イアン・ボストリッジ

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シューベルトの「冬の旅」

イアン・ボストリッジ

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784865591507
ISBN 10 : 4865591508
フォーマット
発行年月
2017年02月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
440p;22

商品説明


シューベルトの「冬の旅」
イアン・ボストリッジ 著岡本時子 訳岡本順治 訳


当代一の名歌手が、楽聖の遺した暗号をいま解読する。

「ボストリッジは音楽の解釈者のなかでももっとも才能ある文筆家である」
──アルフレート・ブレンデル(ピアニスト)

英国の誇る世界的リート歌手が、1000回を超える演奏経験と、文学・歴史・政治・自然科学におよぶ広大な知見と洞察にもとづいて著した、いまだかつてない刺激的なシューベルト論。

『冬の旅』全曲の成立史を克明に跡づけるとともに、詩人ミュラーと作曲家シューベルトが生きた19世紀初頭のヨーロッパの文化状況や自然環境を、豊かなイマジネーションで読者の眼前に生き生きと再現する。カラー図版を多数掲載した美しい造本仕様も魅力。

すぐれたノンフィクション作品にあたえられる英国の権威ある文学賞「ダフ・クーパー賞」を受賞!

【本文より】
『冬の旅』ほどに複雑で強い情感を呼び起こす作品を演奏するということは、それにあらゆる面でかかわるということだ。1828年に文化という大海原に流された、瓶に入れられたメッセージが、いまに生きる私たちにどんな意味をもつのかを理解することでもある。この作品は私たちの現在の関心事にどう関連するのだろうか? まったく予期しなかったようなかたちでも、私たちとのつながりが見つかるのだろうか?

【独Zeit紙の書評より】
この著作の英語のサブタイトル[Anatomy of an Obsession]が示すように、『冬の旅』にとりつかれた心を分析することで、ボストリッジは自分が音楽の解釈者のなかでももっとも才能ある文筆家に属することを証明してみせた。彼が語ることは、生き生きとして博識であり、もっとも素晴らしい意味において読者を楽しませるものである。本著は文化史を概観させてくれるばかりでなく、プレゼンテーションの大胆さと巧みさゆえに、読者をこのうえなく刺激的な知的世界への冒険へと誘うのだ。[略]
この本はより広い読者層を意識したものである。音楽用語の使用は控えてあり、さまざまな専門用語は説明がなされている。それに加えて、見識をもって選び抜いたかずかずの絵画や映像が、彼の文章をさらに豊かなものにしている。シューベルトとカスパー・ダーフィト・フリードリヒを対比させることが、これほどまでに意義深く思えることはめったにないだろう。(アルフレート・ブレンデル)



【CONTENTS】
日本語版への序文
序 章
第1章 おやすみ Gute Nacht
第2章 風 見 Die Wetterfahne
第3章 凍った涙 Gefrorne Tränen
第4章 凍 結 Erstarrung
第5章 菩提樹 Der Lindenbaum
第6章 あふれ流れる水 Wasserflut
第7章 流れの上で Auf dem Flusse
第8章 かえりみ Rückblick
第9章 鬼 火 Irrlicht
第10章 休 息 Rast
第11章 春の夢 Frühlingstraum
第12章 孤 独 Einsamkeit
第13章 郵便馬車 Die Post
第14章 霜雪の頭 Der greise Kopf
第15章 カラス Die Krähe
第16章 最後の希み Letzte Hoffnung
第17章 村 で Im Dorfe
第18章 嵐の朝 Der stürmische Morgen
第19章 惑わし Täuschung
第20章 道しるべ Der Wegweiser
第21章 宿 屋 Das Wirtshaus
第22章 勇 気 Mut
第23章 幻の太陽 Die Nebensonnen
第24章 ライアーまわし Der Leiermann
終 章 なごり

イアン・ボストリッジ(Ian Bostridge)
イギリスのテノール歌手。ドイツ・リートの解釈では今日もっとも卓越した歌手のひとりとして、世界中で高い評価を受けている。オペラや歌曲の録音はかずかずの賞を獲得しており、ヨーロッパや北アメリカ、極東で定期的にリサイタルをおこない、批評家からも絶賛されている。
オックスフォード大学では近代史を専攻し、1990年博士号を取得。著書に『1650年から1750年における魔術とその変容』(1997)と『歌手の忘備録』(2011)がある。オックスフォード大学の音楽学客員教授をつとめ、英国の新聞『ガーディアン』や英語圏を代表する書評週刊誌『タイムズ文芸付録』に定期的に寄稿している。

【岡本時子(おかもと・ときこ)】
上智大学大学院外国語学研究科言語学博士後期課程単位取得退学。ドイツ、ザールラント大学留学。専門はドイツ言語学、音声学。現在筑波大学グローバルコミュニケーション教育センター非常勤講師。主要著書:『ドイツ言語学辞典』(共著、紀伊國屋書店)

