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さが さんのレビュー一覧 

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/05/30

    ・ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 op.95「セリオーソ」

    ベートーヴェンの難聴がかなりすすんでいた時期の作品。心の音を頼りにまっさらな五線譜へ音符を書いたベートーヴェンに思いを馳せながら、何度も聴いてみました。
    冒頭のユニゾンから、一瞬の間をもって続く各パートの掛け合いとハーモニー。
    前回のCD同様、キアロスクーロカルテットの奏でるほとんどノン・ヴィブ ラートのロングトーンは鋭角に、しかもじわじわと浸透してきます。
    小刻みに鋭い主題が続くかと思うと弱音のトーンが優しく響いたり、遠ざかるようにデクレシェンドしたりして、忍び寄る暗闇に追い立てられるかのように突き進むと、ふいに光り差す庭へ出たような…視覚的な情景が抽象的に広がってきます。


    ・モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 KV 546
    ・モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番 変ホ長調 KV 428

    キアロスクーロ・カルテットの前作「不協和音」同様、良い意味でモーツァルトっぽさがないと思いました。
    浮き足立つような軽さはなくて、軽快まで行かない慎ましさ?みたいな雰囲気があり、メンバーの中にやんわりとした風のような…共通の前提があって、その中でなおかつ対比を確かめ合うみたいな?心地よさを感じました。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2014/03/18

    収録されている作品中のオーボエとヴァイオリンのための協奏曲BWV1060で共演しているアリーナ・イブラギモヴァ目当てで購入。
    クラッシックに興味のない一般の方でもどこかで聴いたことのあるであろう曲。なじみがありすぎて、さらりと聴き流してしまいそうだが…最初に聴いたバッハの無伴奏がまさにそうであったように、やはり彼女の音は自然に耳へ入り込んでくるのに、思わず振り向かせる吸引力がある。

    オグリンチュク氏の素敵なオーボエは、以前にも何度か映像などで聴いた事があり、それでこのCD買う気にもなったのだが、少しひんやりとした雰囲気がなくもないバッハの緻密な旋律がなんて…温かい…。とっても優しい音色だ。
    心が疲れてる時に聴いたら、ものすごく癒される。

    その温もりに寄り添って、囁くアリーナのヴァイオリンがまた素晴らしい…!
    前面にはほとんど出てこないが、確実にアリーナの音だとわかる彼女らしい音色はそのまま、オグリンチュク氏のオーボエとの会話が聴いてて心地よく…
    お二人の対話に、聴き手として受け入れられているような懐の広さも感じつつ、日常の時間軸から切り離された音の創り出す空間で
    誰にも邪魔されず、しっとりと音楽に酔いしれた。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/09/13

    何せ私、モーツァルトは嫌いなので、ほとんど好んで聴くことはないし、持ってるCDも他の曲とカップリングされてるから買ったという程度なのですが…

    そんな私が聴いても…良かった!
    『不協和音』、冒頭は少しモーツァルトぽくない曲調だし。
    とことん弱い弱音から、暗雲を割いて射しこんだようなアリーナのノンヴィブラートの鋭いロングトーンが強烈なインパクトで、ぞくぞくーっとするほどの加速でクレシェンドしていくところなんか、いっきに世界へ惹きこまれます。
    興味が沸いて、有名な四重奏団の試聴とかを聴き漁ってみたのですけど、いや〜これが全然違うんですよ!
    冒頭のロングトーン、ヴィブラートをつけると聴く方に刺さってこず、空へ昇る感じになるのですが、ないと、こっちの心に刺さりまくり!ゾクゾクーーーッ!と不協和音に心がかき乱される感じ。
    でも不快なはずの不協和音が、かゆいところに手が届くというか…後半モーツァルトぽい軽快な曲調になると冒頭の雰囲気が活きてくる感じです。この辺のメリハリが、かなりはっきりついていて、聴いてるとわくわくします。
    アリーナ以外の皆さんも、重なる音のフィーリングを丁寧に合わせていて、心地よいです。
    私の耳はどうしてもアリーナの音を集中して拾ってしまうのですが、それが出来るということは、このカルテットの音づくりがバラバラじゃなく、一人一人堅実に仕上がってるということの裏返しなのでしょう。

