シェーンベルク(1874-1951)
新商品あり

シェーンベルク(1874-1951) レビュー一覧

シェーンベルク(1874-1951) | レビュー一覧 | CD、DVD、ブルーレイ(BD)、ゲーム、グッズなどを取り扱う【HMV&BOOKS online】では、コンビニ受け取り送料無料!国内最大級のECサイトです!いずれも、Pontaポイント利用可能!お得なキャンペーンや限定特典アイテムも多数!支払い方法、配送方法もいろいろ選べ、非常に便利です!

商品ユーザーレビュー

253件
並べ替え: 新着順| 共感数の多い順| 評価の高い順
  • ジョン・バルビローリ指揮、ニュー・フィルハーモニア...

    投稿日:2023/09/04

    ジョン・バルビローリ指揮、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団による、シェーンベルクの交響詩『ペレアスとメリザンド』です。 シェーンベルクの作品では初期に位置し、後期ロマン派の色が濃い作品だが、このバルビローリの演奏は歌うところはよく歌い、管楽器はよく鳴り、盛り上がるところはもりあがり熱意の感じる、バルビローリ特有の演奏でなかなか良いと思う。 評判が高いが、それに相応しい演奏内容と言えるだろう。 元々EMIが原盤だが、ワーナーに移籍したおかげか、音も聴きやすい。

    レインボー さん

    0
  • グールドの残した録音の中では人気のあるものではなさ...

    投稿日:2023/06/04

    グールドの残した録音の中では人気のあるものではなさそうだが、このシェーンベルクはバッハに劣らない秀逸な演奏だ。作品11からこれだけどす黒い表情を引き出したものは私の知る限りない。12音作品はさらに冴えて一つ一つの音が生きゾクゾクさせる。12音はパズル的なところがあるのでグールドは面白くてしかたないという感じなんだろう。ポリーニのテクニックは最高だが表情は単一な演奏の対極だと思う。

    フォアグラ さん

    0
  • この曲は意外にも名盤がひしめいている。ブーレーズ、...

    投稿日:2023/02/25

    この曲は意外にも名盤がひしめいている。ブーレーズ、シノーポリ、ラトルの他、ロバート・クラフトやデイヴィッド・アサートンといった現代音楽のスペシャリストが録音している。最近はヴァイオリニストのカパチンスカヤがカパチンスカヤがこの曲で歌って(演じて)いる録音が注目を集めた。しかし私には、この曲の歌はどうしてもドイツ語のネイティブに歌ってほしい。ネイティブでないとドイツ語の発音の「パンチ」が十分に効かないのである。ところが、ドイツ語ネイティブの録音はそれほど多くなく、ブーレーズ版のシェーファーとこのシュミットフーゼンくらいではないか。シェーファーはベルクの『ルル』のタイトルロールが素晴らしかったので期待して聴いたのだが、期待外れだった。「ソプラノ」の型から抜けきらず、語りも不自然だった。その点、このシュミットフーゼンの録音は素晴らしい。きちんと「ソプラノ」としてん声は駆使しながら、見事に「シュプレヒシュンメ」を演じている。この歌手の名前を、私はこの版で初めて知ったが、調べてみると、鈴木雅明のバッハの宗教曲に参加するなど、バロックの宗教曲でソプラノを歌った録音が多いようだ(決して数は多くないが)。そのような歌手が、この曲のソリストとして録音するというのも面白い。私にとっては、この曲のベストの録音で、安心して音楽に身を委ねることができる。ドイツ語の発音・発声も理想的。マイナーなレーベルのせいか、あまり知られていないが、この曲が好きな人には是非おすすめしたい。

    soziologe さん

    0
  • 日本人指揮者による、感動的なシェーンベルク作品集だ...

