グーグル秘録 文春文庫

ケン オーレッタ

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784167651879
ISBN 10 : 4167651874
フォーマット
出版社
発行年月
2013年09月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
663p;16

商品説明

訳者あとがき


グーグル、中国での検索サービスから撤退──。
2010年3月23日、世界の主要メディアは一斉にこのニュースを伝えた。グーグルは自主検閲の撤廃などを求めて中国政府と交渉してきたが、折り合いがつかず、撤退を決めたという。テレビには中国外務省の報道官が「本件が米中関係に影響を与えることはない」と、憮然(ぶぜん)とした表情でコメントする姿が映し出された。


なぜ一企業の撤退が、米中関係にまで発展するのか。検索エンジンに、どれほどの重要性があるのだろう──。本書を読むと、その答えがよく分かるはずだ。そして報道からはなかなかうかがい知ることのできない、グーグルが今回の決断を下した真の理由も。


著者のケン・オーレッタは、米誌「ニューヨーカー」のベテラン記者だ。また『巨大メディアの攻防─アメリカTV界に何が起きているか』(新潮社)をはじめ、数々のベストセラーを世に送り出してきた作家でもある。


とりわけメディア産業の取材歴は長く、「ニューヨーカー」では1992年からコラム『コミュニケーション年代記』を連載している。アメリカ屈指のジャーナリズム・スクールを擁するコロンビア大学のメディア批評誌「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」は、オーレッタを“アメリカ最高のメディア論者”と評し、「彼ほど今起こりつつあるメディア革命を完全にカバーしている記者はいない」と書いている。


本書は2009年暮れにアメリカで刊行された。
原題の『Googled』は、「グーグル化されてしまった」とでも訳せばいいだろうか。その原題にまさに本書と他の凡百のグーグル本とを分けるユニークな視点が表されている。この本はグーグルの内部のみならず、グーグルによって産業基盤やルールがまったく変わり、徹底的に破壊されてしまう側からの事実も照射しているのだ。


巨大旧メディアの幹部はその気持ちを、精神科医エリザベス・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』の“死の受容の五段階”をひきながらこんなふうに表現している。


「最初に経験するのは、否認、それから怒り、取引、抑鬱(よくうつ)、受容の段階を踏む。まさに音楽産業が経験したことじゃないか」 CBSやFOX、ディズニー、新聞社グループといった大メディア企業、広告最大手といった伝統メディアのボスたちの声に、いかに変化に対応するか、自らの身を重ねて読む人もいるだろう。


グーグルの経営トップをはじめ、グーグル社員への150回におよぶ徹底した取材は圧倒的だ。取材嫌いで知られる共同創業者ラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンにも複数回にわたって取材をしており、最高経営責任者(CEO)のエリック・シュミットに至っては11回もインタビューをしている。


グーグルという会社は、2人の共同創業者抜きには語れない。膨大なウェブサイトの中から最適な検索結果を見つけ出すアルゴリズムはもちろん、「世界中のあらゆる情報を整理し、だれにでも使えるようにする」という壮大な目標、自由でフラットな企業文化、無謀にも見える多角化戦略など、すべては抜群に優秀で、怖いもの知らずの2人が生み出したものだ。


オーレッタは彼らが独自の“論理的思考”によってそれを生み出していく過程を詳細に描きつつ、そこで露呈される技術者特有の効率至上主義と“EQ(心の知能指数)”の低さに懸念を示す。


本書の後段は、こうした強みと弱みをあわせ持つグーグルという会社が、私たちの社会にどのようなインパクトを与えるかを解き明かしている。


グーグルが伝統的なメディアの在り方に根本的な変革を迫ることは、もはや疑いようがない。新聞社は<グーグル・ニュース>でニュースが無料でまとめ読みできるようになったことで、読者数や広告収入の減少に拍車がかかると戦々恐々だ。テレビや映画会社は無料動画サービスの<ユーチューブ>に投稿される海賊版に神経をとがらせている。


もちろんグーグルは、私たち一般人にも大きな影響を及ぼす。検索やGメール、ユーチューブといったサービスをタダで利用することと引き換えに、個人情報を少しずつ渡しているという事実、それを元に行動を把握され、グーグルの顧客である広告主に利用されるかもしれないという可能性を意識している人がどれだけいるだろうか。