【岡本順治(おかもと・じゅんじ)】
上智大学大学院外国語学研究科言語学博士後期課程単位取得退学。ドイツ、ザールラント大学留学。専門はドイツ言語学、認知意味論。現在学習院大学文学部ドイツ語圏文化学科教授。主要著書:『現代ドイツ言語学入門』(共著、大修館書店)、『講座ドイツ言語学 ドイツ語の文法論』(共編著、ひつじ書房)

内容詳細

目次 : ■序章 / ■第1章: おやすみ / ■第2章: 風見 / ■第3章: 凍った涙 / ■第4章: 凍結 / ■第5章: 菩提樹 / ■第6章: あふれ流れる水 / ■第7章: 流れの上で / ■第8章: かえりみ / ■第9章: 鬼火 / ■第10章: 休息 / ■第11章: 春の夢 / ■第12章: 孤独 / ■第13章: 郵便馬車 / ■第14章: 霜雪の頭 / ■第15章: カラス / ■第16章: 最後の希み / ■第17章: 村で / ■第18章: 嵐の朝 / ■第19章: 惑わし / ■第20章: 道しるべ / ■第21章: 宿屋 / ■第22章: 勇気 / ■第23章: 幻の太陽 / ■第24章: ライアーまわし / ■終章: なごり / *訳者あとがき/訳注/参考文献 / 図像についてのクレジット

ユーザーレビュー

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 楽譜が読めない者として、聴くことで気楽...

投稿日:2017/08/17 (木)

 楽譜が読めない者として、聴くことで気楽に自分の好き勝手に音楽を愉しんでいる。が、実際に演奏する者・歌う者はここまで掘り下げて、または音楽以外の事象や文化・文学・歴史などからもインスピレーションや解釈のヒントを得ているということに、単純に感嘆させられた。そもそもいち歌曲集において、ここまで多くの「土台」があるものなのか、と舌を巻く思いだ。文章は読ませる力を持っており、なにより演奏者として実践しているだけ説得力も十分。演奏における内輪話のようなものも垣間見え面白くもある。「冬の旅」が創造された時代背景と作曲者の内面の探検、そして現在へと続く問題提起の探求が綿密に行われている。  私のような素人が考えている以上に、音符や言葉のひとつひとつに意味があるのだそうだ。まさに「神(ここではミューズ?)は細部に宿る」といったところだろうか。建築関係の人の発言か意見からきていたように記憶しているが、音楽でも同じことが言えるのかもしれない。こと、数多の音符と詞から1曲が作られ、24曲集まってはじめて全体が構築されるこの歌曲集の場合にはなおさら…。  「冬の旅」を愛する方のみならず、芸術・歴史etc.を愛する方におすすめ。

うーつん さん | 東京都 | 不明

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読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • Christena さん

    「冬の旅」が好きでよく聞くので、詳しく知りたいと思って読んでみました。すごくマニアックな内容でしたが、一章が一曲に対応していたので、ドイツ語の歌詞と対訳の日本語を見ながら、一曲づつ聞きながら読み進めました。全部が理解できたわけではないけど、深く知ることができて、さらにこの曲が好きになりました。読んで良かった。

  • 汲平 さん

    一晩に一章ずつ、様々な演奏を聞き比べながら、ゆっくりと時間をかけて読みました。ボストリッジが知的なアプローチをしていることは有名であるのだが、これほど該博な知識と洞察で解釈しているとは驚き。だが、それよりも驚くのは、多忙な演奏旅行の合間にこれだけの大著を書き上げたこと。驚嘆です。

  • Lieu さん

    線が細くて透明な声質のボストリッジの『冬の旅』のCDが好きで手に取った。オックスフォードの歴史学の博士号ももつというボストリッジは、歌手としての経験のみならず、文化史や文学の深い知識を駆使して『冬の旅』を読みとく。たとえば「菩提樹」のセクションでは『魔の山』や『失われた時を求めて』から自在に引用しているのに目を見張る。学術書でも音楽技法寄りの評論でもなく、どこから読んでも面白い。間違いなく良書である。

  • トビケ さん

    クラシック音楽を聴いて20年以上経ち、年月を重ねて、未だに膨大な発見がある。新しく魅力的なものに出会うこともあるが、既に何度も聴いていたものの受け止め方が大きく変わることもある。冬の旅は後者で、昔から気にはなるがよくわからないものだったところ、本書を読みながら丁寧に聴くことで、色々と気付きがあった。最近のトッパンホールでのボストリッジの公演を契機に本棚から本書を取り出して読んだのだが、知的に満たされ、得るものの多い時間で愉しくなった。善き哉。

  • Eu さん

    音楽の本だけどあまり譜例を使ってなくて、読みやすい。ひとりの人、ひとつの作品についてこんなに調べあげちゃったら、よからぬことまで露呈してしまうのではないかと不安になるほどに執拗なアプローチをかけられていてもなお魅力が失せることがないどころか、むしろ増している。人、作品、歴史(と科学・人文学)に対するボストリッジの深い信頼と愛が感じられてよかった。

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