    投稿日:2022/03/19

    日本人指揮者による、感動的なシェーンベルク作品集だ。 指揮は湯浅卓雄氏。活動が海外中心のため国内で聴く機会は少ないが、Naxosに邦人作曲家の作品や海外の現代作品を多く録音している。このCDの演奏の素晴らしさからすると、知る人ぞ知る実力派と思われる。演奏のアルスター管弦楽団も国内ではマイナー感が強いが、トルトゥリエの指揮でCHANDOSから優れた演奏のCDが多く出ている表現力の高いオケだ。 このCDに収録されているのは、室内交響曲第2番op.38、映画の一場面のための伴奏音楽op.34、浄められた夜op.4の弦楽合奏版の3曲だ。いずれも大変優れた演奏で、名演と思う。 その演奏は、余分な強調がなく自然体で、しかも曲の深さを存分に伝えてくるものだ。旋律は呼吸をするようによく歌い、管弦楽は隅々まで実に繊細に、効果的に鳴り響いている。良い状態で再生すると、演奏会でシェーンベルクの実演を聴くのに極めて近い体験ができる。 室内交響曲第2番も、映画の一場面のための伴奏音楽も、全てが成るべくして成るという必然に従って音のドラマが進行する説得力に呑み込まれ、曲の持つ悲劇性がずっしりと重い感動を残す。 浄められた夜は、湯浅氏の豊かな想像力が反映されて、個性のより強い演奏となっている。 前半は、主人公の女性が孤独感ゆえに過ちを犯してしまうという悲劇がありありと伝わってくる。これだけ主人公の女性の心理に寄り添った演奏も稀だ。湯浅の目にはそれこそ映画の一場面のように各場面の情景が「見えて」いるかのようだ。 後半は、温かく包容力のある男の赦しの場面だが、特徴的なのは男女の気持ちが通い合い、舞曲調の曲想になる部分からかなりテンポが速くなることだ。これは、湯浅が登場人物を2人とも意志の強い性格と捉えていることが反映しているように思われる。女にしても、前半の行動はかなり大胆であり、嘆くときもなよなよとはしていない。結構激しく嘆いている。男も、そんな女を受け止められる程強い性格なので、2人が喜び踊るときも激しく元気に踊るのであろう。そのように理解して初めて腑に落ちる解釈であるようにも思われる。 いずれにせよ、かくも優れた演奏が日本人指揮者によって録音されたことに、シェーンベルクの音楽を愛している私は大いに誇らしさを感じている。この名盤の価値を多くの人に知ってもらいたいものだ。

    伊奈八 さん

    0
  • 息の合ったピアノ・デュオによる演奏で、ピアノの音を...

    投稿日:2022/02/26

    息の合ったピアノ・デュオによる演奏で、ピアノの音を浴びるように楽しめるCDだ。 プラハ・ピアノ・デュオは、ズデニカ&マーティン・ヒルシュエル夫婦によるピアノ・デュオ。多くのコンクールで入賞した実力派で、HMVで7種のCDを購入できる。 このCDには、シェーンベルクの作品が3曲、すなわちウェーベルン編曲による5つの小品op.16と、オリジナル編曲による室内交響曲第1番と、シェーンベルク自身の編曲による室内交響曲第2番op.38が収められている。 まず、5つの小品op.16だが、CDに「World premiere recording」と書いてあるので、最初私も信じていたが、それは間違いである。Wyttenbach夫妻による録音が世界最初で、そのLP(EL 16 982)は私も持っていた。(生憎現在LPが聞けなくて比較できなかった。)2番目はJames WinnとCameron Grantによる演奏で、そのCD(3-7315-2 H1)も持っている。だから、プラハ・ピアノ・デュオによる録音は史上3番目である。(プラハ・レーベル!) 5つの小品op.16の、2つの演奏を聞き比べてみた。 1曲目は、プラハ・ピアノ・デュオの演奏では、原曲を超えるかと思う音数の多さと喧しさにびっくりする。だが、慣れるとその喧しさが心地よい。Winn&Grantによる演奏では、そこまで音数が多く聞こえず、原曲のイメージに近い響きとなっている。 第2曲も音数は多いが、どちらの演奏もしみじみと聴かせている。クライマックス近くで音が交錯してくると、プラハ・ピアノ・デュオの演奏の方がカオスになってくる。 第3曲は、もともと管弦楽による微妙な音色旋律を用いた曲なので、ピアノのための編曲など可能なのかと思うが、ピアノのための6つの小品op.19の第6曲目を拡大した曲のように響く。どちらの演奏もしみじみ聴けた。 第4曲は、プラハ・ピアノ・デュオの演奏では、一番原曲からかけ離れている印象で、まるでウェーベルンのオリジナル曲のようだ。Winn&Grantによる演奏の方が原曲に近い鳴りだ。 第5曲は、プラハ・ピアノ・デュオの演奏は、どの旋律も割と淡々と弾いているが、音質の良さと相まって美しい演奏となっている。対して、Winn&Grantによる演奏はもっとドラマチックであり、原曲の演奏でもこれほど緩急をつけた演奏は珍しい。 室内交響曲2作品ついては、幸い、メンデルスゾーン・デュオ(石川典子 & マンフレッド・クラッツァー夫婦によるデュオ)によるCD(RCD 30106)を持っていたので聞き比べてみた。 メンデルスゾーン・デュオが弾く室内交響曲第1番は、シェーンベルク自身による4手のための編曲だ。原曲のイメージを損なわない編曲であり、演奏も勢いのあるもので、原曲の優れた演奏と同じ位クォリティが高い。 対して、プラハ・ピアノ・デュオが弾く室内交響曲第1番は、オリジナルとおぼしき編曲で、「そのメロディー、絶対原曲にないよね?!」という改変が多々ある。演奏は、出だしこそメンデルスゾーン・デュオよりゆったりしているが、スケルツォ部分あたりは音数が多過ぎてカオスに聞こえる部分もある。やりすぎじゃないか、と思う部分も少しある。 室内交響曲第2番は、両団体ともシェーンベルク自身による2台ピアノのための編曲だ。 これも、メンデルスゾーン・デュオの方が、勢いがありつつ、オーソドックスな解釈となっている。対して、プラハ・ピアノ・デュオの演奏は、よく言えば独自性に富んでいるが、原曲のイメージに沿った旋律の階層化をしないので、延々とピアノの音の洪水にさらされる印象になる面もある。 他の団体との比較から分かったことは、プラハ・ピアノ・デュオは、原曲を演奏した先例を真似しないで、独自の解釈を貫く団体だということだ。そこにこの団体の魅力もあるし、独断的と感じられる部分もある。原曲のイメージを損なわない演奏を聴きたいならば、他の団体の演奏を聴いたほうがよい。だが、録音も良いCDなので、ピアノの音を浴びるように聴きたい方には大いにお薦めできる。

