『フィガロの結婚』全曲、『ドン・ジョヴァンニ』全曲、『コジ・ファン・トゥッテ』全曲　Ｓ．クイケン＆ラ・プティット・バンド（１９９２−９８　ステレオ）（９ＣＤ）

モーツァルト：ダ・ポンテ三部作
『フィガロ』『ドン・ジョヴァンニ』『コジ』
クイケン＆ラ・プティット・バンド
故・吉田秀和氏絶賛の『コジ』含め高水準な演奏

長いキャリアを持つ古楽器オーケストラ、「ラ・プティット・バンド」は、1972年にグスタフ・レオンハルトとシギスヴァルト・クイケンによって設立され、長くクイケンに率いられてきました。
　今回登場するセットは、1992年から1998年にかけて収録されたモーツァルトのダ・ポンテ三部作をまとめたもので、彼らの芸風が、古典派オペラにもよく適合するものであることを世に知らしめた高水準な内容が魅力的なものとなっています。

【フィガロの結婚】
いかにもクイケンらしい落ち着きはらった緻密な統率と、歌手たちのライヴならではの生き生きとした表情が共存する演奏。さまざまなスタイルの音楽が混在する盛りだくさんな様式のこの作品の魅力を、ひとつひとつ解きほぐすかのような深みのあるアプローチはさすがクイケン。第4幕最後の「赦し」の場面のあとに訪れる、上演への盛大な喝采にも思わず納得の演奏です。なお、よく問題にされる第3幕の曲順については、近年の主流である1･2･3･4･7･8･5･6･9･10場という進行を採用しています。

【ドン・ジョヴァンニ】
キリスト教の三大巡礼地のひとつであるスペイン、サンチャゴ・デ・コンポステラにおけるライヴ録音。クイケン指揮するモーツァルトのオペラでは、歌手と密接に絡み合う古楽器オケのサウンドが細部情報の細部を浮き立たせて実におもしろい聴きものとなっており、登場人物たちの織りなす繊細なドラマを、楽器を交えて幾重にも描き込んだモーツァルトの面白さが良く伝わってくるのがポイントです。

【コジ・ファン・トゥッテ】
故・吉田秀和氏も絶賛の名演奏。クイケンの練り上げられた解釈を反映してか、随所に聴かれるとてもオリジナル楽器演奏とは思えないしっとりした叙情美がまず耳を惹きますが、一方で時代楽器演奏特有のヴァイタリティも十分に備わっており、オリエンタル趣味の部分などではダイナミックで色彩的な効果も満点。
　これにモニカ・グロープやイソコスキ、ナンシー・アージェンタをはじめとする優れた歌手陣のバランス感覚に秀でた歌唱が加わり、オーケストラの最良の伴奏を得て、透明で目の詰んだ音楽を聴かせてくれるのですから言うことがありません。
　重唱だらけ、つまり声部の多い特殊なこのオペラの魅力が、器楽を含めるとさらに多くの声部によって綿密に組み上げられていることを教えてくれるという、全曲にわたって懐の深いアプローチが印象的な素晴らしい演奏です。音質も優れており、深い呼吸を投影した序曲から、その魅力的な質感には思わず聴き惚れてしまうほど。ライヴ録音でこの水準の高さは驚異的です。（ＨＭＶ）

【収録情報】
● モーツァルト：歌劇『フィガロの結婚』全曲（３ＣＤ）
　フィガロ：ヴェルナー・ヴァン・メヘレン
　スザンナ：クリスティアーネ・エルツェ
　アルマヴィーヴァ伯爵：ヒューブ・クレセンス
　伯爵夫人：パトリツィア・ビッチーレ
　ケルビーノ：モニカ・グロープ、他
　ナミュール室内合唱団
　録音時期：1998年
　録音方式：ステレオ（デジタル／ライヴ）

● モーツァルト：歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全曲（３ＣＤ）
　ドン・ジョヴァンニ：ヴェルナー・ヴァン・メヘレン
　レポレッロ：ヒューブ・クレセンス
　ドンナ・エルヴィラ：クリスティーナ・ヘーグマン
　ドンナ・アンナ：エレーナ・ヴィンク
　ドン・オッターヴィオ：マルクス・シェーファー
　ゼルリーナ：ナンシー・アージェンタ
　マゼット：ナンコ・デ・ヴリエス
　騎士長：ハリー・ヴァン・デル・カンプ
　カペラ・コンポステラーナ
　録音時期：1995年
　録音方式：ステレオ（デジタル／ライヴ）

● モーツァルト：歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』全曲（３ＣＤ）
　フィオルディリージ：ソイレ・イソコスキ
　ドラベッラ：モニカ・グロープ
　フェルランド：マルクス・シェーファー
　グリエルモ：ペール・ヴォルスタッド
　デスピーナ：ナンシー・アージェンタ
　ドン・アルフォンソ：ヒューブ・クレセンス
　ラ・プティット・バンド合唱団
　録音時期：1992年
　録音方式：ステレオ（デジタル／ライヴ）

　ラ・プティット・バンド
　シギスヴァルト・クイケン（指揮）