Yorimichi All Stars @HMV ONLINE 195
2008年11月26日 (水)
WEBにお引越ししてからはや5回目となった、「HMV」フリーマガジン「the music&movie master」の人気コーナー、「よりみちAll Stars」!!
第5弾の今回、登場してくれたのは、映画にテレビにと大活躍の小泉今日子さんです!!彼女が選んでくれたおすすめ10選とともにお楽しみ下さいませ!!
高架下のなんてことない場所ですが、ポコンってハマりますね。 よりみち編集者・栗山圭介の『小泉今日子評』
小泉今日子●歌手、女優。神奈川県生まれ。1982年にアイドル歌手としてデビュー。歌手活動の傍ら、女優としても多彩な才能を発揮。1983年の映画デビュー以来数々の主演出演を果たし、2008年も「グーグーだって猫である」「トウキョウソナタ」の
2作品に出演する。その他舞台などでも活躍し、幅広い世代からの支持を集め続けている。11月26日には5年半ぶりとなる待望のオリジナル・ニューアルバム『Nice Middle』を発売。今後の動向からも目が離せない。 Photographer/ryota atsumi Back Number
そうかなぁ。
写真撮る前に写真になってる。
そんなことないよ。
写真的で雑誌的な人、キョンキョン。
そうね、雑誌の情報のスピードの方が合ってるかな。テレビって早いようで遅いからまどろっこしいんですよね。そこに辿り着くのにいろんなものいっぱい越えて行かなきゃならなくて、番組って、一見情報先取りっぽく映るけど、時代の先見性は断然雑誌の方が早いと思う。
小泉今日子のスピード感は?
いつもずっとこのまま(笑)
音楽、いつも聴いてますか?
特に必要としてないんだけどね、日常的には。だけど最近また聴くようになったかな。それはね、テレビがつまんないからだと思う。テレビつけてるとなんか嫌な気分になることの方が多いから、朝起きたらテレビをつけるのが当たり前だったけど、今はiTunesをポンってやる感じです。
テレビ観ないんですね。
昼間はまだ観るけど。
ひょっとして…
昼ドラ(笑)
そして夜はまたiTunes?
私のiTunesには激しい音楽はあまり入ってないんですよ。邪魔にならなくて、どこかで鳴っているような音楽が多いの。元々やさしい声のやさしい曲が好きだから。
クルマに乗るときもですか?
クルマに乗るときは好きな日本人アーティストの曲をかけてガンガン唄いながら運転することが多いかな。
聴く場所で分けてるとか?
そんなマメでも計画的でもなくて、「あ、コレ、クルマに合うかな?」って感じでクルマに持ってく感じ。
要するにノリで。
「ノリ」でしか買わないですね、音楽は。
吟味なんてもう…
もってのほか(笑)
感性の擦り合わせみたい。
気分だからね。ジャケ買いするときもあるし試聴するときもあるし、雑誌とか見てて自分の好きな人とかがレコ評とか書いてるのを見つけると、「これは信用できる」って買っちゃうこともあるし。ベタベタに褒めてあるのはウソっぽくて買わないけど。
今回の『Nice Middle』買いですよね。
ふふふ。けっこういい感じでしょ。
ちょうどいい感じです。
それ、嬉しいな。なんかコンセプトもあんまりなく始めたの。最初はビッグバンドみたいなのやりたいねーって言ってたんだけど、そんなのどうでも良くなっちゃって(笑)。やっぱり私たちが捉えた80年代アイドルポップス感みたいなの、あってもいーんじゃねーのって。だからそれぞれクセのある人たちがカッコいい曲つくってるんだけど、ベースにはそんなものが流れてるっていうか、とにかくそんな感じ。
だから懐かしいんですね。
若いコたちには新しいかもね。
不思議なもので、「ポップ感」っていう感覚の中には、新しさも懐かしさも未来性もぜんぶごっちゃに詰まってるような気がします。もちろん歌い手の感性やキャラによって賞味期限は変わってくるけど、キョンキョンって本当に色褪せないしくたびれない。
私のアルバムってデビュー当時から「こんな曲もあんな曲も唄わせてみよっか」って、クリエイターたちが良い意味で遊んでくれたと思うの。だからバラエティに富むっていうか、うーん、そうね、やっぱポップなんだと思う。松田聖子さんとかはもうちょっとコンセプトが立ってたでしょ? 私のは、コンセプトとかよりもノリが先攻して、いろんな感じがひしめきあって、そんなんだったから。
フレームに入りきらない感じでしたよね。フタ開けた途端にバァーって飛び出すような。
うんうん。
かと思えばシックな方向にも行ったりして。
大人っぽいことも散々目指そうとしてきたからもういいかなって。今は年齢に逆らうことなく、無邪気にしちゃえ!っていうのがアルバム作りの中心線にありましたね。
リリーさんなんかも参加してて、ますますポップな寄せ鍋感ありますよね。
私の『酔っぱらい伝説』みたいな詞がいいなと思って(笑)。自分で書くと甘くなるだろうから、リリーさんとかが書いてくれると素敵になるだろうなって。
個人的にオファーしたりするんですか?