    シューベルトの『ロザムンデ』がこれまた、切ないような…アリーナの第1Vnの主旋律がよくわかる構成なので、美しすぎて泣けてくる…。
    第2Vnとのバランスもいいな〜♪タラララタラララ……♪っていう細かい音符が主旋律にひたひた迫る感じとか…うわ〜ぉ!と心にキます!
    三楽章のチェロの唸り方も好き。

    どちらも聴きなじみのない曲だったのですが、すごく好きになりました!やっぱり弦って弦同士の音が重なる時の高揚感は弾いても聴いても、格別だなぁと改めて感じました。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 9人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/09/13

    聴き始めてすぐ、あれ?何だか音がいつになく軽い…?てかオケ全体が軽い???と思ったらブックレットにわざわざ437Hz調弦と書いてありました。そこで少し違和感があったのですが…

    ・ヴァイオリン協奏曲ホ短調Op.64
    有名なコンチェルトの方。10年くらい前のアリーナの演奏をネットで拾って、大事に大事に聴いてきたのですが、調弦やオケが変わるとすごく雰囲気が変わります。
    ロマン派の作品が古楽っぽい響き…と率直に感じたのは、「ピリオド・アプローチ」のせいだったらしい。

    でも初めの違和感は決して嫌な感じとかしっくりこないわけじゃなくて、聴き慣れない響きに戸惑っただけ。聴いているうちにだんだん「ああ、これも全然アリだな。やっぱり彼女の音だし」と思えてくるからホント、すごいなアリーナの音って。

    以前の音源はアリーナらしからぬ、というかまだ若い感じの気負い?みたいな少し粗い音が諸所混じっていて、いえ私はそれすらも愛でていたのですけど(爆)、ピリオド奏法のせい&10年の時を経て研ぎ澄まされた今のメンコンを聴いたら、1本の針が真っ白な薄い木綿のハンカチーフに美しい刺繍を縫ってゆくような感じの世界が広がってきました。古楽っぽい響きなんだけれども決して古楽ではない、とっても奥ゆかしい色彩感があるような?それでいて時折ちらりほらりと、大胆で豊かな詩情が見え隠れするような?

    メンコンはヴァイオリンソロの出だしからして、ロングトーンでぐいぐいと高音域へ上ってゆく旋律がロマンティックで、私の過去に聴いたいくつかの演奏でも情感たっぷりなソロと、オケもそこを盛り上げてゆく感じが多かったと思いますが、こういうアプローチも出来る曲なんだな〜と改めて気づかされました。


    ・序曲《フィンガルの洞窟》Op.26
    少し切ないような、でも自然の織り成す様々な風の匂いがする旋律。フィンガルの洞窟が海食洞だと知らずに聴いても、海の匂いがするから不思議です。

    ・ヴァイオリン協奏曲ニ短調
    クラシックには疎い私、今回初めて知ったのですが(汗)聴いてみたらどこかで聴いたことあるような…?なんとなくメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲に似てる…かも?とにかく演奏される機会が少ない曲であることには違いないようです。今回のCDみたいなALLメンデルスゾーンプログラムで、コンチェルト2本収録というのも、メンデルスゾーンBOXとかじゃない限り珍しいような気もしますけれど、一枚のCDでメンデルスゾーンの作曲の変遷に触れるというのもオツだな、と思いました。

    ホ短調とは構成からしてかなり雰囲気の違う曲で、ちょっと長めの、性急に刻む弦楽オケの前奏から、ソロヴァイオリンが歌い始めます。
    出だしの雰囲気は前述の四重奏曲より、ハイドンとかモーツァルトの方が似てるかも。ロマン派の曲というより古典派寄り?

