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Blu-ray Disc シン・レッド・ライン

シン・レッド・ライン

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    u.f.o.313  |  不明  |  不明  |  2021年07月02日

    この映画が公開されるまで実に20年もの間、テレンス・マリックはメガホンを取っていなかった。彼がこれより20年前に発表したのはアカデミー賞では撮影賞、カンヌでは監督賞を受賞した「天国の日々」という作品だ。この作品のすばらしさは何といってもその映像美にある。作中の微妙な陰影は主に自然光の光量の加減や角度で調整され、そのためにかなりの時間と労力を要したとも言われている。そんな職人的な技術と美的センスが高く評価されて、その作品は色々な賞にも輝いたというわけだ。そして、その後に長い沈黙を破り発表された本作では、その「天国の日々」でも大切に扱われた「光」が作品全体を通して象徴的に網羅されている。映画の舞台となったのは、ジャングルでは楽園のように木漏れ日が差し、海では波が輝く、文字通り「光」に満ちた南の島、ガダルカナル島。しかし、奥地へ一歩踏み込めば悲惨で不毛な戦場が広がり、その現実のなかに現れる「光」は蒼い夜空に落ちる照明弾の「光」であったり、死体を焼く火の粉の「光」であったりもした。このようにこの島における「光」の在り方は多岐にわたっていたわけだが、それと呼応するかのように極限の世界に置かれた兵士たちもまた、それぞれに自らの魂のやりどころを様々にもっていた。運命や悟り、もしくは諦念に至るまでの過程で引きちぎられていく彼らの魂の叫びは哲学的な問いかけにも変わり、つぶやかれる心は詩篇となって、映像の中に織り込まれていく。 この映画の中で私が一番ハッとさせられたシーンは、戦場での現実がすべてだとし、石のように心を殺し、無感覚になることがもはや至高でもあるのだろうかと悟ろうとしていたウェルシュ曹長(ショーン・ペン)が「光=楽園」を信じ、愛していたウィット二等兵(ジム・カヴィーゼル)に「(あなたには)まだ少しだけ光がある」と告げられた箇所だ。そのときのウェルシュ曹長の絶望に満ちた悲しい目はショーン・ペンにしか表現できないと感じた。そして、ウィット二等兵が皮肉にも敵に殺されてしまった際に、ウェルシュ曹長が埋葬されたウィット二等兵に「光はどこへ行った?」と尋ねた瞬間に、ジャングルの木漏れ日がギラリと曹長の顔をかすめたのが、とても象徴的なだけでなく霊的にも思えた。 本作品は、これでもかというような映像の美しさを戦場という極限のシチュエーションに落とし込み、人間にとっての「光」の意味の多様さを見ている側に感じとらせようとしている、そんな啓示のような映画だと思う。

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