『トロヴァトーレ』全曲 マクヴィカー演出、M.アルミリアート&メトロポリタン歌劇場、M.アルバレス、ホロストフスキー、他(2011 ステレオ)
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天然芝 | 秋田県 | 不明 | 2014年03月02日
主役の四人を揃えるのが至難なだけに、音だけの記録でもなかなか決定盤の無い(強いて言えばカラヤン62年のライヴか)作品だが、この映像は久々に強力な歌手が揃った聴きごたえ、見ごたえのあるものと言えるだろう。 特にホロストフスキーのルーナは、バスティアニーニの高みにこそ及ばないものの「ホロストフスキーのルーナ伯爵」という役作りを確立していると思う。安定した歌唱と恵まれた容姿(やや偏執狂的な役作りだが)で、当代一のルーナと言えよう。 ザジックのアズチェーナも見事、先に映像で出た「アイーダ」での衰えぶりに、とうとう過去の人かと思ったが、ここでの鬼気迫る演技と安定して圧倒的な歌唱、舞台上での存在感も素晴らしい。 ラドヴァノフスキーは今回初めて耳に(目に)するソプラノだが、暗めの声質はマリア・カラスを近代化したような感じ、コロラトゥーラの技術も申し分なく、メットの巨大な空間にも負けない声量にも恵まれているようだ。 そもそもレオノーラという役は専ら受身の印象が強いのだが、ラドヴァノフスキーは自ら悲劇の渦中に飛び込んで、ファム・ファタール的な空気さえ感じさせるのがユニークだ。 アルバレスはそもそもがリリコであろうと思うのと、上記の重量級の歌唱(外見ではなく)に押されて多少印象が薄くなってしまったが、甘さと明るさを備えた優れた演唱だろう。(ちなみに第3幕のカバレッタは半音下げ) アルミリアートの指揮は、歌手をよく引き立てながら音楽のクライマックスは切れ味良く盛り上げており、この歌合戦的な公演を的確にまとめていたと思う。 マクヴィカーはお得意のよく作りこんだセットや豪華な衣装で、非常にわかりやすく説明的な舞台づくり。回り舞台を効果的に用いた展開の早さも心地よい。スペイン独立戦争時代に時代を移したという設定も、人物の相関もわかりやすくて良いのではないか。 保守的なメットでの演出とあって、いつもの猥雑な表現は控えめだが、マンリーコを取り巻く親衛隊に長身イケメンの役者を並べたのは、マクヴィカーの性的嗜好であろうかとニヤリとさせられた。 アンヴィルコーラスで、彼らが巨大なハンマーで金床をガンガンぶっ叩くのだが、それがしっかり音楽になっているのも見もの・聴きものであった。 カメラワークは相変わらず忙しいところもあるが、今回は幾分控えめで見やすく、毎度邪魔臭い上演前や幕間のバックステージは、休憩が1回しか無いおかげで我慢できる範囲内であった。 日本語字幕こそ無いが「トロヴァトーレ」の最初の一枚としてお奨めできる映像作品である。1人の方が、このレビューに「共感」しています。
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