『眠りの森の美女』全曲　ロジェストヴェンスキー＆ＢＢＣ響（ステレオ）

指揮者としての資質を開花させた原点！恍惚とするほどに見事！ロジェヴェンのチャイコフスキー

１９７９年１０月１０日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールにおける演奏会のライヴで、非常に鮮明なステレオ録音。両者はこの５日前に同バレエをスタジオ録音しており、短かったロジェヴェンのＢＢＣ響主席指揮者時代に残された唯一の録音として知られますが（全曲は目下廃盤）、こちらは実況ならではの熱気が加わってよりスリリングな聴き応えです。実際、ここで聴かれるロジェヴェンの豪快かつ華麗な豪腕は圧巻で、チャイコフスキーの３大バレエの中では知名度において一歩劣る（？）この作品を波乱万丈の演奏設計で一気に聴かせてくれます。

ドラマティックな予兆を孕んだ冒頭の「イントロダクション」から、有名な第１幕の「ワルツ」や「パ・ダクシオン」を経て、豪華絢爛たる「アポテオシス」に至る２時間余が、本当にあれよあれよといううちに過ぎ去ってゆきます。ロジェヴェンを首席に頂いて一年目にあたるＢＢＣ響の充実ぶりも特筆もの。パワフルな金管、ソロ楽器の巧さなど、元々の高性能が有能な指導者を得てフル回転している有様が実に壮快です。両者は２年後には日本公演を大成功させて活躍を大いに期待されたのですが、この影響多大な人材流出を恐れたソヴィエト当局が文化省交響楽団をロジェヴェンのために新設し、必死で母国へ呼び戻したというのは有名な話です。

・チャイコフスキー：バレエ音楽「眠りの森の美女」全曲
　ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー（指揮）
　BBC交響楽団
　録音：1979年10月10日、ロイヤル・フェスティヴァルホール（ステレオ）