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スヴャトスラフ・リヒテル/EMIレコーディングス(14CD)
リヒテルがEMIで制作したアルバムを集大成した14枚組ボックス。1961年のベートーヴェンの『テンペスト』から1980年のシューベルト『ます』まで、すべてステレオ録音という条件で、バロックから近代に至る、独奏曲・室内楽・歌曲伴奏・協奏曲という幅広い分野でのリヒテルのピアニズムを満喫することができます。
【収録情報】
Disc1
● ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調Op.2-1
● ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第7番ニ長調Op.10-3
録音:1976年
● ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調Op.31-2『テンペスト』
録音:1961年
● ベートーヴェン:アンダンテ・ファヴォリ ヘ長調WoO.57
録音:1977年
リヒテルは生涯を通してベートーヴェンのソナタを好んでとりあげており、数多くの録音を遺していますが、活気のあるテンションの高い演奏になっているものが多いようです。ここでも、西側デビュー直後のダイナミックな第17番『テンペスト』のほか、1976年録音の第1番でも実に精力的な演奏を聴かせています。
Disc2
● シューベルト:ピアノ・ソナタ イ長調D.664
● シューベルト:幻想曲ハ長調D.760『さすらい人』(バドゥラ-スコダ編)
録音:1963年
● シューマン:幻想曲ハ長調Op.17
録音:1961年
西側デビューから間もない時期のシューベルトとシューマン。フランスACCディスク大賞受賞の『さすらい人』はじめこの時期のリヒテルならではの緊迫した雰囲気が魅力的な演奏が楽しめます。
Disc3
● シューマン:蝶々Op.2
● シューマン:ピアノ・ソナタ第2番ト短調Op.22
● シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化Op.26
録音:1962年
西側デビューから間もない時期のシューマン。ライヴということもあって迫力ある演奏が聴けます。
Disc4
● ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番ヘ長調Op.24『春』
オレグ・カガン(ヴァイオリン)
録音:1976年
● シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調D.667『ます』
ボロディン四重奏団、ゲオルク・ヘルトナーゲル(コントラバス)
録音:1980年
リヒテルの大のお気に入りだったオレグ・カガン[1946-1990]は43歳の若さで亡くなってしまったソ連のヴァイオリニスト。1969年からたびたび共演していただけに、ここでの『春』でも息の合った演奏を展開しています。
リヒテルとは旧知の間柄であるボロディン四重奏団と組んだ『ます』では、表情豊かな演奏を聴くことができます。
Disc5
● モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調K.306
● モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調K.378
● モーツァルト:アンダンテとアレグレット ハ長調K.404/385d
● モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調K.372
オレグ・カガン(ヴァイオリン)
録音:1974年
若きオレグ・カガンの演奏を、リラックスした雰囲気でリヒテルがサポートしています。
Disc6
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第2番ヘ長調
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第3番ニ短調
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第5番ホ長調
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第8番ヘ短調
録音:1979年
声楽大作で知られるヘンデルは、鍵盤楽器作品も数多く書いています。劇場を沸きに沸かせた作曲家だけに旋律創造の実力にはすごいものがあるようで、そうした作品の魅力を、リヒテルが現代のピアノで深々と引き出しています。
Disc7
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第9番ト短調
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第12番ホ短調
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第14番ト長調
● ヘンデル:クラヴィーア組曲第16番ト短調
録音:1979年
ヘンデル若き日の作品を中心に収録。劇場で成功を収める前からヘンデルは実力者だったことを知らしめる演奏です。
Disc8
● ブラームス:マゲローネのロマンスOp.33(全15曲)
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
録音:1970年
