廻 由美子、フッソング
2人の名手が奏でる原田敬子作品集
日本人作曲家、原田敬子の作品集。福島が強く意識された作品が並びます。演奏するのはアコーディオンの世界的名手、フッソングに、ピアニストの廻。原田作品ならではの時間軸や緊迫感を感じさせる世界を見事に響かせています。
『F-フラグメンツ』は、2012年11月3日に世界初演された作品。原田自身「直接の面識がない人々、行ったことのない土地、そこで流れた時間を、覚醒して意識的に、この11の断片的楽章に記憶しようと試みた」と述べていますが、福島をめぐる様々な事象や人物が刻み込まれた音を、ピアノとアコーディオンが極度の集中の中響き合わせていきます。
『BOOKI(アコーディオンのための)』は2010年8月28日、サントリーサマーフェスティヴァルの一環の、芥川作曲賞創設20周年記念ガラ・コンサートで委嘱世界初演されたもの。アコーディオンにはどちらかというと難しく、上手く効果が出ないと言われている表現、すなわち、囁くような音色で素早くレガートで動き回ること、垂直的で鋭い音色による多重音の速い複雑な音の連なり、気の遠くなるほどの長音を弱音で、極限の蛇腹技術でコントロールすること、そして複雑な手の動きと同時に複雑なリズムで「口」(無声音)も使うなど、名手フッソングをしても「不可能」と言わしめた非常に難しい作品。原田はこのCDのフッソングの演奏には意にそぐわないところはない、と述べています。
『Nach Bach』は、田崎悦子ピアノリサイタルシリーズ〜NACH BACH〜のために書かれたもので、2004年に初演されました。田崎が2004年に平均律でリサイタルのプログラムを構想していた折、「平均律」に関係する作品を作ってほしい、と原田にリクエストしました。平均律の各曲のプレリュードかフーガのいずれかを任意で選び、各主題の音組織を全く自由に並び替えることで、各曲に対応する全24曲を作曲。それぞれは、主に芸術関係者へのオマージュとなっています。本CDには、原田の3名の恩師、美加理(俳優)、ル・コルビジェ(建築)、そして廻とフッソングへのオマージュの7作品が収録されています。(キングインターナショナル)
【収録情報】
● F-fragments(アコーディオンとピアノのための) (2012)
01. Twin Leaves
02. Speedy
03. Noise
04. Fall Time Blues
05. Pray for 18537? +2654?
06. Vertical
07. Points
08. Alert
09. BONE
10. Try to Fly
11. (no title)
● Book I(アコーディオンのための) (2010)
12. Detour
13. Aprinkled Efforts
14. Anticipation
15. Hen-pu
● Nach Bach(ピアノ・ソロのための) (2004)
16. XV: 廻由美子へのオマージュ
17. VI: ル・コルビジェへのオマージュ
18. IX: 間宮芳生へのオマージュ
19. X: 美加理(ミカリ)へのオマージュ
20. XVIII: 三善晃へのオマージュ
21. XXI: ブライアン・ファーニホウへのオマージュ
22. XII: ステファン・フッソングへのオマージュ
廻 由美子(ピアノ)
シュテファン・フッソング(アコーディオン)
録音時期:2013年1月10-12日
録音場所:神奈川県、相模湖ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
録音担当:桜井 卓
【原田敬子】
幼少のころからピアノで即興演奏をするなどして作曲を開始。桐朋学園大学で作曲を川井學、三善晃、ブライアン・ファーニホウに、ピアノを間宮芳生、室内楽(クルターク作品)をジョルジ・クルタークに師事しました。大学では作曲を専攻すると同時に、ピアノ・室内楽・指揮法を学び、1993年に研究科課程を修了しています。
1990年代半ばから「演奏家の、実際の演奏における内的状況を作曲する」というコンセプトで、演奏家の身体と脳の可能性を拡げることで実現される、独自のテンションや字管構造を特色とした作品を多く書いています。
これまでに第62回日本音楽コンクール第1位(室内楽)をはじめ、芥川作曲賞(2001、管弦楽)、尾高賞(2008、管弦楽)ほか受賞多数。現在、東京音楽大学(芸術作曲)准教授。(キングインターナショナル)