それぞれの点について

その小柄な体からは想像もつかない豊かな声量、凛としつつも瑞々しい歌声、しなやかで普遍的なポップスの強度を保ちながらも、独特かつ魅惑的なメロディーラインを自ら創り出す、現役美大生シンガー、よだまりえが6 曲入りのミニ・アルバムにて遂にCD デビュー。ライブを行う毎に多くの新規ファンを魅了してきたパフォーマンスの魅力を損なうことなく、彼女が目指していた、録音した音源自体や、音そのものの良さを最大限生かした作品となった。録音からミックス、マスタリングまでを手掛けたのは、近年ではリーダー・バンドのdetune.のみならず、蓮沼執太チームやフィルのメンバー、木下美紗都と象さんズのメンバーとしても活躍中の石塚周太。detune.、グレンスミス、DJ まほうつかい他の作品でもエンジニアとしての手腕も振るう石塚のエンジニアリングによって、単なる弾き語りの一発録りに留まることなく、多くのマイクを使用して録音され、ミックスにもかなりの工夫がなされた。
彼女の楽曲の良さを更に引き出すために、バンドでの録音ヴァージョンも1 曲、ボーナス・トラック的に収録。
バンド・メンバーは以前から交流のあるBOMBORI（この8 月に1st フル・アルバム『GONG』をリリースしたばかりで、非常階段のJOJO 広重にも絶賛されている）の神谷峻輔と坂下ひかりが参加。
彼女の今後の音楽家としての可能性を予感させる、有機的かつ非常にタイトなバンド・アンサンブルとなっている。蓮沼執太、木下美紗都、detune.といったWEATHER の先輩たちにも連なる、大いなる可能性を秘めたこの新人女性シンガーソングライターの作品を一人でも多くの人に聴いて欲しい。

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よだまりえは、僕がかつて教えていた美大の学生で、今もそこに通っている。
新入生の頃から知っていたのに、ピアノを弾きながら歌をうたってることを知らされたのは、ずいぶん経ってからのことだった。
おずおずと差し出された、たった２曲が入ったCDR を聴いてみて、驚いた。
そこにはおおらかでやさしく、それでいてベトつかない爽やかさと凛とした強さを持った音楽があった。
こんな言い方は陳腐かもだけど、本物の歌い手がここにいる、そう確信した。
この子はこれから何があろうと、生きてるあいだ、ずっとこうして歌っていくんだろう、そう思えた。
それからゆっくりと時間をかけて、ここにこうして一枚のデビューアルバムが出来上がった。
多くの耳に届くといいと思っている。
このシンプルきわまりない音楽の中には、疑いようもなく、普遍的な輝きがある。
佐々木敦