ロザリオ・ソナタ　ジーデル＆ベラルテ・ザルツブルク（２ＣＤ）

ビーバー：ロザリオ・ソナタ
アンネグレット・ジーデル（バロック・ヴァイオリン）
ベラルテ・ザルツブルク（通奏低音）
９本のヴァイオリンを弾き分け、
通奏低音にはテオルボ、ガンバ、ヴィオローネ、オルガン、バロック・ハープ、チェンバロを使用！

ドイツの古楽ヴァイオリン奏者、アンネグレット・ジーデルがビーバーの傑作を入念な準備の末、レコーディングしました。各曲を調弦を変えて演奏するというこの作品に向き合うにあたり、ジーデルは銘器ヤーコプ・シュタイナーなど９本のヴァイオリンを用意し、さらに通奏低音にも６種類の楽器を使うなど工夫を凝らしています。


1994年、生誕350周年を機に注目を集め始め、没後300周年の2004年に人気に火がついたハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー[1644-1704]は、ヴァイオリンの名手として名を成し、やがて、ザルツブルク大司教のもとで、宮廷楽長の地位にまで登りつめたオーストリア・バロックを代表する作曲家。
　宮廷作曲家として教会音楽を書くときのビーバーは、荘厳な美に彩られた作風が特徴的でしたが、器楽作曲家としてのビーバーの作風は、ときに大胆で過激なまでの手法を駆使することもあったという革新的な存在でもありました。


後者の代表作としては、当時のヴァイオリン演奏技法を集大成したと言われる『ロザリオ・ソナタ』がなんといっても有名。
　『ロザリオ・ソナタ』は『ミステリー・ソナタ』とも呼ばれ、聖母マリアとイエス・キリストの生涯を、受胎告知からキリストの受難・復活、聖母マリアの戴冠までのストーリーに沿った標題を持つ15の場面に分け、15のソナタと「守護天使」を表す無伴奏のパッサカリアから構成された作品です。
　このソナタは、実際、神秘と謎に満ちています。もっとも特徴的なのがその調弦で、通常の調弦がおこなわれるのは第1曲「受胎告知」と「パッサカリア」のみで、ほかのすべての曲は、異なる調弦のヴァイオリンを用いて演奏されるという「スコルダトゥーラ（変則調弦）」の技法が採用されており、第11番『復活』に至っては、２弦と３弦をクロスさせて張り替えるという独特の手法でユニークな響きを獲得しています。


演奏にあたって、ジーデルが使用した楽器は、作曲当時、ストラディヴァリウスよりもはるかに高い価格で売買されていたというドイツ・チロルの生んだ名工ヤーコプ・シュタイナーの製作になる装飾的なボディを持つ楽器など９種類に及びます。シュタイナーの弦ごとに異なるとされる個性豊かな音色は、作品を選ぶとも思われますが、調弦まで異なるビーバーにはふさわしいと判断しての選択と思われます。


シンプルな編成で演奏されることも多いロザリオ・ソナタですが、ここではテオルボ、ガンバ、ヴィオローネ、オルガン、バロック・ハープ、チェンバロを用いており、気心知れたアンサンブルの面々と息の合った演奏を聴かせています。


ジーデルは地元ベルリンでヴァイオリンを学び、最初モダン楽器のヴァイオリニストとしてザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団などで活躍しますが、後に古楽に転向、バロック・ヴァイオリンをヒロ・クロサキに師事して習得したほか、アーノンクールに歴史的奏法について教えを受け、1995年から古楽奏者としての活動を本格化させています。（ＨＭＶ）


ビーバー：ロザリオのソナタ
CD1 (68:13)
・第1番ニ短調『受胎告知』
・第2番イ長調『訪問』
・第3番ロ短調『降誕』
・第4番ニ短調『拝謁』
・第5番イ長調『神殿のイエス』
・第6番ハ短調『オリーヴの山で苦しみ』
・第7番ヘ長調『鞭打ち』
・第8番変ロ長調『いばらの冠をのせられ』
・第9番イ短調『十字架を背負う』
・第10番ト短調『磔刑』

CD2 (50:59)
・第11番ト長調『復活』
・第12番ハ長調『昇天』
・第13番ニ短調『聖霊降臨』
・第14番ニ長調『聖母被昇天』
・第15番ハ長調『聖母の戴冠』
・パッサカリア ト短調

　アンネグレット・ジーデル（ヴァイオリン）
　ヘルマン・ヒッケティーア（ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴィオローネ）
　ミヒャエル・フライムート（テオルボ）
　マルギット・シュルトハイス（チェンバロ、オルガン、バロック・ハープ）

　録音時期：2012年
　録音方式：ステレオ（デジタル／セッション）