ヴァイオリン・ソナタ全集 アリーナ・イブラギモヴァ、セドリック・ティベルギアン(3CD)
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風信子 | 茨城県 | 不明 | 2017年04月01日
時の経つのを忘れて聴き入ってしまった 白昼夢を見ていたような心地に暫し茫然と佇んでいた 全10曲を一気に聴いたことなどなかったからだ 特に30代前期に書かれた六曲が圧巻で聞き惚れた 交響曲1番ー3番”英雄” ピアノ協奏曲3番 ピアノ・ソナタ11番ー21番”ワルトシュタイン”を書いた時期にシンクロナイズする 新鮮な個性と創意を作品に傾注し展開した時期で ベートーヴェンが音楽に新しい時代の扉を開いて見せた19世紀初頭だ VnとPのデュオが管弦楽にも比肩できる表現力を持つことを証明している イブラギモヴァのグァルネリは絹のように細い音の糸を吐く蚕だ それはいかようにも膨らませ太い線となることはできても決して重い叫びや唸りを生じることはない 極めて繊細で透明な光沢を放つ 剛力と熱情で訴えかけるような演奏を嫌う そっけなく吹き過ぎる風のようでありながら決して忘れられない印象を残す だから聴いていて疲れない 飽きない 過ごしていて時を忘れる軽やかさに包まれる 第10番などはその最たるものでいつまでも聴いていたい思いが湧く 40代になってベートーヴェンも肩の力が抜けていたのだろう 作品12の三曲は全曲を通して聴く時 長い散歩の途中に立ち寄った東屋で息をつくようでちょうど良い 曲順もよく考えられた良い全集 もう多くの方の推薦もある 今更わたしが出しゃばる必要もない1人の方が、このレビューに「共感」しています。
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