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TSUSAN さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/11/23

     誰もが知るオーボエ奏者にして、作曲家、指揮者のハインツ・ホリガー(1939〜スイス)とバーゼル室内管弦楽団(KAMMERORCHESTER BASEL:スイス)によるシューベルト交響曲全曲演奏の第1作。

     解説書によれば、ナチュラル・ホルンや口径の狭いトランペットやトロンボーン、クラシカル・ティンパニ、ガット弦とクラシカル・ボウを用い、ヴィブラートは必要最小限とする。それによって、シューベルトという当時の前衛音楽家が有する本来のモダニティが積もった埃を払いのけるように伝わるというようなことが書かれている。
     
     ここに聴ける響きは、HIPのように作曲当時の楽器を用いるという演奏が陥りがちな、アクセントやノンヴィブラートの強調とは無縁で、初期ロマン派の息吹を瑞々しく聴かせる。録音時の78歳は指揮者として高齢とは言えないが、この演奏でのホリガーはまるで青年のようだ。

     このチクルスは実演では2017年11月にバーゼル音楽劇場で始まり、すでに2020年の交響曲第7番「未完成」を含むプログラムを残すのみとなっている。
     この録音は11月14日のバーゼルでの演奏会のあと、イギリス公演に旅立つ前の11月15〜17日にバーゼルでセッションを組んで行われている。
     近年のオーケストラ録音といえばライブの一発録りでプローベの音源でミスを修正という流れが一般的になった今、3日間ものセッションで現代の録音技術を駆使して収録された成果はCDフォーマットでも明らかで、奇をてらわないホリガーのアプローチにはこの極上の音質が必須だということが理解できる。

     バーゼル室内管弦楽団はメンバー表によれば40人余りの所帯だが、ホリガーの意思が浸透していて、メンバーがそれに応える技量を持っており、フレージングとアーティキュレーションが正確に決まるさまは見事というほかない。

     実演の時系列に従えば、このあと第5番と第1番、第4番と第6番、第7番「未完成」の順で登場するはずで、これらの曲とバーゼル室内管弦楽団の相性は絶好だろう。20世紀から通じて指折りの全集となることが期待される。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/11/03

    絶頂期…かも?

     昔、エリー・アメリングというソプラノのレコードやCDを買い集めたことがある。軽くて細い声が魅力だったけど、年を重ねるごとに声質が重くなってしまって、とにかく初期の、若いころの録音を買い漁った。うまいかへたかなんてどうでもよかったし、生で聴いたら声量がどうかなんて考えたこともなかった。
     けっこう残酷なことだけど、軽い声質のソプラノの場合、歌の技術や成熟度よりも声の若さという価値が上回ってしまうことがある。

     このアルバムの5曲目、モーツァルトのコンサートアリアを聴いて、軽く柔らかい声がモーツァルトによく合うのに感心した。とにかく声がキレイ。ドビュッシーの月の光なんてさらに声が伸びやかで、絶美と言ってもいい。
     
     これから先、彼女がコロラトゥーラの技巧を磨き上げていくとして、後々、このアルバムが「あの時の清楚な声は良かった」と愛でられる日が来るかもしれない。
     今までに田中彩子から離れてしまった方も、今一度お聴きになってみては?

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/11/03

    ミロシュの思いが静かに伝わってくる

     タイトル曲の「サウンド・オブ・サイレンス」を聴くと、これが現在のミロシュの心境にとても寄り添った曲なのかなと思った。
     アルバムのコンセプトなのか、まだ故障からの回復の途上なのか、激しい曲や技巧を前面に出した曲は無し。静かな曲が多いというだけでなく、心の深いところに響くような滋味深い音楽。じっくり耳を傾けるのも良いし、枕元で聞けば俗事を洗い流して眠りにつくこともできるだろう。
     静寂は…単なる音符と音符の間の隙間ではなく…魔法が起こる場所、というのがミロシュ自身の言葉らしい。自分の聴いたものが魔法なのかどうかはわからないけど、この演奏を形容するのに美しいと言うだけでは足りない気がした。熟成されたクラシックギターのアルバムとして、また、音楽に癒しを求めるという方にもお薦めしたい。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/05/06

    流れの良さと音楽の豊かさ

     この演奏はDVDでもリリースされているが、当レビューはブルーレイについてのものである。
     拙宅は2ch環境のためLPCM-STEREOでの視聴であるが、24bit 48kHzの恩恵は大きく、16bitとは情報量が違うし、当盤の録音はレンジが高低によく伸び、特に低域がホールで聴くバランスと同じように豊かで、混濁は皆無、ダイナミック・レンジもそのままなので、2chでも会場で聴いているような臨場感がある。聖フローリアンの長い残響もしっかり聞き取れる。

     演奏はウェルザー=メストらしく音の見通しと流れが良く、テンポ、ダイナミクス、バランスどれを取っても違和感が全くない。さらに曲の持つ音楽的な豊かさも十分に表現していると思う。録音チームの優秀さもあるのだろうが、ソリスト、オケ、合唱の音量のバランスも完璧。また、カメラワークがオーソドックスで演出臭が一切無いのも良い。