グーグルは国家にとっても脅威となる。本書の中でオーレッタは、自らがダボス会議で経験したエピソードを紹介している。あるパネルディスカッションで、米国のIT業界の論客として知られるエスター・ダイソンが、インターネットが民主的な価値観の普及にどれほど役立つかを力説したところ、シンガポールやイランからの参加者が「個人よりコミュニティの利益の方が優先する。ネットにはしかるべき規制が必要だ」と猛反発したという。


この体験を元にオーレッタは、世界には“共通の価値観”などというものは存在せず、「世界の情報を共有し、利用可能にするという使命を掲げるグーグルには、常に戦うべき政府がいるのだ」と指摘している。人為的な操作を加えない自由な検索という信条を貫くため、中国政府に挑戦状を叩きつけた、本書の米国での出版後のグーグルの行動を、まさに的確に予測していたといえよう。


そう、ネット革命の時代を生きる私たち一人ひとりが、グーグルとその体現するインターネットにどう向き合っていくか、判断を迫られているのだろう。無料で世界中の情報が手に入るのは、確かにありがたい。でも、その結果、何を犠牲にしているのだろう? オーレッタの指摘するとおり、優れたジャーナリズムだろうか? それとも私たち自身のプライバシーだろうか? 何を利用し、何を利用しないか。何に対価を支払うべきか。決めるのは私たち自身なのだ。


本書の翻訳にあたっては、文藝春秋第二出版局の下山 進氏、田中貴久氏に大変お世話になった。心から感謝を申し上げたい。

内容詳細

生々しい巨龍たちの激突を活写する!
グーグル、アップル、フェイスブック。新旧メディアの野望と苦悩。大幹部たちにベテラン記者が直接取材、風雲急を告げるIT三国志!


全盛期のビル・ゲイツが「怖いのは、ガレージで新しい何かを始めた連中だ」と呟いたその時、彼らは創業した。マイクロソフト・アップル・フェイスブックとの熾烈な争いに、伝統メディアも巻き込んで新時代の扉が開かれる。「ニューヨーカー」ベテラン記者が大幹部たちに直接取材した圧巻の新旧メディア興亡史。 解説・成毛眞 2013/9/10 発売予定


目次
まえがき
第一部 別の惑星
第1章 君たちは魔法をぶち壊しているんだ!
すべて数値化すれば、効率的に広告が打てる。そう信じるグーグルの若い創業者たちにメディア王は叫んだ。


第二部 グーグルの物語
第2章 ガレージからの出発
ビル・ゲイツの予感は正しかった。そのとき検索エンジンで世界を変える夢を語りあうふたりが出会っていた。


第3章 活気はあれど収入はなし(1999 〜 2000 年)
カネを稼ぐアイデアはないが、すごい技術への自信はある。ふたりはシリコンバレーで潜伏しながら同志を探した。


第4章 グーグル・ロケット、発射準備(2001 〜 2002 年)
グーグルにプロのCEOがやってきた。黒字を計上したことで、ついに彼らは悟る。「我々は広告業だったんだ」


第5章 無邪気、それとも傲慢?(2002 〜 2003 年)
Gメールに書籍検索(ブックサーチ)。発想の湧くまま生まれるサービスから、エンジニアは無駄に見えるものは遠慮なく切り捨てる。


第6章 株式公開(2004 年)
一般用と経営者用。権利に差のある株上場に「より良い世界を目指す我々は普通の会社ではない」と創業者は語る。


第7章 新たな悪の帝国か?(2004 〜 2005 年)
「グーグルは邪悪ではない」という信頼に支えられた急成長。だが中国政府の検閲を許したとき、社会に疑惑が生じる。


第三部 グーグルvs. 旧メディア帝国
第8章 ユーチューブ買収(2005 〜 2006 年)
新聞王のマードックがマイスペースを買い、伝統メディアの目も覚めた。コンテンツの支配権をめぐり戦いが始まった。


第9章 戦線拡大(2007 年)
業界を「中抜き」してネット広告の覇権を握るグーグル。検索情報との連動で高まるプライバシーへの不安を一笑に付したが。


第10章 政府の目を覚ます
ネット広告最大手の買収は、独占禁止法とプライバシーの問題に火をつけた。グーグル幹部の他者への鈍感さは油を注ぐ。


第11章 グーグル、思春期に入る(2007 〜 2008 年)
次のターゲットを携帯に定め進撃を開始したグーグル。その社内には大企業病が芽生え、人材が流出しだしている。