直接交渉はしないですよ。もちろんアイデアは出すけれど、交渉は担当者にしてもらいます。どんなに仲が良くっても、友だち関係のノリや流れで仕事のお願いは絶対にしない。そういうの嫌いなんで。
ちなみに酔っぱらい伝説(『小泉今日子はブギウギブギ』)は実話ですか?
…まぁ実話に近いかな(笑)
ずっとアイドルなのにすっごく大人になってる。不思議な人ですね。
立派な中年です(笑)
だとしたら立派な中年のキョンキョンを見てみんな元気になってる。
ほら、私たちの年代っていちばん元気をなくしがちな世代でもあるでしょ。疲れてるし重圧もあるし、いろんな意味ですっごく疲れてると思うのね。だから「元気な中年がいないとつまんないでしょ!」っていうちょっとしたメッセージというか自分にハッパかけるようなところもあるんだと思う。
キョンキョンが中年、やっぱりヘンだ。
年齢を重ねるから若さがあらわれると思うのね。アラフォーとかアンチエイジングとかもいいけど、自然の流れというか自分らしく居続けることが実はいちばん大切であり大変なのかなって。少なくとも若作りって不自然だし魅力的なことじゃないような気がする。
若さとその人らしさがマッチしていないと可笑しいですよね。
若々しさっていうのは見た目だけじゃなくて、心もそうだし、肉体とか内臓とか、いろんなとこがちゃんとついてきて初めて実感できるものだから。
ちなみに内臓、どうですか?
まったく問題なし。30代になったときに一番調子いいなって思ったけど、40代になったらさらに思ったよ(笑)
どんなところで?
なにも変わりがないところ(笑)
そういうことが本当のステップアップなのかもしれない。
普通に弱っていきたいなぁ、て思ってるけどね(笑)
若い時には誰もが背伸びをしたくて、未経験のものになんでも手を伸ばしたくなる。同世代の誰よりも早くそこに手の伸ばすことが大人への階段だと錯覚するのだ。小泉今日子は背伸びとは無縁である。キョンキョンと呼ばれはじめた頃から、足の裏ぜんぶを地べたにつけてどしんと立っていた。ただ彼女は、どうすれば自分らしくいられるのだろう、どう受け入れれば自分らしくいられるのだろうといつも悩んだ。そうした葛藤はやがて自分を信じる力をつくり、自分を信じることで人に対する信頼や感謝も積み重ねることができた。彼女は時間や年齢はもちろん、世の中が変わってゆくことにもまったく逆らわない。反抗も抵抗もしない。自分が自分らしくいられるのであれば老いることなどまったく怖くないのだという。40を過ぎた今日でも、彼女の両足は地べたをがっしりと掴んでいる。ただひとつ、彼女自身が時代に与え続ける存在感や影響力にはまったくもって不可思議らしいのだが、それもまた『キョンキョン』という前代未聞の女の生き方でもあるのだろう。
小泉今日子 OFFICIAL WEBSITE
yorimichi editor/keisuke kuriyama
ページTopへ戻る