ディーリアス(1862-1934)

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CD 輸入盤

ピアノ・デュオによるディーリアス名作集 小川典子&キャスリン・ストット

ディーリアス(1862-1934)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
BIS1347
組み枚数
:
1
レーベル
:
Bis
:
Sweden
フォーマット
:
CD

商品説明

ピアノ・デュオによるディーリアス名作集
原曲より爽やかで可憐!
ワーロック編のディーリアス、世界初録音


今から四半世紀ほど前のこと、ディーリアスの音楽が日本で静かなブームになったことがあります。たしかにディーリアスの作品は、花鳥風月的なタイトルといい、弱音主体の茫漠とした感覚といい、日本の伝統芸術に通ずるものがあり、日本人の好みに合った音楽と言えるかもしれません。

 さほど数の多くない彼の作品は、大半が録音済みです。世界初録音については、今後注目すべきものはないと誰もが諦めていたはずですが、意表をついたアルバムが小川典子とキャスリン・ストットによるピアノ・デュオのデビュー盤として登場しました。すべてディーリアスの代表作でまとめながらも世界初、というのは、彼の曲を、その精神的息子で「カプリオル組曲」で知られるピーター・ワーロック(本名フィリップ・ヘゼルタイン)がピアノ・デュオ用に編曲した世にも貴いヴァージョンによるため。誰よりもディーリアスの音楽を熟知し、彼から可愛がられたワーロック、ちょうどバッハの曲をレーガーが、チャイコフスキーをラフマニノフが編曲するように効果的かつ自然です。

 ピーター・ワーロックことフィリップ・ヘゼルタインは1894年にロンドンで生まれ、16歳の時にディーリアスと知り合い、その親交は1930年に自殺するまで変わることなく続きました。ちょうど父親が息子を可愛がるように、ディーリアスは才気煥発なワーロックへ愛情を注いだと言われます。ちなみに、このアルバムに収められている「夜明け前の歌」(1918)はワーロックに献呈されました。ワーロックもディーリアスから全面的な影響を受け、結果として彼の音楽への異常なまでの傾倒へと発展しました。後年梅毒の末期症状のため失明し、全身マヒに陥ったディーリアスを献身的にサポートしたフェンビーやグレインジャーのように目立ちはしませんが、ワーロックはディーリアスを擁護する文章を発表したり、ここに収められたような編曲を行うことで、自身の愛情の証を示しました。

 ディーリアスには協奏曲をはじめ数篇のピアノ曲が(チェンバロ曲さえ)あります。いずれも独特の美しさはありますが、本質的にディーリアスはピアノ音楽作曲家でありません。技巧誇示は彼の音楽と無縁なうえ、長い音価の不協和音の連結がピアノのように音の減衰する楽器には向いていないためです。ディーリアスは自身の管弦楽曲のうち、「ブリッグの定期市」だけはピアノ・デュオ用に編曲していますが、他の作品はピアノも巧く、誰よりも自分の音楽の理解者であるワーロックにその任を託しました。ワーロックもその期待に沿うべく見事なピアノ曲に仕立て、作曲者の満足を得たと伝えられます。

 ディーリアスの音楽は印象主義に分類されることもあり、ドビュッシーの音楽との類似を指摘されもします。ワーロックによるピアノ・デュオ編曲はその感を強めさせます。むしろ、拍子感が曖昧で、複雑な和声が漠として続く音響は武満徹のピアノ曲さえ連想させます。管弦楽の色彩が単色のピアノに置き換えられると、日本の水墨画を思わせる世界となり、何らかの日本の風物を描いているかのような「わび、さび」を感じさせもします。

 何故これほど魅力的な編曲がこれまで顧みられなかったのか、と不思議に思われますが、それは楽譜の入手が極めて困難であったため、存在自体がほとんど知られずにきたためです。ワーロックの生前に「春初めてカッコーを聞いて」「川辺の夏の夜」「夜明け前の歌」「北国のスケッチ」「ダンス・ラプソディ第2番」はイギリスで出版されましたが、この企画が持ちあがった時、すべてを入手することは不可能でした。そのため演奏者たちがロンドンの「ディーリアス・トラスト」に協力を求めたところ、楽譜コピーの提供とともに、草稿のまま日の目を見ていない「夏の庭で」と「ダンス・ラプソディ第1番」の編曲の存在を知らされました。スタッフ全員が収録を希望したのは言うまでもありません。そして、それがキッカケとなり、この2作は2002年にUniversal Editionから出版の運びとなりました。ワーロックが一心に仕事を行った時から80年以上が経ていました。

 演奏は見事の一言につきます。長い音価をだれさせないためにテンポを速めにとり、それがディーリアスの音楽に付きまとう曖昧さを払拭しています。加えて和音が水晶のように透明なため、限りなく純粋無垢な叙情を生み出しています。小川典子は武満徹、ドビュッシー、ジャポニズムで培った表現を存分に生かし、ロンドン在住の経験と、ストットと組むことでディーリアスの音楽の持つイギリス的色彩を絶妙に描き出しています。淡々としながらも強い緊張感と感情の抑制がきき、さらにディーリアスの音楽の背後にある毒と不良性も忘れていません。ことに「北国のスケッチ」(全4曲)は氷のようなピアノの響きと冬の幻想のような、これまで聴いたことのない種類のピアノ曲となっています。

 この7曲がワーロック編曲によるディーリアスすべてながら、期せずして有名曲オンパレードとなりました。ディーリアス・ファンならずとも持っていたいアルバムです。



ディーリアス(ワーロック編曲):作品集
@春初めてカッコーを聞いて
A川辺の夏の夜
B夏の庭で
C夜明け前の歌
D北国のスケッチ(全曲)
Eダンス・ラプソディ第1番
Fダンス・ラプソディ第2番

小川典子&キャスリン・ストット (ピアノ・デュオ)
録音:2002年10月、スウェーデン

収録曲   

  • 01. Delius: On hearing the first Cuckoo in spring (1911/12, arr.1913/14) 5'42
  • 02. Summer Night on the River (1911/12, arr.1913/14) 5'29
  • 03. In Summer Garden (1908/11, arr.1912/13) 11'02
  • 04. A Song before Sunrise (1918, arr.1921) 4'33
  • 05. North Country Sketches (1913/14, arr.1921): I. Autumn (the wind soughs in the trees) 7'39
  • 06. II. Winter Landscape 4'05
  • 07. III. Dance (Mazurka tempo) 5'46
  • 08. IV. The March of Spring (Woodlands, meadows and silent moors) 8'03
  • 09. Dance Rhapsody No.1 (1908, arr.1913) 11'13
  • 10. Dance Rhapsody No.2 (1916, arr.1921) 7'27

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