生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる

下西風澄

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784163916378
ISBN 10 : 4163916377
フォーマット
出版社
発行年月
2022年12月
日本
追加情報
:
528p;20

内容詳細

「心」とは、ひとつの試みにすぎない。ソクラテスは心を発明し、カントは自律した完全な心を追い求めた。人間以外の存在と共に心を語ることを試みたハイデガー、心と身体の関係を問い直すメルロ=ポンティ、日本における心の姿を探し続けた夏目漱石。若き俊英が鮮やかに描き出す、人類と心の3000年。

目次 : 心の形而上学とメタファー/ 第1部 西洋編(心の発明/ 意識の再発明と近代/ 綻びゆく心/ 認知科学の心)/ 第2部 日本編(日本の心の発生と展開/ 夏目漱石の苦悩とユートピア/ 拡散と集中)

【著者紹介】
下西風澄 : 1986年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。哲学に関する講義・執筆活動を行っている。論文に「フッサールの表象概念の多様性と機能」(『現象学年報』)ほか。執筆に「色彩のゲーテ」(『ちくま』)、詩「ねむの木の祈り」(『ユリイカ』)、絵本『10才のころ、ぼくは考えた。』(福音館書店)など。心という存在は歴史のなかでいかに構築されてきたのか。哲学を中心に、認知科学や文学史など横断的な視点から思索しており、本書はその成果をまとめた初の単著である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • Gokkey さん

    力作。所謂現象学の教科書通りの古代ギリシア〜ソクラテス〜デカルト〜カント〜フッサール〜ハイデガーという流れで「心」の形而上学を纏めつつ、ヴァレラやメルロ=ポンティに基づき環境-体の一元論的なイメージを創り上げる。本書の白眉は万葉集や古今和歌集を紐解きながら日本における「心」のイメージの時間的変遷を現象学と対比させながら論じる後半部にある。そして最後に漱石の作品群を紐解き、西洋哲学をインストールしてしまった漱石が心の在りかを探し求める様を描く。この苦悩はai時代を生きる現代人にも等しく鎮座するように思える。

  • mim42 さん

    心という切り口で西洋哲学の主要点を繋いだところが本書の肝。頭の中の整理に役立った。パスカルにかけた時間やヴァレラが2回出てくるあたりは微妙だが面白かった。しかし、後半の日本編はいただけない。なぜ日本の心の哲学史を考える時に漱石や万葉集が登場するのだろう?登場すること自体に問題は無いが、この取扱いは「文学史」のものでは?いずれにせよ「心と哲学」がテーマのところで前景に来るのは違和感。

  • teddy11015544 さん

    ホメロスからメルロポンティ、AIまで。万葉集から夏目漱石まで。意識と心のありようの変化は大脳皮質の機能の進歩と関係があったのだろうか。人間は肉体労働から解放され、次に頭脳労働から解放され、どこに向かっていくのだろうか?肉体と脳という軛のあるなかで。

  • ハルト さん

    読了:◎ なぜ人は「心」を持つのか。心が宿る人間とはなんなのか。心は生まれては消滅し、また生まれる。西洋編では、先人の哲学者たちの思想を辿りながら、心を形作ろうとする。日本編では、夏目漱石を題材に、「心」と自然の在り方をまとめた。哲学に素養がなくて興味だけで読んだせいか、うなずけるところはあるものの全体的に理解できたというのにはほど遠く、もうちょっと勉強してから再読したいなと思った。夏目漱石については、その自然と交われぬ苦悩こそが、漱石の文学を生み出しているのだと思えた。漱石を読みたくなった。

  • 鴨長石 さん

    心とは何か。ホメロスの時代では風に例えられたように、コントロール外のものだった。西洋的なコントローラブルな心はソクラテスに始まり、デカルト→カントを経て完成した…かに見えたが、フッサールあたりから疑義が唱えられ、ハイデガー→メルロ=ポンティとよりその論点も洗練されていく。本書ではそのような西洋哲学の流れで終わらず、日本における心の捉え方を第二部として描いた。漱石に比重を置きすぎという意見もあるようだが、体系的な哲学のない日本では文学において鋭い感性が個々に花開いたのであり、考察対象としては適切だと思う。

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