カンタータ『アプラウスス』　Ａ．シュペリング＆カペラ・アウグスティーナ

ハイドンの祝祭カンタータ
『アプラウスス（賛美）』

この祝祭カンタータは、1768年、36歳のハイドンがツヴェットル修道院長の修道誓願50周年祝賀式のために書いたもので、「調和」「知恵」「正義」「不屈」という４つの基本徳目と「神学」との間の論争を抽象的に描いたラテン語のテキストが使用されています。
　音楽はテキストの伝達を重視しながらも華やかに歌い上げられる数々のアリアと、旋律の美しさに十分に意を払ったオーケストラのアンサンブルが聴きものとなっており、教会関係者や神学者が列席したと思われる特別な聴衆を意識したハイドンの心配りの結実した作品となっています。
　そうした背景もあってか、この作品は、初演に立ち会うことのできなかったハイドンが演奏者に向けて、非常に細やかな演奏上の注意・留意点、釈明などを書いた手紙を書いたというエピソードでも知られています。聴衆の中の学者のことを意識してか、ラテン語の発音方法にまで言及し、さらに言葉をきちんと聴き取れるような演奏方法についての指示や、正確で流麗な演奏を心がけるようにお願いするなど、ハイドンの緊張はかなりのものだったと思われます。
　アンドレアス・シュペリング指揮による演奏は、そうした作品演奏の雰囲気を再現すべく修道院でおこなわれており、祝祭的な華やかさを十分に感じさせてくれる見事なものとなっています。ドイツの古楽器アンサンブル「カペラ・アウグスティーナ」もいつもながら切れ味の良い演奏を聴かせ快適です。

【収録情報】
・ハイドン：カンタータ『アプラウスス』Hob.XXIVa:6
　調和：アンナ・パリミーナ（ソプラノ）
　知恵：マリーナ・デ・リーゾ（メゾ・ソプラノ）
　正義：ドナート・ハヴァール（テノール）
　不屈：ヨハネス・ヴァイサー（バリトン）
　神学：アンドレアス・ヴォルフ（バス・バリトン）
　カペラ・アウグスティーナ
　アンドレアス・シュペリング（指揮）

　録音時期：2008年8月23-25日
　録音場所：ブリュール、アウグストゥスブルク修道院
　録音方式：デジタル（ライヴ）