    伊奈八 さん

    0
  • エヴァ・マルトンの、表現力豊かな歌唱を堪能できるCD...

    投稿日:2022/02/20

    エヴァ・マルトンの、表現力豊かな歌唱を堪能できるCDだ。 マルトンはハンガリー出身のドラマティック・ソプラノで、メトやウィーン国立歌劇場でも活躍した。このCDにはおそらく全盛期の歌声が収められている。日本人にこのレベルで歌える歌手はいない。声が力強い美声であるというだけでなく、感情表現が素晴らしい。 このCDでは、ヴェーゼンドンク歌曲集と、《トリスタンとイゾルデ》の前奏曲と愛の死が特に良かった。 私はシェーンベルクのマニアで、ワーグナーのことは殆ど分からないのだが、曲にも演奏にも大変感動した。これらの曲を聴きたくなったら、このCDで楽しみたい。 シェーンベルクのモノドラマ《期待》でも、マルトンは感情豊かな歌唱を聴かせる。全曲歌いっ放しで、最後まで声の力も衰えない。まったく凄い歌手だ。 オケの演奏も良い。後半の動きの速い部分では機動力の不足を感じさせるが、ホールトーンの美しさにも助けられ、終始無調の音楽ながら心地よく聴くことができる。 残念なのは、《期待》でのマルトンの音程の曖昧さだ。ジェシー・ノーマンやアニヤ・シリアと全然違う音程で歌っているので、多分無調の曲では音痴なのだ。 《期待》のファースト・チョイスとしては、ノーマンやシリアの盤を薦めたい。 私の感想では《期待》は☆3つだが、ワーグナーは☆5つなので、総合では☆4つとさせていただいた。

    伊奈八 さん

    0
  • カラヤンの遺産に、改めてじっくり向き合ってみた。 ...

