大自然と神への賛歌!
メシアン:《峡谷から星たちへ》
メシアン[Olivier Eugène Prosper Charles Messiaen 1908-1992] の管弦楽作品中、最大の規模を誇る傑作《峡谷から星たちへ》(1971-1974)は、アメリカ建国200周年(1976年)を祝う目的で、ニューヨーク楽壇の大パトロンでもあるアリス・タリー女史が作曲を委嘱した作品です。
創作にあたり、メシアンは「世界の驚異」と題された一連の書物を調べるうちに、アメリカのユタ州にある峡谷を偶然見つけ、そしてその光景を実際に自分の目で確かめるため、1972年に取材旅行に出かけます。
メシアンは、このザイオン国立公園とブレイス・キャニオンへの旅で、雄大な自然から大きな霊感を得ることとなり、大胆かつ華麗な色彩にあふれたスタイルを獲得。巨大な峡谷と、エキセントリックなまでの威容を湛えた岩石群、果てしない宇宙に広がる星たち、そして多彩な鳴き声で呼び交わす鳥たちの様子を通して、人智を超えた自然に対する畏怖と神への畏敬の念を表すことに成功しています。
演奏時間は約90分(3部12曲)、ラテン系の楽器まで用いた打楽器部隊を要するユニークな編成のオーケストラによる斬新で個性的なサウンドは、オーディオ的にも注目度抜群。
全曲は大きく分けて3つの部分から成り、それぞれのブロックは、砂漠、星、鳥の声から開始され、いずれも峡谷の壮大な風景描写で締めくくられています。
重要な役割を果たすピアノは、イヴォンヌ・ロリオの弟子で、現在ではメシアン作品のエキスパートとしても知られるイタリア系フランス人ピアニスト、ロジェ・ミュラロが担当。
指揮のチョン・ミョンフンはいうまでもなくメシアンのお気に入りともいうべき存在で、これまでにも数々の優れたレコーディングやコンサートをおこなってきているのは誰もが知るとおり。
楽器編成は、独奏セクションに、ピアノ、ホルン、シロリンバ、グロッケンシュピール、オケ・セクションに、ピッコロ、フルート2人、アルト・フルート、オーボエ2人、イングリッシュ・ホルン、クラリネット3人、バス・クラリネット、ファゴット2人、コントラ・ファゴット、ホルン2人、トランペット3人、トロンボーン2人、バス・トロンボーン、、ヴァイオリン6人、ヴィオラ3人、チェロ3人、コントラバス、ジェオフォーン(サンドマシーン)、エオリフォーン(ウィンドマシーン)、パーカッション5人(タムタム、ゴング、クロタル、チューブラー・ベルズ、マラカス、クラベス、ウッド・ブロック、グラス・チャイムズ、シェル・チャイムズ、ウッド・チャイムズ、トライアングル)というもの。 シロリンバなる楽器は名前の通り、シロフォンとマリンバの特質をあわせ持った楽器です。
クラーベはキューバ系の打楽器で、そのラテン音楽でおなじみのサウンドは、硬質の木で作られた2個で1組の楽器から生み出されています。
クロタルは、元来は古代エジプトから伝わる祭祀用の小型シンバル、あるいはそれに類する楽器を指し、アンティック・シンバルとして、ラヴェルのバレエ音楽《ダフニスとクロエ》などでも使われていました。
ロジェ・ミュラロ(ピアノ) / ジャン=ジャック・ジュスタフレ(ホルン) / フランシス・プティ(シロリンバ) / ルノー・ミュゾリーニ(グロッケンシュピール)
チョン・ミョンフン指揮フランス国立放送フィルハーモニー
2001年7月、フランス放送のホール“サル・オリヴィエ・メシアン”でデジタル収録
エグゼクティヴ・プロデューサー:クリスティアーン・ガンシュ
レコーディング・プロデューサー:レナート・デーン
バランス・エンジニア:レイモンド・バッティン