Product Details
ISBN 10 : 4794812922
Content Description
この新しい階級概念は、私たち一人ひとりの明日の姿を描いている。
人間を大地につなぎ直す大いなる反転。万人の新たな政治参加モデル
近代化の進行によって人類活動は加速度的に増大し、私たちは人間活動の痕跡が地質に明確に残る時代、「人新世」に到達した。いまや人間の生産システムは破壊システムの様相を呈し、甚大な気候危機を招いている。ところが、多くの人々は未曽有の危機が迫る中、無関心、麻痺状態に陥ったままだ。親が子に「居住可能な世界」を残すこともままならなくなった文明を、未だに「合理主義的」と見なしている。
本書はそんな私たちに、「近代化」を早急に脱して「エコロジー化」を目指すべきだと説く。ただエコロジー化への移行は容易ではない。著者らはその原因を、近代人に特有の自然観、「自然は外部的で遠くから把握が可能なもの、人間社会とは無関係に存在するもの」という見方にあると分析する。その自然観ゆえに、近代人は虚構の居住世界に迷い込んでしまう。彼らにとって、居住する大地も帰属する国家も市場経済も、すべてがこの自然観(近代の認識論)に支配された抽象的存在なのである。自然を資源とみなし「無限の生産」を目指すことができるのもそのせいだ。ところが、いまや人類活動は地球の「環境容量」を遥かに超えるところまで来てしまった。そしてそこに、「終わりなき侵略戦争」が覆い被さっている。
著者らが「エコロジー化」への第一歩として挙げるのがエコロジー階級の政治的育成である。ただしそれは、マルクスやエリアスがあげたような伝統的社会階級ではなく、生き物の生存条件の維持に最大の価値を置く「地‐社会階級」である。著者らはエコロジー運動を社会運動に効果的に繋げるべきだとするが、そこに重大な要件を一つ設ける。近代の自然観を排し、新たな自然観をとることだ。そこでの自然とは「クリティカルゾーン」(生き物が誕生以来、何十億年という年月をかけて地上に創出し、維持してきた地球の表層数キロの薄膜)のことをいう。私たちが目指すべきは「生産」ではなく、クリティカルゾーンの「居住可能性条件」の維持、拡大、修繕を図ることだと本書は結論づける。(かわむら・くみこ 環境社会学・科学社会学)
【著者紹介】
ブルーノ(ブリュノ)・ラトゥール : 1947‐2022、フランスの科学人類学者・哲学者。2013年にホルベア賞、2021年に京都賞を受賞。サイエンススタディーズの研究者、アクターネットワーク理論(ANT。人間と非‐人間を同位の「行為するもの」として扱う新たな社会理論)の創始者の一人、ユニークな近代論者(主体と客体、自然と文化という二元論を土台にとして成り立つ近代文明を批判的に検討)として著名。彼が近年手がけた、「気候危機に対する近代人特有の理解は人類の危機対応をいかに誤らせるか」についての研究は世界的な反響を呼んでいる
ニコライ・シュルツ : 1990‐、デンマークの社会学者。気候変動が社会理論に与える影響について研究中
川村久美子 : コーネル大学にて社会学修士号、東京都立大学にて心理学博士号取得。東京都市大学メディア情報学部教授を経て、現在同大学名誉教授。専門は環境社会学、科学社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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