田中康夫

本 たまらなく、アーベイン

たまらなく、アーベイン

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    ねずみ  |  山口県  |  不明  |  2019年01月07日

     昭和の終わりの頃、大阪の書店でスタイリッシュな装丁の分厚いソフトカヴァーが目に留まり、何気なくページを捲ってみたところ、全米TOP40を追いかけていた自分には未知のレコードが多く掲載されているこの本に出会いました。  自分が特に興味を惹かれたのは、知っているアーティストに関して、定番のヒット作とは違ったアルバムがいくつも推奨されているところでした。  本作は、80年代中ごろの東京におけるクリスタルでブリリアントな都市生活の過ごし方を演出するための最適かつ最良の音楽について、朝、昼、宵、そして夜、それぞれのシーンや様々なシチュエーションにフィットするアダルト・コンテンポラリー系のレコードを田中康夫氏自らが自身のコレクションの中からセレクトし、スパイスの効いた小気味のいい文体に少し毒のあるエピソードも織り込みながら、地方在住の洋楽初心者にも分かりやすい解説を施し、類似の関連盤のカタログ付きで丁寧に紹介されています。  綴られた一つひとつのエッセイには音楽に対する風刺や批判などはなく、アーティストや作品のレアな周辺情報も含め、十分な説得力を持つ充実した文章からは、田中康夫氏の音楽という都市生活の最良のパートナーへの造詣の深さが窺えます。  特筆すべきは、当時のトレンドを反映したトーキョー・ライフを下敷きにしているにもかかわらず、取り上げられている作品群が色褪せていないこともあって、昔のニュース映像のような古さを全く感じさせず、むしろ、あの頃の空気感が伝わることで当時の時代背景の中での輝きを今に蘇らせてくれています。  近年、あの頃のAORやCity Popの名盤群が次々とCD化復刻されている中、自分にとってこの本は、新たなお宝発掘のためのガイドブックであり、トレジャー・マップとして大活躍しています。    ところで、本作の30数年ぶりの復刻は実に画期的でありがたいところでしたが、個人的には、ライト・グリーンとライム・イエローの斜めストライプの表紙、ムック本のようなソフトカヴァー仕様、余白を効果的に使った段組み構成の紙面、巻末のディスク情報も当時のクレジットの完コピ、といった、国鉄時代の時刻表復刻版のように、オリジナルの装丁のままで完全再現してほしかったところです。

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