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北の旅人 さんのレビュー一覧 

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     2012/12/01

    「リヒャルト・シュトラウス論」を雑誌に投稿するほどのシュトラウス好きだったグールドが、1966年にエリザベート・シュヴァルツコップと残した貴重な共演記録。
    後のインタビューでシュヴァルツコップがこの共演を「不運な愛」と形容したこと、また録音後長きにわたり「お蔵入り」になっていた(一部の楽曲(オフィーリアの歌)が発売されたのは1980年)ため、いろいろな憶測をよんでいたが、今回、新たに3曲が日の目を見ることとなった。
    演奏は他の伴奏作品同様、グールドらしさが前面に出ているが、シュヴァルツコップとは波長が合っていない。これは、当時のプロデューサーが指摘しているように、歌手をaccompanist(伴奏者)と考えるシュヴァルツコップと、collaborator(共同制作者)と考えるグールドとの違いが録音に残ったものといえるのではないか。
    そういう意味では、バーンスタイン/NYPとのブラームス・ピアノ協奏曲第1番同様、グールドの音楽的嗜好が共演者によって図らずも浮き彫りになった、隠れた名盤だと思う。

    なお、歌曲の他に「ブルレスケ」が収録されているが、本編はともかく、音質が貧弱なリハーサル(「歌付き」の表記あり)を初出としてわざわざ収録する意味があったのかは疑問である。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/04/09

    1958年にベルリンでグールドの生演奏(カラヤン指揮ベルリンフィルでのバッハ/ピアノ協奏曲第1番)を見た、若き日の園田高広氏が「グールドの音楽は口につくしがたい魅惑に満ちていて、ことにピアニッシモの美しさは想像を絶している」と絶賛したように、ライブでのグールドは計算しつくされたスタジオ録音とまた違った魅力がある(その魅力は、グールド自身が最も嫌悪したものであったが)。また、バーンスタインとのブラームスに代表されるように、協奏曲では指揮者(やオケ)との解釈の相違がしばしば注目されてしまうのがグールドである。

    The Secret Live Tapesと題されたこのCDには、3曲の協奏曲のライブが収録されている。注目は今回、初めて世に出ることとなった「第三の『皇帝』」である。

    これまで知られている同曲の録音は、ユニークな解釈を指摘されることが多いストコフスキーとのスタジオ録音(1966年)とDVDで見ることができるアンチェルとのテレビ放送録音(1970年)の2種であるが、本盤はスタジオ録音より6年前のライブ盤(これまで存在すら知られていなかった)ということで、グールドがどのような解釈と演奏をしたかに大変興味を持っていた。
    全体的にテンポが速く、印象は1970年盤に近い(総演奏時間は、本盤38分34秒、66年盤43分9秒、70年盤36分37秒)が、ピアノソロパートで聴くことができる弱音の表現が本当に素晴らしく、これだけでも買う価値がある。ただ、録音音質はライブ盤であることを差し引いても貧弱で、ピアノとオーケストラとずれも散見されるなど、問題点がないわけではない。
    本盤には、『皇帝』以外にバッハとシェーンベルクの2曲の協奏曲も収録されている。いずれもグールドがライブで好んで演奏した曲で、今回が正規盤として初発売となる(以前、伊NuovaEra原盤として出ていた)。このうち、バッハは1958年ザルツブルク音楽祭でのライブ盤であり、これでザルツブルク音楽祭でのグールドの録音は既発の1959年ソロリサイタルと併せてすべてソニーから入手できるようになった。演奏そのものは、スタジオ録音やよく知られているレニングラード(サンクトペテルブルグ)ライブの端正な演奏(いずれも1957年)とは異なり、極端に早く(前2者の演奏時間が24分に対して、19分25秒と約20%短い)、グールドの緊張感が聴き手にも伝播する。そのような「荒い」演奏だが、第2楽章での美しさには息をのむ。また、シェーンベルクはスタジオ録音(1961年)をさかのぼること3年前のライブ録音で指揮は、後にバッハでも共演したミトロプーロスだが、演奏を受け持ったのが自らが音楽監督を務めたニューヨークフィルだったからか、オーケストラとグールドとが一体となった演奏で、本盤に収録された3曲の中で、最も演奏の完成度が高い。

    早いもので、グールドが50歳の若さで没して来年で30年の月日が流れ、新たな作品が出ることがほとんど期待できない中、世界初出の『皇帝』を含む希少なライブ盤が姿をあらわしたことはグールドファンにとって大きな喜びである。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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