3種類のフォルテピアノを使用!
クラーマー:ピアノ・ソナタ集(3CD)
シモーネ・ピエリーニ(フォルテピアノ)
練習曲で有名なクラーマーは、ベートーヴェンと同世代で交流もあった人物。活動の主体はピアニストでしたが、ピアノ曲を中心に多くの作品も遺しています。
クラーマーのピアノ・ソナタは、今日では演奏される機会は少ないものの、その小気味良い技巧的な聴かせどころや、ベートーヴェンやバッハ、モーツァルト、クレメンティの影響を感じさせる親しみやすい作風はなかなか魅力的です。
総数約200曲ともいわれるピアノ・ソナタは、おそらく自身のリサイタルのために書かれているため、ほとんどの曲が1790年代から1820年代にロンドンやウィーンで作曲されています。
演奏は最近大活躍のピリオド鍵盤楽器奏者、シモーネ・ピエリーニによるもので、ウィーン製のフォルテピアノ、「コンラート・グラーフ」、「ヨハン・ハーゼルマン」、「マティアス・ミュラー」の3種類を使用しています。ピッチはA=430Hz。
ブックレット(英語・12ページ)には、演奏者のピエリーニによる詳しい解説のほか、使用楽器の写真も掲載。
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作曲家情報
ヨハン・バプティスト・クラーマー(ジョン・バプティスト・クレイマー) [1771-1858]
神聖ローマ帝国、プファルツ選帝侯領の宮廷所在地マンハイムに誕生。父ヴィルヘルムはドイツ人音楽家、母アンジェリクはフランス人。3歳のときに母と弟のフランツ(フランソワ)[1772-1848 音楽家]とともに父の待つロンドンに移住し、以後、亡くなるまでイギリス人として生活。
父親
父ヴィルヘルム・クラーマー(ウィリアム・クレイマー)[1746-1799]はプファルツ選帝侯宮廷楽団のヴァイオリニストで、1772年にはコンサートマスターに昇格していましたが、同年に演奏旅行で訪れたロンドンで、ヨハン・クリスティアン・バッハ[1735-1782]からそのまま滞在するよう勧められ、ヴァイオリン演奏だけでなく、「バッハ・アーベル・コンサート」や、「エンシェント・ミュージック」、イタリア・オペラの指揮などでも成功し、そのままロンドンで暮らして27年後に同地で亡くなっています。
修業
最初、父からヴァイオリンの指導を受けていましたが、やがて、父の友人のクレメンティ[1752-1832]らにピアノを習うようになり、1782年から1784年、11歳から13歳にかけては、同じく父の友人のカール・フリードリヒ・アーベル[1723-1787]らに作曲や理論を師事。1788年頃にはツアー先のパリでエレーヌ・ド・モンジュルー[1764-1836]にもピアノの指導を受けています。
ピアニスト
1781年、10歳のときに父親の慈善コンサートでピアニスト・デビューして評判となり、1784年には13歳でクレメンティとのデュオ・リサイタルに出演。
17歳になった1788年にはフランスとドイツへのツアーに出かけ、各地に長期滞在しながら演奏し、3年後の1791年にロンドンに帰る頃には有名になっていて、ロンドン滞在中のハイドンと親しくなっています。また、ツアー開始直後にはパリでエレーヌ・モンジュルーの指導も受けています。
1799年から翌年にかけてヨーロッパ・ツアーを実施した際には、ベートーヴェン、フンメル、ドゥセク、ヴェーバー、カルクブレンナー、ケルビーニらとも交流。1800年にロンドンに戻ると結婚もし、練習曲の作曲にも着手。また、ツアーで知り合ったベートーヴェンの作品を、ロンドンで紹介してもいます。
クラーマーは1816年から1818年にかけて再びウィーンなどにツアーをおこない名声を高め、1822年にはロンドンの王立アカデミーの教師にも任命されています。
また、1835年、64歳のときにはピアニストとして盛大な引退コンサートをおこなって、以後はレッスンと作曲が中心となったようですが、1844年には自作のピアノ五重奏曲にピアニストとして73歳で出演しているので、室内楽演奏はおこなっていたのかもしれません。
作曲
1790年代からは作曲もおこない、9つのピアノ協奏曲や、膨大なソナタに加え、室内楽曲、ディヴェルティメント、そして数多くの練習曲なども作曲。
出版社
1805年に出版社「クラーマー&キーズ(クレイマー&キーズ)」を共同で設立。べートーヴェンのピアノ協奏曲第5番をイギリスで出版する際に「皇帝」と名付けたのはクラーマーとも伝えられています。
1833年にはクラーマーは出版事業から手を引いていますが、その後、同社は紆余曲折を経て、ピアノまで扱うようになり、クラーマー・ピアノのブランド名は現在も受け継がれています。
パリ滞在