第12章 「古い」メディアは沈むのか?(2008 年)
新聞、テレビ、音楽、出版……。苦境に陥る各業界の企業にとり、ネットの収益化は、なかなか険しい。


第13章 競争か、協調か
自分はユーザー側にいると信じるグーグルも、コンテンツを抱える各業界との交渉のテーブルにようやくついた。


第14章 ハッピー・バースデイ(2008 〜 2009 年)
大不況の波はネット業界も覆い、グーグルにもコスト意識が生まれる。広告に頼るビジネスの正念場はこれからだ。


第15章 ググられた世紀(2008 年)
昨日の華々しい事業は、今日の衰退事業。未知のイノベーションに恐怖しても、先に進む道しか企業には残されていない。


第16章 伝統メディアはどこへいく?
「広告で無料」は本当に新しいのか? ネット時代にもまともなコンテンツには対価が必要だが、受取法は不明のままだ。


第17章 これからどうなるのか?(2008 〜 2009 年)
グーグルとて明日はわからない。SNSや新しい検索エンジン。次の覇権を握るためのレースは既に始まっているのだから。


謝辞
原注注
訳者あとがき


ケン・オーレッタ
「ケン・オーレッタほど、今起こりつつあるメディア革命を完全にカバーしている記者はいない」(コロンビア・ジャーナリズム・レビュー)
ニューヨーク・ブルックリン出身。ジャーナリストとしては、1974年、ニューヨーク・ポストの政治記者としてキャリアをはじめる。その後雑誌コラムニストに転じ、名門総合情報誌「ニューヨーカー」には1977年から書きだした。1992年より「コミュニケーション年代記」を同誌で連載している。テレビ出演も多数。ジャーナリストの選ぶ『20世紀最高のビジネス・ジャーナリスト100人』にも選出されている。いくつかの大学の評議員などのほか、ピュリッツァー賞の審査員も務めている。



【著者紹介】
ケン・オーレッタ : ベテラン・ジャーナリスト。1974年、政治記者としてキャリアをはじめ、その後雑誌コラムニストに転じ、テレビ出演も多数。ジャーナリストの選ぶ『20世紀最高のビジネス・ジャーナリスト100人』のひとり。ピュリッツァー賞の審査員も務めている

土方奈美訳 : 翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。1995年日本経済新聞社入社。記者として活躍の後、2008年フリーに。2012年5月、米モントレー国際大学院から翻訳修士号取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • プラス3 さん

    解説・成毛眞・・・面白いに違いないので読んでみた。とにかく文章が上手い。600ページという文量を感じさせることなく読ませてくれます。内容も濃い。もちろんグーグルがメイン(中の人の言葉がこんなにたくさんあるのは、他に無いんじゃないかな)ですが、競争相手やメディア業界の変遷もグーグルと絡めて書いてあるので、得られる情報量がとんでもないです。

  • James Hayashi さん

    同じシリコンバレーに住むものとして、グーグルに対し憧れ、やっかみ、恐れなどを感じている。それほどの大企業に数年でなってしまい、まだまだ巨大化しつつあり、株価も上昇中。この本自体は、インタビューをまとめたもので、あまり参考にならなかったし、今後の動向も見極められなかった。多くの企業がそうであるように、果たしていつまで成長企業であり続けるのか?今後も注視して行きたい。

  • モモのすけ さん

    グーグルも普通の大企業になってしまうのだろうか。「怖いのは、どこかのガレージで、まったく新しい何かを生み出している連中だ」(ビル・ゲイツ)。「不可能という言葉に、健全な疑いを持とう」

  • roughfractus02 さん

    原題Googled(グーグル化)とは中抜きによる既成メディアの破壊をいう。新聞やTVの広告・CMを省いたコンテンツが無料で検索、掲載されると、既成メディアの費用削減は加速する。勤務時間の20%を自由に使えるGoogleのルールも従来のタイトな労働環境に影響を及ぼす。これらGoogleのユーザー主義なるものは1998年に創業したペイジやブリンらの理念の残滓だと著者は仄めかす。2007年ダブルクリック買収でバナー広告を始め、ユーザー監視にシフトする巨大企業の曲折を、本書は膨大な取材によるクロニクル構成で辿る。

  • MIC さん

    グーグル創業者の生い立ちから、グーグルが世界を席巻するところまでを、当事者への膨大な取材をもとに書き上げたノンフィクション。ようやく読み終わった。グーグルの内部のことはあまり知らなかったですが、だいぶ勉強になりました。成毛さんの解説もよかった。今のところ死角はないように見えるが、いずれは他の企業と同じような道を辿るだろうとのこと。どうなるでしょうか。

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