    この弦楽オケと独奏ヴァイオリンの旋律の対比、対話に青いロマンが漂ってきて、徐々に「ああ…なんかこういう雰囲気、いいな…」としみじみじっくりと思いました。ホ短調のメンコンより、弦楽だけの編成なせいか、アリーナのヴァイオリンも歌っている気がしますし、旋律的にもソロヴァイオリンが映えます。もちろんアリーナの音がすばらしいのですが、何よりオケもソロヴァイオリンも、旋律の良さが伝わってくる演奏。

    メンデルスゾーンって若い頃こんな曲書いたんだ?後期の作品と雰囲気が違うけれど、何があってこうなったんだろう…ってちょっと作曲家の横顔を覗いて見たくなる感じ。アリーナのヴァイオリンを聴くと、時々曲自体の背景も知りたくなってくるのですが、今回はこの曲がまさにそのツボに触れてきました。
    若くして才能あふれる人の、華々しい曲じゃなくてちょっと懊悩が垣間見られる旋律。青春の悩み?私にはとっくに失われた時代だけど(泣)

    第一楽章の切羽詰った感じから、第二楽章の切なく美しいメロディーラインに入ると、アリーナの音の優しさや語りかけるような真摯さが胸に染み入ってきました。

    はぁぁ…またアリーナの音の深遠に迷い込んでしまった…もう抜けられない抜けたくない…(爆)

    今回のCDは、メンデルスゾーンの曲の新たな一面に気づかされた、そんな一枚でした。

    9人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 9人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/09/19

    ・ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調

    曲自体が彼女の音にとても合っている。第一楽章は彼女の音色が、薄闇の中にふわっと現れたかと思うと、静かに蕩けてゆく感じ。いつもの抑えのきいたヴィブラートが、すーっと、何かの気配のように響いて、姿を知りたいけれど捉えられず、耳が自然に音と旋律の行方を追ってしまう。
    第二楽章からはまるでぼんやりとした夢の中、夜霧に包まれた往来乏しい深夜の街中のようでもあり、わずかな月明かりに浮かんだ人影のない深い森のようでもある景色を、微睡みにただ身を任せ、漂っているような気にさせられた。
    知っている気がするけれど、知らない世界に足を踏み入れている感じ。第三楽章は、そんな明るい灰色の景観を、機知で動いているような音色とテンポの緩急が心地よいこと!この楽章が一番好きだ♪
    ティベルギアン氏のピアノも相変わらず素晴らしく、アンニュイ?な都会的気配の中にピリリと効いたエスプリは、彼の音から受ける影響が大きいかもしれない。

    ・ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ第1番イ長調(遺作)

    ラヴェル独特の水面の乱反射のようにキラキラしたピアニズムが、ティベルギアン氏にぴったりで、アリーナのヴァイオリンが…そこへ柔らかな風のように漂ったり、時折吹きつけて水面を波立たせたり…お互いの音がごく自然に作用しているのが、絶妙。

    ・ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ第2番ト長調

    こちらは都会の中に森の幻想を見るような雰囲気。
    今回は全体的に、ベートーベンのソナタ全集の時よりヴィブラート抑えぎみで弾いている感じがアリーナらしく、なんだか全体的にまったりと聴ける。相変わらず弱音の美しさはピカ一!そして一番感動したのは第三楽章。よく聴くとこの曲も後のツィガーヌに劣らぬ難曲で、ヴァイオリンの色んな技巧がぎっしり詰まっているが、ちょっと聴いたくらいではそれもわからないくらいすんなりと弾いてしまうアリーナが凄い…。
    しかも彼女ってホント、古典から現代曲までなんでも弾けてしまう!この楽章はがっつりジャズテイストで、意図的なポルタメントが多かったりしてリズムが微妙にゆらぐが、ヴァイオリンとピアノが抜群のリズム感とタイミングで合っている。
    速く小刻みなトレモロもブレないし、重音はどんなに激しく速くなっても耳障りじゃないし、こんな風にヴァイオリンを弾けるのが奇跡みたいだ。