    投稿日:2022/02/13

    カラヤンの遺産に、改めてじっくり向き合ってみた。 「浄夜」(HMVの表記に従った)op.4の演奏は、同曲の究極的な美演の一つだろう。 もう冒頭から、ここまで雰囲気のある演奏はなかなか無いのだ。 全ての旋律にカラヤンの表現したかったニュアンスが溢れており、繊細な表現から圧倒的に力強い全合奏まで、弦楽合奏の表現力の究極に近いものを聴かせる。 細部をいたずらに強調することなく、巧みに響きの海に沈めており、聞き手が心地よく作品世界に酔えるように演出されている。 全体的には、愛の世界を深く描くというのとも少し違う感じもするが、曲の終わりに近付いた部分で、カラヤンは非凡な解釈力を見せる。 初期のシェーンベルク作品の中でも、この「浄夜」や弦楽四重奏曲第1番は、聞き手が「もう終わる頃だろう」と思ってから更に曲想が展開する。「浄夜」の場合、370〜390小節の第2主題の再現部がそれに当たり、ここを「まだ続くのか、冗長だなぁ」と感じさせるか、「2人の愛が更に深まっているなぁ」と感じさせるかで、演奏の成功、不成功が分かれるのだ。 対位法を駆使しつつ転調を重ねるこの部分からラストまでを、カラヤンは、他の部分の倍ほども丁寧な演奏をしている。それが、この演奏を感動的にしているのである。 もう一曲は交響詩「ペレアスとメリザンド」op.5だ。グレン・グールドはこの曲について「リヒャルト・シュトラウスの偉大な交響詩のどれと較べてもひけをとらない、少なくとも同等の価値はあると思う。」(鈴木圭介訳『グールドのシェーンベルク』より)と述べている。 私自身はあらゆる交響詩の中で一番好きな曲である。このカラヤン盤は私が同曲を聴いた最初の演奏であったが、およそドラマチックな解釈力という点で、これを超える演奏は未だに聴いたことがない。 全ての旋律にカラヤンの想像力が生き生きと吹き込まれ、他に類を見ない緩急豊かな展開と、オケの圧倒的な機動力で、聞き手をぐいぐいと作品世界に引き込んでいく。 カラヤン以降の多くの演奏ほど細部を強調していないが、無数の楽器を鳴らしつつ、全体の響きを見事に自分のイメージに整えている。 どの部分も素晴らしいが、一つだけ例を挙げよう。 ペレアスとメリザンドが、遂に互いの思いを打ち明け、2人の愛が燃え上がる場面。それを物陰からゴローが、嫉妬と殺意をたぎらせながら見ている。 ペレアスを刺殺せんとするゴローの刀がキラリ!と光る。それに気付き、命の危機が迫っていることを悟っても、2人の愛は最早止められない! その、刀のキラリ!を、ピッコロに物凄いスピードで吹かせているのは、カラヤンだけだ。 このキラリ!が恐ろしく劇的な効果を発揮している。 ここを他の指揮者のように遅く「ピラリラリラ」と吹かせると間抜けになってしまう。一聴するとカラヤンの独断的な創作のようだが、シェーンベルクはここに「hastig」(急いで)という指示を書き込んでいるのだ。 一人、カラヤンだけがシェーンベルクの指示を的確に音楽のドラマと結びつけているのである。 この一曲の演奏を聴いただけでも、カラヤンという指揮者が他を寄せ付けないほど非凡な想像力の持ち主であったことがよく分かるのである。 音質は、今日の録音ほど鮮度が高くないが、装置の質が良ければ、この遺産の価値を今なお十分に味わうことできよう。

    伊奈八 さん

    0
  • 日本でもお馴染みのプラジャーク四重奏団による熱演が...

    投稿日:2022/02/12

    日本でもお馴染みのプラジャーク四重奏団による熱演が聴けるCDだ。 弦楽四重奏曲第1番と第2番が収められている。 正直、レビューを書くのに難儀した。良いのか悪いのか分からなくなってしまったのだ。 それで、手持ちの弦楽四重奏曲第1番の演奏を全部聴く羽目になってしまった。 ・Kolisch String Quartet(1936)・Juilliard Quartet(1951-1952)・New Vienna String Quartet(1967)・LaSalle Quartet(1968)・Schoenberg Quartet(1985)・Mendelssohn String Quartet(1989)・Quatuor Manfred(1990)・Prazak Quartet(旧録音)(1991)・Neues Leipziger Streichquartett(1992)・Arditti Quartet(1993)・Prazak Quartet(当盤)(1997)・Schoenberg Quartet(1999) どれも個性のある優れた演奏だが、プラジャークQの演奏の立ち位置は微妙だ。表現主義的な激しさという点では、ジュリアードQとシェーンベルクQ(旧盤)とメンデルスゾーンQの方が勝っている。優しさや美しさという点では、新ヴィーンSQやマンフレッドQの方が勝っている。技術的な洗練度ではアルディッティQに劣る。そもそも解釈全体が師匠であるラサールQによる名演奏の劣化した模倣の印象が強く、新ライプツィヒSQの演奏のように新鮮に心に迫ってくるものがない。シェーンベルクQ(新盤)のような円熟味が感じられる訳でもない。ややこしいのは、プラジャークQには1991年録音の旧盤と1997年録音の新盤(このCD)があり、どちらもトラック2のスケルツォ部分に入る直前に1小節程度の音楽の不可解なカットがあるために、私は同じ録音と錯覚していたのだった。このカットは非常に不可解で、違和感がある。旧盤と新盤の演奏解釈に殆ど差はないが、新盤の方が熱演を強調している。新盤の録音の方が鮮明で、音質的には他の多くの録音より良い位だが、再生装置のクォリティが低いと弦楽器の音のノイズ成分のぶつかり合いが鑑賞を妨げるので、再生難易度はむしろ上がっている。総合的には、やや民族楽派寄りで泥臭さのある熱演といったところが的確かと思う。熱演であることは疑いようもなく、特に前半は聴き応えもある。 第2番については、聴き比べをする気力がなくなってしまった。新ライプツィヒSQ及びアルディッティQと比べただけだが、両者に勝る所は殆ど無い。