その幅広い音楽性から歌曲伴奏でも注目されていたリヒテルは、バリトン歌手のフィッシャー=ディースカウとも数多く共演していました。10歳年下のフィッシャー=ディースカウの細かな要求に苦労しながらも完成させた歌曲の世界には特別なものがあるようで、ミュンヘンでセッションを組んで録音されたこのブラームスの『マゲローネのロマンス』でも、ブラームスの歌曲の中で最も表情豊かといわれる作品の味わいを巧みに表現しています。
Disc9
● モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482
リッカルド・ムーティ(指揮)フィルハーモニア管弦楽団
録音:1979年
● ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37
リッカルド・ムーティ(指揮)フィルハーモニア管弦楽団
録音:1977年
リヒテル自身がその出来に満足していたというムーティとのモーツァルト第22番に加え、やはり良い演奏に仕上がっているベートーヴェンの第3番を収録。どちらも聴きごたえのある内容です。
Disc10
● ベートーヴェン:三重協奏曲ハ長調Op.56
ダヴィド・オイストラフ(ヴァイオリン)、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1969年
● ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第4番イ短調Op.23
オレグ・カガン(ヴァイオリン)
録音:1976年
カラヤン指揮ベルリン・フィルと共演した三重協奏曲は、ソ連の名手3人を起用した豪華な録音として知られるものです。
組みあわせはカガンとのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第4番。三重協奏曲の4年前に書かれた作品で、短調の情熱的な音楽が聴きものとなっています。
Disc11
● ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op.83
ロリン・マゼール(指揮)パリ管弦楽団
録音:1969年
● モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ト長調K.379
オレグ・カガン(ヴァイオリン)
録音:1974年
ブラームスは冒頭ホルンからパリ管の明るい響きがユニーク。マゼールの指揮、リヒテルのピアノともにメリハリが効いてドラマティックな個性的ブラームスです。
組みあわせは若きカガンとのモーツァルト。思索的な雰囲気が素晴らしい演奏です。
Disc12
● ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲ト短調Op.33
カルロス・クライバー(指揮)バイエルン国立管弦楽団
録音:1976年
● バルトーク:ピアノ協奏曲第2番Sz.83
ロリン・マゼール(指揮)パリ管弦楽団
録音:1969年
ドヴォルザークならではの親しみやすい旋律と構成を持つピアノ協奏曲ト短調 op.33は、派手な要素が少ないこともあってか、あまり人気がありませんが、リヒテルはこの曲をコンドラシン、スメターチェク、クライバーと3度も録音しており、それらの演奏からは、リヒテルが作品に少なからぬ愛着を持っていたことが伝わってくるようでもあります。
中でも唯一のセッション録音であるクライバーとの演奏では、細部情報まで非常に大切にした目の詰んだ演奏を聴くことができ、改めてこの作品の魅力が、ヴィルトゥオジティとは離れたところにあることを教えてくれるのですが、そのクライバーにとってはこのドヴォルザークのピアノ協奏曲が唯一のコンチェルト・レコーディングであるというのも興味深いところです。
組みあわせのバルトーク第2番は、ソロ、オケ共に名技的な作品だけに、パリ管の個性的な管楽器セクションのサウンドも面白く聴けます。
Disc13
● グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調Op.16
● シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op.54
ロヴロ・フォン・マタチッチ(指揮)モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団
録音:1974年録音
リヒテルは実演ではグリーグを何度もとりあげており、ライヴ盤もいくつかリリースされていましたが、セッション録音はこのEMI盤しか遺されませんでした。演奏は過度な甘さに傾斜することなく、北の抒情ともいうべき旋律美を表出したもので、懐の深い音楽づくりはさすがリヒテル。マタチッチのサポートもソロと傾向の一致した立派なものです。
リヒテルのシューマンはロヴィツキとのDG盤も有名ですが、マタチッチ盤はよりスケールの大きな仕上がりとなっています。
Disc14
● プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番ト長調Op.55
ロリン・マゼール(指揮)ロンドン交響楽団
録音:1970年
● ベルク:室内協奏曲
オレグ・カガン(ヴァイオリン)
ユーリ・ニコライエフスキー(指揮)モスクワ音楽院器楽アンサンブル
録音:1977年
プロコフィエフの第5番は、作曲者がソ連に帰還する前の最後の時期にあたる1932年に書かれた5楽章形式のユニークなピアノ協奏曲。リヒテルの濃いタッチ、マゼール指揮ロンドン交響楽団の切れ味の良い演奏により、リヒテル自身が大のお気に入りとする名演に仕上がっています。
組みあわせのベルクの室内協奏曲は、プロコフィエフ第5番の7年前に完成した無調の作品。リヒテル自身が気に入っていた録音です。
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)