    ・ラヴェル:ツィガーヌ

    2,3年くらい前のライブ録音をネットラジオで拾って大事に大事に聴いてきたので、数年を経て彼女の演奏がどう変化しているか聴き比べたところ…違う!どちらも間違いなく彼女らしい適度な抑制の効いた音で、多くの他プレイヤーの演奏とは違うテイストなのだが、以前より全体レガート気味で、部分的にかなり艶っぽいタメと抑揚があって、変化に富んでいた!しかもその掛け合い部分、ティベルギアン氏のピアノもまったく同じニュアンスで返しており、対話っていうよりこだま!面白い!同じ旋律を奏でるにも、違う特性の楽器でここまで似せるなんて…!
    そしてこの曲の特徴的な土臭い重音の旋律を、”土の香り”くらいで奏でる彼女の、素晴らしくクリアで安定感のある重音も堪能できた。
    またピアノの聴かせどころ、特に中間部の分散和音はティベルギアン氏の真骨頂。キラキラした響きが、ラメのようにヴァイオリンの音色に絡みついて、虹彩を放つ。
    二人の音はどんどん輝いてゆく。これからも末永く、素敵な音楽を奏でて欲しい。

    ・ラヴェル:ガブリエル・フォーレの名による子守歌

    ああ…もう言葉がない…美しすぎて。
    どこか違う世界へ連れてってほしい(爆)

    今回はどんなジャンルの曲でもこなしてしまう彼女の技術の高さを再認識するとともに、決して特定ジャンルの枠におさまらないチャレンジ精神、その中で必ず彼女であることを貫き続けている姿に感銘をおぼえた。
    色んな意味で得がたい、素晴らしいアーティストだ。
    こんなに次のアルバムや演奏会が気になるヴァイオリニストは他にいないし!自らここではないどこかへは飛べず、何者にもなれない私に、その豊かで芯のある音を通して、未知の世界を見せて欲しい。

    9人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/06/17

    ・ヴァイオリン・ソナタ 第6番イ長調 op.30-1
     潤いを含みつつも軽やかに、転がったり駆け上がったり散ったりする音が本当に心地よく、ただ聴いていたい。もう言葉は要らない。ソナタ集1,2では、アリーナの情熱を初めて音で強く感じたが、3はそこをフッと突き抜けたような別の躍動感、開放感があった。
     ティベルギアン氏のピアノは録音の問題か1,2の時より抑え気味に感じたが、軽いタッチひとつがこんなにも色彩感を描き出せるのか!というほど、音の一粒一粒に色んな表情や趣がある。
     二人の質感、温度感、強弱、起伏、全部神業的にぴったりだ。

    ・ヴァイオリン・ソナタ 第3番変ホ長調 op.12-3
     ティベルギアン氏はこの難曲を軽々と、しかもたっぷり謳いあげ、アリーナらしいしっとりとした高音と、吐息のような弱音が話しかけたり、応えたり…ホールでの二人の演奏対話が目に浮かんでくるようだ。
     
    ・ヴァイオリン・ソナタ 第9番イ長調 「クロイツェル」op.47 
     あらかじめホールで直に聴いた方の感想を窺い知っていたが…またびっくりさせられた。前回『春』であんなに柔らかなスフォルツァンドを聴かせてくれたアリーナが激しい鋭角のスフォルツァンドを切り込んでこんなに激しくかき鳴らすとは…。ところが第ニ楽章はヴァイオリンの天へ上る高音域と伸びが印象的な旋律だからいつものアリーナの真骨頂! 第三楽章は軽やかに、けれど浮き足立った感じではなくて土を踏みしめて駆け抜けるよう。