    伊奈八 さん

    0
  • 極めて希少な「今日から明日へ」の決定盤だ。 この盤...

    投稿日:2022/02/12

    極めて希少な「今日から明日へ」の決定盤だ。 この盤は、ストローブ=ユイレ監督による「今日から明日へ」の映画の音源でもある。 シェーンベルクは歌劇のような作品を4つ書いている。「期待」 op. 17 (1909) 、「幸福な手」op. 18 (1910/13)、「今日から明日へ」op. 32 (1929)、「モーゼとアロン」(作品番号なし)(1930/32)の4つだ。 「今日から明日へ」は、全編12音技法で書かれた史上初のオペラだが、録音が少ない。 物語はコミカルなホーム・ドラマなのだが、12音技法で書かれた音楽の味わいが、普通のオペレッタ的な分かり易さと懸け離れているのが原因だろう。 台本は、シェーンベルクの再婚相手、ゲルトルート夫人が書いている。夫婦の機微がよく描かれており、今日でも色褪せない内容を持っている。 物語は、パーティー帰りの気だるいムードから始まる。夫がパーティーで出会ったオシャレな妻の女友達のことを褒め、地味な妻を馬鹿にするので、次第に夫婦が険悪になる過程がリアルに描かれている。 中盤からは、妻がオシャレに変身して夫を翻弄したり、真夜中にガスの集金が来て夫がオロオロしたりとコミカルになり、音楽も面白くなってくる。 そこへパーティー会場からテノール歌手(妻を誘惑していた)が電話してきて、夫婦でパーティー会場に来るよう誘う。妻が着替えてさらにセクシーに変身したのを見て、夫は敗北を認め、妻に行かないでくれと懇願する。 夫婦が仲直りをしたところへ、パーティー会場で待ちくたびれた女友達(夫が褒めていた女性)とテノール歌手がやってきて、凝った4重唱となる。そこが音楽的にはクライマックス。 招かれざる客達は夫婦をなじるが、夫婦の絆は強くなっていて動じない。客達が帰って平和な朝が訪れハッピーエンドとなる。 シェーンベルクの12音技法の作品にも色々あって、ピアノ協奏曲のように調性的な響きが多い曲もある。「今日から明日へ」は、紋切り型のオペレッタ的音楽になることを極力避けたためか、調性的に響く部分が全然無い。非常に緻密に細やかに書かれている音楽だが、聴いただけで理解するのは大変難しい音楽となっている。 演奏は、ミヒャエル・ギーレンの指揮フランクフルト放送交響楽団が担当しており、全体的に真面目な調子ながら、大変良い演奏となっている。歌手達の健闘も素晴らしい。 「全体的に真面目な調子」と言い得るのは、ギーレン盤以外にCD化されている唯一の音源であるロスバウト盤(Stradivarius STR 10054)が、モーツァルトの歌劇を得意としたロスバウトらしく、難解な曲にも関わらず、それこそモーツァルトの歌劇を思わせる軽やかな演奏となっているからである。 ギーレン盤の演奏が真面目な調子なのは、ストローブ=ユイレ監督の希望でもあったのだろう。 いずれにせよ、現在手に入れ易く、音質も良い唯一のCDなので、作品に興味がある方にはお薦めできる。 ただし、歌詞対訳が無いから、この作品に初めて接する人には、ストローブ=ユイレ監督による映画のDVDを是非ともお薦めしたい。分かり易さが段違いであるし、非常に優れた映画だ。

    伊奈八 さん

    2
  • ドイツの現代音楽のピアニスト、ヘルベルト・ヘンクに...