1835年にロンドンで引退コンサートをおこなったのちパリ拠点での生活を開始。ピアノのレッスンをしながら生計を立て、ミュンヘンやウィーンも訪れたりしながら、ゆったりと作曲などする日々を過ごしています。当時のフランスは、1830年の7月革命でオルレアン朝が成立し、ブルジョワジー中心とはいえ国民主権に舵を切った時期で、パリは音楽家の多く集まるヨーロッパ最大級の音楽都市に成長しつつありました。
晩年
74歳になった1845年にはロンドンに拠点を戻し、さらに規模を縮小してレッスンと作曲を続け、1858年にケンジントンの自宅で死去。87歳。
演奏家情報
シモーネ・ピエリーニ(フォルテピアノ)
1996年、ローマで誕生。フル・ネームは、シモーネ・エル・ウーフィル・ピエリーニ。8歳でピアノを始め、18歳で高校を卒業後、ローマ聖チェチーリア音楽院でマウラ・パンシーニに師事してピアノのディプロマを取得。その後、フィエーゾレ音楽院でエリソ・ヴィルサラーゼに師事し、ボリス・ベルマン、ニコライ・デミジェンコ、パーヴェル・ギリロフらのマスタークラスにも参加。
その後、アレクセイ・リュビモフ、アンドレアス・シュタイアー、トビアス・コッホ、コスタンティーノ・マストロプリミアーノ、ステファノ・フィウッツィの講座やマスタークラスに参加したほか、FIMA(イタリア古楽財団)で、アンドレア・コーエンにチェンバロと歴史的鍵盤楽器奏法を、ジョヴァンニ・トーニに通奏低音を師事。
CDは、Brilliant Classicsからジェルヴェ=フランソワ・クープランの鍵盤楽器作品集(フランス革命恐怖政治終焉後の過激な自由を描写した「レザンコヤブル」と「レ・メルヴェイユーズ」も収録した注目の録音。「クープラン・ダイナスティ」に収録)、エレーヌ・モンジュルー:ピアノ・ソナタ全集、ケルビーニ:フォルテピアノ・ソナタ集、ティナッツォリ:鍵盤楽器作品全集、テッサリーニ:アレッタメント集、Da Vinci Classicsからメンデルスゾーン:ヴァイオリンとフォルテピアノのためのソナタ全集がリリース。

トラックリスト (収録作品と演奏者)
ヨハン・バプティスト・クラーマー(クレイマー) [1771-1858]
CD1 59'14
ソナタ 変ロ長調 Op.50 M.2.091 *
1. 第1楽章 アレグロ・コン・スピリト 7'10
2. 第2楽章 ロンド 5'26
ソナタ 変ホ長調 Op.25 No.1 *
3. 第1楽章 モデラート・コン・エスプレッショーネ 8'10
4. 第2楽章 コラール. グラーヴェ・エ・ソステヌート 3'10
5. 第3楽章 ロンド. モデラート・アッサイ 6'19
ソナタ ニ長調 Op.25 No.2
6. 第1楽章 アレグロ・スピリトーソ 6'28
7. 第2楽章 アンダンティーノ コン モト 4'19
8. 第3楽章 ロンド・クワジ・プレスト 3'54
ソナタ ニ長調 Op.25 No.3 *
9. 第1楽章 モデラート・コン・エスプレッショーネ 7'21
10. 第2楽章 アレグレット・ノン・トロッポ 2'34
11. 第3楽章 ロンド・アン・カリヨン 4'18
CD2 63'41
ソナタ ニ長調 Op.20 *
1. 第1楽章 ラルゴ・アッサイ(アタッカ) 1'35
2. 第2楽章 アレグロ・クワジ・プレスト 3'00
3. 第3楽章 主題 2'15
4. 同 第1変奏 1'38
5. 同 第2変奏 1'08
6. 同 第3変奏 2'37
7. 同 第4変奏 1'32
8. 同 第5変奏 1'42
9. 同 第6変奏 1'18
10. 同 第7変奏 4'13
ソナタ 変イ長Op.23 No.1 *
11. 第1楽章 アレグロ・ノン・モルト 9'27
12. 第2楽章アダージョ (アタッカ) 3'29
13. 第3楽章 ロンド。アレグレット 4'59
ソナタ ハ長調 Op.23 No.2 *
14. 第1楽章 ラルゴ・アッサイ 1'51
15. 第2楽章 アレグロ・アジタート 5'41
16. 第3楽章 アレグレット 5'13
ソナタ イ短調 Op.23 No.3 *
17. 第1楽章 アレグロ・モデラート 4'03
18. 第2楽章 アダージョ コン エスプレッショーネ 4'48
19. 第3楽章 アレグロ・クワジ・プレスト 3'02
CD3 47'37
ソナタ イ短調 Op.53「アルティマ」
1. 第1楽章 グラーヴェ 2'35
2. 第1楽章 モデラート 12'11
3. 第2楽章 アンダンティーノ・クワジ・アレグレット 4'39
4. 第3楽章 ロンド. ピウ・トスト・デラート 6'31
ソナタ ハ長調 Op.57「レ・スイヴァント」 *
5. 第1楽章 アレグロ・ブリランテ 11'18
6. 第2楽章 アンダンティーノ 3'47
7. 第3楽章 ロンド・アッラ・ポラッカ 6'32
* 初録音