    「クロイツェル」に関しては特に、ベートーベン(の音楽)を直感した。全ソナタを通して、二人なりの解釈、個性を打ち出してきた中で、最後に持ってきた大作「クロイツェル」ではベートーベンに回帰した…と思うと、前2作で膨らんだ期待を外されたしれないが、まだまだいろんな引き出しがありそうな二人の将来性も感じた。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/03/03

    ・第5番ヘ長調 op.24『春』
     ソナタ集1の時は、初めてアリーナの情熱的な一面を見た気がしたので、こちらも躍動感あふれる情感たっぷりな『春』なのかな〜?と思って聴いたら、いい意味で裏切られた…!第一楽章は生まれたての春という感じで…彼女らしい情熱を裡に秘めた静かな佇まい。驚くほど律儀に、楽譜に忠実な演奏だった。
     特に、少し使いこんで筆圧がなじんだ色鉛筆のように…柔らかなスフォルツァンドが秀逸。ティベルギアン氏の色彩感豊かな演奏も、音系の面白いところが際立っており、とてもわかりやすい。第四楽章で、力強くしなやかな『春』に。なんともすがすがしい春!
    ・第2番イ長調 op.12-2
     第一楽章のヴァイオリンとピアノのユニゾンのバランス感覚は鳥肌モノ!第二楽章のピアノ、ティベルギアン氏の演奏は、第三楽章の予兆を感じさせる巧妙な緊張感がある。第三楽章ではアリーナのヴァイオリンが朗々と歌い、それぞれの楽章の持ち味が
     じんわりと耳に残るいぶし銀な演奏。
    ・第10番ト長調 op.96
     彼らの演奏の端々に色んな示唆が盛り込まれているような気がして、全楽章にわたって余韻、余香の漂う表現だった。
     アリーナのヴァイオリンを聴くと、作曲者の意図を明確に表現できる確かな技術の他にも、その意図を真摯に汲み取ってさらに違うものを出そうとする思慮、姿勢が透けて見える気がする。

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 12人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/07/05

    ソナタ第1番から凄かった…。

    ヴァイオリンソナタ…といってしまうと、ヴァイオリンメイン、ピアノ伴奏というイメージだが、二人のソナタはまさに「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」と呼ぶに相応しい見事な競演だった。

    ヴァイオリンの見せ場、ピアノの聞かせ処を律儀に押さえつつ、勢いを失わないダイナミックで軽快な音…。
    タイミングも鳥肌が立つほどピッタリで、音量もばっちり、どんなに疾走してもずれず、聴き手の心も、もっと、もっと、と逸ってしまうほど。

    アリーナは弱音のヴィブラートも素晴らしいが、今回は特に、高音域の音の伸び、これは延びといってもよいだろう。残響に頼らない絶妙な延び感に、魂が持って逝かれる(笑)
    それがまた、ソプラノ歌手の朗々と謳い上げるアリアのような…そうまるで肉声のような音…。

    ピリオド奏法的な、スーッと伸びる高音が印象的だった彼女が、こんなに詩心のある、躍動的な演奏をするとは…でも音はしっかりいつもの彼女。

    私が特に気に入ったのは、4番と7番だ。
    ローテンポな旋律に、一層味わいを感じられるのと、ドラマティックな展開部分に、競演の醍醐味を感じられた。

    っていうか、ティベルギアンも凄い。

    名手の競演は、ぶつかりすぎてお腹一杯になることも多いが、彼は脇役に徹するわけでもなく、ヴァイオリンの旋律に真摯に応えており、出るところはしっかり主張してくる。
    それが単なる自己主張じゃないから、結果ふたつの楽器のいいところが惜しみなく出てるという…お互いの良さが存分に引き出されたソナタを作り上げてるわけだ。

