オペラの運命 十九世紀を魅了した「一夜の夢」 中公新書
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Tan2 | 神奈川県 | 不明 | 2021年04月23日
岡田暁生さんが一般向けの新書本として書いた「目から鱗が落ちる」本の中の1冊。よくある「作品史としてのオペラ史」ではなく、いわゆる「プロトタイプとしてのオペラ」つまり「豪華絢爛、上流社会の紳士淑女、社交界、天井桟敷の通たち」といった「ヨーロッパ社会における場・空間としてのオペラ」の形成の歴史とその末路を追った意欲作である。 日本では、オペラは敷居が高く、クラシック音楽の中でもとりわけ「難しい」と考えられ、コアな「通」を除くとファンの数はそれほど多くない。上演機会が少ない、仮に上演があってもチケットが非常に高いということもある。ただ、それ以上に、タキシードやイヴニングドレスなどの正装に身を包んだ「上流社会」の雰囲気や、ワーグナーに代表される「総合芸術」という高尚さが、生半可な知識や興味では近寄りがたい「格調の高さ」を形成しているからだろう。 この本では、そういった「オペラ的なもの」がどのように形成されていったか、19世紀後半の民族の自覚と「後進国の国民オペラ」の持つ政治性などについても触れて行く。そして20世紀にはオペラは「オペラらしくない」様相を呈し、伝統的な「娯楽」オペラの世界は映画に移っていく。そういった「流れ」を、岡田氏は「オペラの運命」というタイトルに込めたようである。 オペラを楽しむ人も、これからオペラというジャンルに足を踏み込んでみようかと思っている人も、一度「全体を俯瞰した」この本を読んでみてはいかがでしょうか。新しい「視点」が得られると思います。0人の方が、このレビューに「共感」しています。
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