出発

後戻りのきかない未成熟の時間を
永遠にフィルムに焼きつけた唯一無二の作品
疾走する車、流麗な音楽、若い男女の間に芽生える仄かな恋心……
大人になる前のかけがえのない時間を切なくほろ苦く結晶化した青春映画！

主演のレオーとデュポール、撮影監督のウィリー・クランは前年に公開されたフランス映画『男性・女性』（ジャン＝リュック・ゴダール、66）に参加したチーム。手持ちカメラを用いてブリュッセルにてオールロケーション撮影で活写された街並みやイベント会場、ポルシェ911が街なかや郊外を走り抜ける場面の視覚的ダイナミズム、若い男女が路上で戯れる様子をその場の空気ごと記録したかのような詩的な瑞々しさ。すべては初めて異国の地を踏んだスコリモフスキの、“異邦人”ならではの視点を通じて画面に定着されたものだ。
ドン・チェリーやガトー・バルビエリやルネ・ユルトルジェといった一流ジャズメンを起用して、メロディアスなスコアを紡ぎ出したのは、クシシュトフ・コメダ。時に激しく、時にメランコリックな旋律が映画の疾走感とロマンティシズムを盛り立てる。主題歌をうたうのは、ミシェル・ルグランの姉クリスチアーヌ・ルグラン。
第17回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞し、西側におけるスコリモフスキの名声確立に寄与した。また作家のマルグリット・デュラスは、1967年度のカンヌ映画祭上映時に本作を観て熱狂したといわれている。

1967年 ベルギー／収録時間：88分／白黒／16:9LBヴィスタサイズ／ニュープリントHDマスター／片面1層／

■音声：フランス語　モノラル　ドルビーデジタル
■字幕：日本語字幕（翻訳者：寺尾次郎）

＜特典＞
封入：解説リーフレット（48頁）

【スタッフ＆キャスト】
製作 エリザベート・フィルム
監督 イエジー・スコリモフスキ
脚本 イエジー・スコリモフスキ、アンジェイ・コステンコ
撮影 ウィリー・クラン
編集 ボブ・ウェイド
音楽 クシシュトフ・コメダ
出演 ジャン＝ピエール・レオー（マルク）、カトリーヌ＝イザベル・デュポール（ミシェール）、ジャクリーヌ・ビル（婦人客）、ヨーン・ドブリニーネ（“マハラジャ”）

【ストーリー】
イエジー・スコリモフスキが初めてポーランド以外の国（ベルギー）で撮った作品。
ブリュッセルで美容師見習いをしている19歳の若者マルク（ジャン＝ピエール・レオー）は、レーサーになることを夢見ている。車を所有していないにも関わらず、二日後に開催予定のラリーに出場登録した彼は、店主の愛車を密かに“借りて”出場しようと目論んでいたが、ラリー当日にその車を失敬できないことを知り落胆した。出場を実現するべく、マルクはどんな手段を使ってでもスポーツカーを入手しようと奮闘し始める。その途上で彼はミシェールという名の娘（カトリーヌ＝イザベル・デュポール）と知り合い、彼女を巻き込んで出場実現に向け奔走するのだが……。

◆第17回ベルリン国際映画祭金熊賞

©BELFILM

ロマン・ポランスキーと並ぶベルギーの新世代監督、スコリモフスキの幻の傑作。30年の歳月を経て、99年に日本公開され大ヒットロングランを記録した作品。コメダによる音楽も注目。(CDジャーナル　データベースより)