    投稿日:2022/01/16

    ドイツの現代音楽のピアニスト、ヘルベルト・ヘンクによる、血の通ったシェーンベルク作品集だ。 シェーンベルクの作品番号付きピアノ曲のコンプリートに加えて、ピアノ曲の断片も18曲収録しているアルバムだ。 作品番号付きのピアノ曲は、3つのピアノ曲op.11、6つの小品op.19、5つのピアノ曲op.23、ピアノ組曲op.25、ピアノ曲op.33abである。 ヘンクの演奏は、実に魅力に富んでいる。 3つのピアノ曲op.11は、シェーンベルクの作品の中でも陰気な方だと思うが、ヘンクが作品に向けるまなざしはフラットで温かい。聴く人を激しさで脅かそうとか、技術だけで聞かせようとかいう偏りがない。ストーリーを感じさせる緩急や強弱と、聴き易い適度な軽快さ、ピアノ曲としての響きの美しさを持っている。暗い筈のop.11を聴いていてなんだか楽しい気持ちになってくる。 欝な内容の作品であっても、それをきちんと芸術的に仕上げるのは、明るく健全で強い精神である。ヘンクの演奏は、暗い作品の背後にある、そうした明るい精神を感じさせてくれる。 6つの小品op.19は、短いということもあり、演奏会でもよく取り上げられるが、説得力がある演奏が為されているのだろうか?このヘンクの演奏は、1曲1曲が、曲に込められた物語や、気持ちの変化を豊かに感じさせてくれる。この曲が、管弦楽のための5つの小品op.16の第2曲と同様、シェーンベルクの寂しい一面を表している曲であることがよく分かった。 5つのピアノ曲op.23は、シェーンベルクのピアノ曲の中でも、難解な方だろう。曲想があまりにもどんどん変化していってしまうからだ。ヘンクの演奏は、全体的に軽やかな調子にまとめつつ、変化していく曲想の句読点、ポリフォニックに展開する断片の呼応関係、1曲の中における起承転結などが実によく整理されており、破格に分かりやすい。一旦解体された瓦礫の山から、再び何かを構築しようと立ち上がる、人間の創造的な意志を感じる音楽だ。 ピアノ組曲op.25は、シェーンベルクのピアノ曲の中では親しみ易い方だろうが、技術的には非常に難しい曲だろう。ヘンクは全体的に速いテンポで弾いている。ミュゼットのラストではミスタッチがあるが、ここはどんなピアニストでも難しいところなので、むしろ編集なしで弾いている証拠に残したと考えられる。しかし、このピアノ組曲に関しては、技巧に傾いた演奏となったために、曲の持つ奇妙なユーモアや倒錯の面白さを弾き逃した印象があり、惜しい感じがする。 ピアノ曲op.33aとピアノ曲op.33bは、本来は別々の曲だという捉えなのか、ヘンクはプログラムでわざわざ分けている。 私の感想ではop.33aの方は速いテンポで一気呵成に弾き過ぎている感じがする。中庸のテンポで噛んで含めるように弾いているop.33bの方が面白い。 メカニックな技巧よりも、人間味のある読解力の方にヘンクの魅力が発揮されるように感じる。 トラック22からトラック39は多くのピアノ曲の断片を年代順に弾いたものだ。 ロマンチックな作風からスタートして、次第に現代的になっていくというシェーンベルクの作風の変化を辿ることができる。 ヘンクの録音は1994年だが、2年後の1996年にはピ・シェン・チェンが、断片も番号付きの立派な作品も、すべて年代順に並べて弾くというユニークなアルバムを作っている。 全てのピアノ曲が一つの大きな物語のようになっていて面白い企画だ。それとて、ヘンクの先駆があったからこそできたことであろう。 私的には惜しい演奏もあるが、取っ付きにくいシェーンベルクのピアノ曲と聞き手の距離を縮めてくれる、大変良いアルバムだと思う。ヘンクのCDはこれ1枚しか持っていないが、イタリアのブルーノ・カニーノと同様、現代曲を人間味豊かに弾ける優れたピアニストだと感じた。ヘンクの他のCDも聴いてみたくなった。

    伊奈八 さん

    1

既に投票済みです

ありがとうございました

%%message%%