シモーネ・ピエリーニ(フォルテピアノ)
コンラート・グラーフ、1830年 (CD1 トラック1、2 & CD3)
ヨハン・ハーゼルマン、19世紀初頭 (CD2)
マティアス・ミュラー、1822年 (CD1 トラック3〜11)
録音:2021年8月23〜25日、イタリア、モンテ・コンパトリ、パラッツォ・アンニバルデスキ
Track list
Johann Baptist Cramer 1771-1858
10 Piano Sonatas
CD1 59'14
Sonata in B flat Op.50 M.2.091 *
1. I. Allegro con spirito 7'10
2. II. Rondo. Allegro moderato con espressione 5'26
Sonata in E flat Op.25 No.1 *
3. I. Moderato con espressione 8'10
4. II. Choral. Grave e Sostenuto 3'10
5. III. Rondo. Moderato assai 6'19
Sonata in D Op.25 No.2
6. I. Allegro spiritoso 6'28
7. II. Andantino con moto 4'19
8. III. Rondo quasi Presto 3'54
Sonata in D Op.25 No.3 *
9. I. Moderato con Espressione 7'21
10. II. Allegretto non troppo 2'34
11. III. Rondo an Carillon 4'18
CD2 63'41
Sonata in D Op.20 *
1. I. Largo asssai (attacca) 1'35
2. II. Allegro quasi Presto 3'00
3. III. Aria con Variazioni. (Thema. Moderato) 2'15
4. Variation 1 1'38
5. Variation 2 1'08
6. Variation 3 2'37
7. Variation 4 1'32
8. Variation 5 1'42
9. Variation 6 1'18
10. Variation 7 4'13
Sonata in A flat Op.23 No.1 *
11. I. Allegro non molto 9'27
12. II. Adagio (attacca) 3'29
13. III. Rondo. Allegretto 4'59
Sonata in C Op.23 No.2 *
14. I. Largo assai 1'51
15. II. Allegro agitato 5'41
16. III. Allegretto 5'13
Sonata in A minor Op.23 No.3 *
17. I. Allegro moderato 4'03
18. II. Adagio con Espressione 4'48
19. III. Allegro quasi Presto 3'02
CD3 47'37
Sonata in A minor Op.53 “L'Ultima”
1. I. Grave (attacca) 2'35
2. II. Moderato. Energico ed espressivo assai 12'11
3. II. Andantino quasi Allegretto 4'39
4. III. Rondo. Più tosto moderato 6'31
Sonata in C Op.57 “Les Suivantes” *
5. I. Allegro brillante 11'18
6. II. Andantino 3'47
7. III. Rondo alla Polacca. Allegro non tanto 6'32
* First recordings
Simone Pierini original fortepianos
Conrad Graf, 1830 (CD1 tr. 1, 2 & CD3)
Johann Haselmann, first decade of 19th century (CD2)
Matthias Müller, 1822 (CD1 tr. 3-11)
Property of: Romeo Ciuffa (Haselmann), Giuseppe Accardi (Müller, Graf)
Recorded: 23-25 August 2021, Palazzo Annibaldeschi, Monte Compatri, Italy