という「一次史料」を丹念に読むことで、多くの新知見を得ることができるでしょう。誰も知らなかった、信繁の素顔に触れる旅がはじまります!

目次 : 第1章 史料を読むということ(古文書とは何か/ 一次史料と二次史料―「史料批判」という作業 ほか)/ 第2章 少年期の書状(元服前の信繁が出した平仮名書きの書状/ 木曾に人質として行った理由 ほか)/ 第3章 秀吉馬廻時代の書状(原本が新発見された文書/ 「信繁」署名の初見文書と小田原合戦参陣 ほか)/ 第4章 丸度山配流期の書状(丸度山への配流/ 年次比定と信繁の入道 ほか)/ 第5章 大坂の陣時代の書状(徳川からの寝返り工作/ 大坂冬の陣の終結 ほか)

【著者紹介】
丸島和洋 : 戦国史研究者。1977年大阪府生まれ。2000年、慶應義塾大学文学部史学科卒業。2005年、同大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。博士(史学)。古文書学・史料学に軸足を置いた戦国大名論を専門としている。現在、国文学研究資料館特定研究員・慶應義塾大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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今年度のNHK大河ドラマ『真田丸』の主人公...

投稿日:2016/09/25 (日)

今年度のNHK大河ドラマ『真田丸』の主人公である真田信繁、「真田幸村」の名で広く知られた名将だがその生涯は多分に伝説化されすぎているところがあり、かえってその等身大の実像が見えにくくなっている感は否めない。『真田丸』の時代考証担当として知られる丸島和洋氏の新著である本書は、信繁が残した計17通の「発給文書」(大名などが出した自筆書状など)を丹念に検証することで、伝説の名将の実像に迫るという内容の一冊である。 信繁の最も古い書状は天正10(1582)年、真田家重臣で親類の河原綱家に宛てた手紙である(50p〜 )。まだ元服前だったようで幼名の「弁丸」を名乗って おり、平仮名だらけのいかにも子供らしい内容である。信繁の生まれた年については永禄10(1567)年説と元亀元年2月2日(1570年3月8日)説の2説があるが、手紙の内容の幼さから丸島氏は元亀元年説を支持している。ただ『真田丸』では通説通り永禄10年説が採用されている。当時信繁は祖母とともに南信濃の有力国衆・木曾氏の人質となっており、近いうちに帰ることができそうなのを喜んでいる文章となっている。 元服後の信繁は天下人豊臣秀吉の命令で大坂に出仕し馬廻衆の一員として秀吉に近侍するようになる。第3章(81p〜 )は信繁の大坂時代の消息についての論考である。馬廻衆は君主の親衛隊であると同時にその側近であり、事務官僚としての役割ももっていた。文武両道に秀でた優秀な人物でなければ勤まらない任務であり、まして秀吉は天下人である。いかに信繁の能力が認められていたかということであろう。信繁は秀吉から1万9000石という小大名なみの知行をもらっていたが、その支配は真田家重臣の原昌貞(旧武田家重臣の原昌胤の息子)に任せていたことが自筆書状から明らかとなっている。この大坂時代に信繁は豊臣家重臣大谷吉継の娘と結婚、秀吉の腹心石田三成とも姻戚関係となる(109p)。『真田丸』においても信繁と吉継・三成との濃厚な付き合いが描かれるがそれはこうした史実を反映したものである。 関ヶ原の戦いで西軍に付いた信繁とその父真田昌幸は所領没収のうえ紀州九度山に配流となった。信繁の自筆書状の大半はこの九度山配流以降のもので、流人生活の実情と信繁の変化する心情が窺える。昌幸・信繁親子の生活費などは信繁の兄信之・蓮華定院・浅野幸長からの援助で賄っていて、元大名としての対面を保てるだけの待遇はされていたようである。しかしあくまでも流人なので生活は厳しく、昌幸・信繁の信之宛ての書状には仕送りの催促といった生活感に満ちた内容が目立つ。一方で信繁自身も老いを自覚するようになり、精神的疲労も感じていた。書状にはそうした状況への苛立ちも見えている。丸島氏は「こうした心情が、信繁に大坂城入城を決意させたものと思われる(218p)と指摘している。 大坂の陣において信繁は豊臣秀頼の誘いを受けて大坂城に入城、冬の陣では大坂城南方に築いた出丸「真田丸」を拠点に徳川の大軍を撃退、天下にその武名をとどろかせた。この活躍に驚いた徳川家康は側近の本多正純に命じて信繁に徳川方へ寝返るよう調略を仕掛ける(234p)が失敗に終わる。信繁は秀頼の信任を得ていたし、すでに死を覚悟していた。夏の陣において信繁は家康の本陣に突撃を敢行するなど勇戦奮闘するがついに力尽きて討ち死にする。彼の最後の書状は討ち死にの前日に家臣に与えた木片の感状(君主が功のあった家臣に与える賞状)である。ここでの署名も「信繁」であり、彼はついに自ら「幸村」と名乗ることはなかった事が分る(257p〜 )。 さすがに専門家らしく行き届いた内容で、論考にも十分な説得力が感じられた。『真田丸』もいよいよ佳境を迎えつつあり、本書を読みながらドラマを楽しむのもまた一興であろう。

