ジグムント・バウマン

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近代とホロコースト 完全版 ちくま学芸文庫

ジグムント・バウマン

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784480510211
ISBN 10 : 4480510214
フォーマット
出版社
発行年月
2021年04月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
512p;15

内容詳細

近代文明こそ、ホロコーストの必要条件であった―。官僚制、合理主義、進歩主義、分類といった近代的諸要素が、暴力を独占し、社会的制約を受けない権力のもとで結びついたときはじめて、ホロコーストは可能となる。アーレント、レヴィナス、ヒルバーグ、ミルグラムなど諸分野の先行研究を傍に、社会学の視点から近代の「裏面」を抉り、ホロコーストが近代論、文明論、ひいては社会理論に突きつけた批判は、今なお十分に検証されていないことを明るみにして思想界に衝撃を与えたバウマンの主著。文庫化に際して訳文を大幅に改訂し、著者による「二〇〇〇年版へのあとがき」を加えた。

目次 : 1 序章 ホロコースト以降の社会学/ 2 近代、人種主義、殲滅1/ 3 近代、人種主義、殲滅2/ 4 ホロコーストのユニークさと通常性/ 5 犠牲者の協力を請うて/ 6 服従の倫理―ミルグラムを読む/ 7 道徳の社会学的理論に向けて/ 8 再考―理性と羞恥/ 補遺 道徳の社会的操作―道徳的行為者、無関心行動/ 記憶する義務しかし何を?―二〇〇〇年版へのあとがき

【著者紹介】
ジグムント・バウマン : 1925‐2017年。社会学者。ポーランド生まれ。ワルシャワ大学教授、テルアヴィヴ大学教授などを経て、71年英国リーズ大学教授。アマルフィ賞、アドルノ賞、アストゥリアス皇太子賞受賞

森田典正 : 1956年生まれ。早稲田大学国際教養学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • まると さん

    目から鱗の論考集でした。論旨は明快。道徳的責任をうやむやにする近代の合理主義、官僚制がなければ、ホロコーストは生まれなかったと書かれています。確かに、ヒトラーがいくら殺せと命じても、道徳感情を排した官僚制が稼働していなければ、短期間にあれほどのユダヤ人を殺戮できなかったに違いない。最終章ではパレスチナ問題にも言及し、ユダヤ人の子孫たちが「殉教者に与えられた特権」を自任して犠牲者を生み出し、道徳的非難を免れているとも指摘。逆説を生む歴史の恐ろしさを感じ、身震いしました。多くの人に読み継がれてほしい一冊です。

  • 富士さん さん

    自分の思っていたことを、自分以上の詳しさで論じてくれた感があって、感動しました。ホロコーストは特別な事ではなく、近代的な「ふつう」の延長線上にあることが示されています。合理的に与えられた唯一の正しさが存在し、それをより効率的に発展させることがよいことであるとする近代の一神教こそ、有史以来の人の醜さを究極の形で発現させたのです。クメールルージュを経て、科学技術はホロコーストの必要条件ですらないことが示された今では、近代的な社会技術こそが本丸であり、社会科学の持つ実際の破壊力がより明確になったように思います。

  • sk さん

    ホロコーストを可能にしたのは近代官僚制。ホロコーストと近代の抜き差しならない関係を論述。

  • 読書一郎 さん

    ホロコーストは、近代文明にとって例外的な現象で、ドイツの反ユダヤ主義が爆発したものだ…「そうではない」と主張する本です。逆に、近代文明こそがホロコーストを生んだ。野蛮なだけでユダヤ人600万人を殺害することはできない。それを実現するには、発達した官僚制度、あくなき効率性の追求、PDCAが不可欠であった。彼らの行動を支えていたのは、倫理や道徳を行動から切り離す「科学的」な精神態度であった…衝撃的な内容で、いろいろなことを考えながらじっくりと読みました。今年のベスト1になりそうです。

  • ぷほは さん

    1990年、本書でアマルフィ賞を受けた著者は「この考えには東も西もありません」(373頁)と明言した。長く西欧中心だった社会学ディシプリンの冷戦崩壊期におけるゆらぎの中で、東欧から訪れた越境者が取り上げたのは、ホロコーストと近代的官僚機構が生み出す「責任の自由浮動」の間にある親和力(ゲーテ)だった。他者の顔から行為者を引きはがし、対象をむき出しの殺害可能/犠牲化不可能の存在に仕立て上げる残酷再生産のメカニズムが追及され、societalの外在的拘束性・操作可能性に隠されてきた道徳の二重性が炙り出される。

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