フランス近代の見過ごしがたい女性作曲家、その真価に迫る充実のオペラ全曲録音
近年ますます再評価が進む19世紀フランスの女性作曲家クレメンス・ド・グランヴァルが活躍期の後半、1892年4月23日にボルドー大歌劇場で初披露したオペラ『マゼッパ』待望の全曲録音。ブルボン王政末期の1828年に生まれ、1851年にグランヴァル子爵と結婚した彼女は、『マルタ』の作曲者フロトーやショパン、7歳年下のサン=サーンスらに師事、ナポレオン3世失脚を経て共和政が始まる1870年代頃から作曲家として注目されましたが、当初は配偶者の社会的地位を考慮して本名で作品を公表できませんでした。フランス国民音楽協会は彼女の作品の紹介に大きく貢献し名声を得たものの、パリの歌劇界は『マゼッパ』初演を受け入れず、同作が首都で披露されることはありませんでしたが、ボルドー初演の成功後はグランヴァル後期の代表作として高く評価され、大戦前まで各地で上演されました。
17世紀ウクライナの広野を舞台に、19世紀後半の管弦楽法の粋ともいうべき精緻な書法に支えられ展開する全5幕の雄大な英雄物語は、フランスの新たな同盟国となりつつあったロシアで8年前に初演されたチャイコフスキーの同題作品とも異なる魅力にあふれ、実に聴き応えあり。ラ・フォル・ジュルネ TOKYOでも活躍したエストニアの俊才ミハイル・ゲルツの精緻な音作りは、巧みなオーケストレーションの聴きどころを起伏豊かに浮き彫りにしつつ、カーやクリストヤニスら実力派歌手たちが歌い上げるドラマと心情交錯を鮮やかに支えます。前衛優位の20世紀が覆い隠してしまったグランヴァルの真価に迫る名演にふさわしく、「Bru Zane」レーベルの常通り図版満載のブックレット(英・仏語)も充実しています。(輸入元情報)
【収録情報】
● グランヴァル:歌劇『マゼッパ』全曲
タシス・クリストヤニス(バリトン/マゼッパ)
ニコル・カー(ソプラノ/マトレナ)
ジュリアン・ドラン(テノール/イスクラ)
アンテ・ヤクニツァ(バス/コチュベ)
パヴェウ・トロヤク(バリトン/修道院長)、他
バイエルン放送合唱団
ミュンヘン放送管弦楽団
ミハイル・ゲルツ(指揮)
録音時期:2025年1月17,19日
録音場所:ミュンヘン、プリンツレゲンテン劇場
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
ブック型装丁