金山寺味噌 さん | 愛知県 | 不明

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読書メーターレビュー

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  • 厩戸皇子そっくりおじさん・寺 さん

    さよなら2016年、さよなら真田幸村。『真田丸』を楽しみにしていた私が自分にしたクリスマスプレゼントが本書である。大河ドラマの時代考証の一人である著者が、幸村(信繁)の書いた17通の手紙と数通の関係文書で綴った信繁伝である。同時に絶好のテキストを使った古文書入門でもある。文書の状態や書き方、言葉遣い、紙質や史実から年次や宛先を比定していく。歴史学者は名探偵である。ドラマを観ていたお陰で、出てくるマイナーな人物達も俳優の顔が浮かび暖かい気持ちで読めた。あの大河は実に研究を尊重したドラマだったのだ。お薦め。

  • buchipanda3 さん

    著者は「真田丸」の時代考証を担当。書状(手紙)という切り口は面白そうと思い手に取った。古文書というと難しそうなイメージもあるが、分かりやすい現代語訳も付記されていて読み易かった。さらに元服前から晩年(大坂の陣)までをカバーしており、ドラマの総ざらいの意味としても楽しめた。書状の中身は様々。何とは無いものもあるが、そこからも信繁の人柄や心情が読み取られて興味深い。九度山や大坂の陣の頃のは苦悶や諦念、覚悟など様々な気持ちが感じられ何とも切ない。史料の読み方、書状の形式などの解説もあり楽しめた1冊だった。

  • うしうし さん

    専門性が高いが、面白い本である。信繁の書状17通を時系列で紹介し、関連文書を踏まえて解説を行っている。また、古文書を読む際の入門書的な記述も多くあり、これも非常に勉強になる。特に1号文書とされる「真田弁丸消息写」の考察が素晴らしい。この文書はこれまでに存在が知られてはいたが内容が誤って解説されていたものを著者が再検討し、新たな解釈を与えたもの。「弁丸」こと後の信繁が、幼少時に木曽に人質として抑留されていたことを解説する。書状に認められる「あどけなさ」が残る印象なども、著者の解釈によってすべてが氷解する。

  • さとうしん さん

    真田信繁に関連する書状を年代順に提示して読み解いていき、その内容を掘り下げていこうという試み。信繁の生年、血縁の者とのつながりと、年代ごとの関係性の変化、大坂の陣の前後の動きなど、個々の書状から読み取れる信繁の足跡が意外に多いことを示すとともに、「史料を読む」という歴史学本来の営みの面白さも伝えてくれる。

  • amabiko さん

    読み応えある良書で今年読んだ本では一番の収穫。近年刊行の何冊かの信繁伝を読んでいたので、本書は特に興味深く読めた。当該期の古文書学入門として読むこともでき、とても勉強になる(特に書札礼の解説)。現代語訳の仕方にも工夫があり、私のような史料読解能力の低い者でも十分に理解できた。まだ30代の著者はこれまで一体どれだけ多くの史料に接してきたのか。歴史学の基礎として、史料(特に原本史料)と真摯に向き合うことの大切さを痛感させられた。

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