    凄い競演だ…。
    っていうか、これホールで聴いた人がホント羨ましい…。

    このベートーベンのソナタはシリーズでリリースされるらしいので次のリリースが楽しみだ。

    12人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/07/02

    ・夜想曲とタランテラ Op.28
    知らない土地の暗い森へ足を踏み入れてしまったかのような、ちょっと不気味な闇の匂い漂う旋律。冒頭数小節で、聴覚がノックアウト…
    最近のネットラジオなどもチェックしていたのでごくごく最近の演奏も聴いてはいたのだが、こんなに色艶のある彼女の演奏は聴いたことがない!てほど、確実に進化を遂げていた。
    あと、毎度重音の響きの正確さと美しさは感動モノなのだが、後半に連続する速くて激しい重音、そのお尻につくポロロロンというピチカートが、鳥肌が立つくらい正確でよどみがなくてすごい…!

    ・神話 Op.30
    三つの主題それぞれに、聞かせドコロのある作品構成と、それを見事に聞かせてくれる演奏に、脱帽…。
    バッハの無伴奏の時のように、一部で弱音器を使っているような高音域の音があるが、やや笛っぽい音色になっているのが面白い。ひとつひとつの音への徹底したこだわりは健在。

    ・ロマンス ニ長調 Op.23
    音が…音がまぎれもなくロマンス…
    ちょっとブラームスのVnソナタとかの香りを感じる。

    ・ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 Op.9
    曲調もさることながら、いつになくダイナミックさを感じさせる演奏。
    彼女元来の音職人気質な精緻さに、感情の豊かさがプラスされたような気がした。

    ・3つのパガニーニのカプリーズ Op.40
    聴きなじんだ&大好きなパガニーニのカプリーズを彼女の演奏で聴けるだけでも感動だが、音が…音が踊ってる!(泣笑)
    ピアノ伴奏の旋律はかなり独創性があるが、それもまた面白かった。

    ・アイタコ・エニアの子守歌
    いい音でお腹一杯になったでしょ? さぁ、眠りなさい…て曲かと思いきや、またまた頭の夜想曲チックな幻想的なまどろみに誘われ…
    いやはやいろんな角度の彼女の音が堪能できた。

    ホールの問題なのか、演奏者のペダルの多用のせいか、ピアノ伴奏がぼやぼやした音に聞こえるのが不満要素ではあるが、とりあえず彼女の演奏さえ愉しめれば十分♪

    例のオビの文句に偽りなし!(笑)

    ちなみにハイペリオンのサイトでは全曲無料試聴ができるので、まだ彼女の音を知らないという方には是非、彼女の音の断片に触れていただきたい。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/07/02

    ベテランながらCD自体が少ない上、さらに録音状態のよいものも少なかった中、広告に違わず高品質な録音だった。
    ペレーニらしく、穏やかだが軽やかなバッハは自然体な演奏で、当たり前のように耳に寄り添ってくる音が、とても心地よい。
    そしてがらりと雰囲気の変わるブリテンでは、不気味さと軽快さを兼ね備えた曲調のツボを、ペレーニの妙技がまさにどんぴしゃで突いてくる。緩急の緩い部分はひたすら音を聴かせ、急ピッチなパッセージではあの正確なボーイングが目に浮かぶ、舞うような弾むような音の氾濫が心を沸き立たせた。ピアノとの対話もばっちり。
    ブラームスは、ペレーニのアクのない伸びやかな音がじーんと心に浸透してくる。五臓六腑にしみわたる良質のキリリ系日本酒(熱燗)のような、温度感といい舌触りといい、技ありの味わい。
    ライブ録音ならではの、本人による曲紹介のおまけも嬉しい。男性にしては線が細くて、とっても優しい声音は、演奏そのものという印象だ。
    きわめつけにアンコール曲のショパンがまた最高。ホールでじかに聴いたら多分帰りたくなくだろう居心地、聴き心地の良さ。昼下がりに転寝してたら、そっとブランケットをかけてくれた的に、マットで柔らかい音がすばらしかった。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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