     ウェルザー=メストのファンの方はご存知の通り、動向にやきもきさせる所のある指揮者だが、音楽的にはしっかり充実の道を歩んでいると評したい。名演。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/05/06

    足取り軽やかなれど巨人の歩み。

    この演奏はNHK-BSのエアチェックで持っていたのだが、最近ウェルザー=メストへの思い入れが強くなったので購入した。
    ブルーレイの24bit 48kHz(LPCM-STEREO)の音声は放送とは別物で、あっさりと進むと思っていたこの演奏の認識を改めた。
    足取りは軽やかでもこれはやはり巨人の歩み。終演後の拍手喝采も納得である。優秀録音であることも確認できた(最新のドイツ・レクイエムはさらに上を行くが)。
    このコンビは最近のコンサートのレビューでも激賞されているが、今後も要注目だろう。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2017/05/06

    エイナウディ上級者向け?内容は深いが内省的。

     エイナウディのコンサートはノンストップで前半がバンドが入ってニューアルバムの楽曲、中間がエイナウディのピアノ・ソロで旧作にインプロビゼーションが混ざる。後半はオーケストラまたはバンドと新旧の楽曲というふうに進む。2014年の来日公演の前半は「In a Time Lapse」の楽曲で固められていた。

     このアルバムの発売当初、このように渋い楽曲でコンサートの前半が持つのだろうか?と思った。2017年の来日公演(すみだトリフォニー・ホール)を聴いてきたが、やはりというか、前半は「Elements」と「In a Time Lapse」の楽曲のミックスで進んでいった。
     エイナウディは還暦を過ぎたとはいえ元気で、後半はサラ・オレイン(ヴァイオリンでの参加)も加わってコンサートは大いに盛り上がった。

     CDのレビューにならなくて申し訳ないが、エイナウディ入門にはIslands-Essential Einaudi(2枚組の方。ドラマ版ドクトル・ジバゴの名曲Love Is A MysteryとWhite Nightが2枚目に収録されている。しかも、リマスターされてOSTより音が良い)を勧めたい。気に入れば前記「In a Time Lapse」、そして本作と来ればいいと思う。

     エイナウディは大人の音楽である。CM、ドラマ、OSTの曲をたくさん書いているとはいえ、オリジナル・アルバムでは一切妥協しないで過去の自分を乗り越えようとする。このアルバムもとっつきにくさはあっても、そのようなエイナウディの気概を理解して聴けば二つとない彼の世界を見ることになるだろう。
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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/05/04

    教会の長い残響と解像度が両立した優秀録音。歌手本位の演奏。

    ソリスト:ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレ(ソプラノ2名、アルト(女声)1名、テノール2名、バス1名)
    ヴォーカル・アンサンブル(主に合唱):カンティカ・シンフォニア(曲によってメンバーの出入りがあるが17名前後)
    合奏:カンティカ・シンフォニアおよびラ・ピファレスカ(22名)
    ジュゼッペ・マレット(指揮およびラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレのテノール)
    録音時期:2016年9月、10月 録音場所:イタリア、ピネローロ、サン・マウリツィオ教会

     輸入元の情報によればジュゼッペ・マレット指揮とあるが、上記のようにマレットは歌手兼任である。ただ、ブックレットを詳細に見るとマレットが歌手として参加と明記してあるのは「われは黒し」(テノール独唱とハープ)、「二人のセラピムが」(テノール3声とオルガン)の2曲のみなので合奏、合唱を伴う曲は指揮に専念していると思われる。ブックレットには指揮棒がわりの鉛筆?を「左手に」持ったマレットの指揮の写真が掲載されている。

     輸入元の資料では「ジュゼッペ・マレットが長い演奏経験を活かし、使用楽器、ピッチやテンポの選択など細部までこだわり」とある。長い演奏経験の中に指揮者の部分がどれくらいあるかわからないが、終始堅実な指揮で、マニフィカトの終盤などはガーディナー、コルボといった過去の名盤の高揚感に及ばない部分はある。

     マニフィカト冒頭部分のピッチを既出盤と比べると、ガーディナー盤、コルボ盤よりは低く、マクリーシュ盤、アレッサンドリーニ盤よりは高くて、テンポは一番ゆっくりなアレッサンドリーニ盤に近い。ところが1曲目[Deus〜」はアレッサンドリーニ盤より低い。ピッチについてはブックレット(英・伊・独語)に解説があるようだがなにやら難しくて自分にはお手上げである。鈴木雅明盤でもあったようにこの曲集のピッチの問題は奥が深いらしい。
     
     当盤のマニフィカトは、通常収録される「7声と6楽器」の他に、収録される機会の少ない「6声と通奏低音」が収められているのが大きなポイント。6声は伴奏が簡素な分、声楽は華やかに作られており、特に終盤の3曲「Sicut locutus,Gloria Patri,Sicut erat」でダイナミックなクライマックスを築き上げる。

     ラ・コンパーニャ・デル・マドリガーレはアンサンブルには絶対の自信を持っているらしく、歌唱は自発的で美しさに溢れている。また、新録音にふさわしく音質は大変良く、特に声は肉声を聞くように瑞々しい。過去の名盤との比較に囚われなければ十分に魅力的な新盤の誕生と思う。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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